第84話 VSメタルドラゴン➁
「消し飛べ! コバルトブレス!」
ぎゃああああっ!
ドラゴンのブレスが来る!
「ガアアアアアアッ!」
その口から、熱の息が吐き出された。
図太い光線は、眩しいぐらいの青い輝きを放っている。
そのとき、一陣の風が吹いてきた。
――ビュウウウウウウッ!
「……ガ……ガアア!」
あまりの強風により、ドラゴンの体がズズズっと引きずられた。
「これは……」
後ろを向くと、グリーンが両手を突き出していた。
「≪ハリケーン≫!」
そうか。このスキルには、ノックバックの効果がある。
横から風を吹かせれば、ドラゴンといえども、体が後ろにさがってしまう。
つまり、発射口がずれるので、ブレスの軌道が逸れる。
ミリアにも、命中しなくなるぞ。
「グリーン! ナイス!」
「えっへへー」
敵のスキルの無力化には、こんなやり方もあるってことだ。
「……どうだ。ヴァルハラ!」
これが仲間の力だ。
「ガハハハハハハ」
「……え?」
まだ何かあるの?
「あれを見るがいい」
ドラゴンが指し示す方向には……。
「……なっ」
「スラ―」
スライムだ。
リトルサモナーが召喚したメタルスライムがいる。
でも、それがどうしたと言うんだ。
スライム一匹がいたところで、どうなるものでも……。
「いや、なんだ?」
メタルスライムがブレスに命中。
普通なら倒されるはずだが、スライムはノーダメージ。
その銀色の体は、燃えて焦げることはない。
より強い輝きを放っている。
先ほども、見たものだ。
あれはメタル化による魔法反射。
ヴァルハラが、笑いながら答える。
「吾輩のコバルトブレスは、物理攻撃であり、魔法攻撃でもある。当然、メタルで反射される。そして、反射した先には」
「……はっ。ミリア!」
敵の目論見通り、ブレスはスライムによって反射。
角度が変わって、反射先がミリアへと変わる。
「……しまった」
これじゃあ、軌道は変わっていない。
グリーンの風は全く意味のないものに。
「言ったはずだ。吾輩のブレスは止められんとな」
まずい。この距離では、どうやっても間に合わない。
私には、彼女にブレスが届くのを、こうやって眺めることしかできない。
「ミリア……」
こうやって祈ることしか……。
「きゃああああっ!」
ミリアの叫び声だ。
ごめん。ほんと、ごめん。
「諦めちゃダメ!」
この声は……。
「……う……ウルトラアップ!」
――ブックン!
風船のように膨らんだミリアが、ブレスの前に立ち塞がった。
青い光線はピンクに直撃する。
「むむむむっ」
いや、両手でがっちりと受け止めている。
その巨体をビキビキと言わせながら……。
「ええいい!」
ブレスを空中に跳ね上げた。
「……はあ……はあ」
「お姉さま!」
「大丈夫? ケガはない?」
「お姉さまあ! うわあああん!」
「よしよし。もう心配いらないよ」
やはり、ミリアの『お姉さま』はピンクのようだ。
私にはあんな芸当、とてもできない。
距離が遠かったのと、反射を一回挟んだおかげもあっただろうけど。
それでも、あのブレス。かなりの威力だったはずだ。
「ミリアちゃんは、ギルドまで行ってね」
「……えっと……」
「私たちで、ドラゴンを倒してくるから」
「……はい」
ピンクはブクブクの姿を解除すると、私たちのところまでやって来た。
「お待たせ」
「うん」
「賢者様にね。ちゃんと伝えてきたよ」
「……え? 先生に?」
ピンクは目を細めた。
「私に頼んだでしょ」
「……ああ」
だから、ピンクはいなかったのか。
賢者様はギルドの裏手で寝泊まりしているから、方角もあってる。
「見えない壁を、張ってもらったよ」
見えない壁は、魔物が攻めて来たときの基本的な対策法だ。
多少の時間は必要だが、張ってしまえば、まず破られることはない。
ミリアも安心だし、町の人にも危害が及ぶこともないだろう。
「セイントスピア!」
念のために、空に魔法を撃ってみたところ、途中で消えてしまった。
賢者様は天井まで張ってくれたようだ。
これで、空に飛んで逃げられることもない。
「ガハハハハハ」
あとはこのドラゴンを、どうにかするだけだな。
「でも、どうするつもりなの? 強いんでしょ?」
「うん。強いというか、固いんだよね」
殴ったところで、ダメージなんて入らない。
「魔法は?」
「それも無理。反射されるから」
やはり、あれを使うしかないか。
私の奥義を。マックスブレイブ中なら、倒すことも不可能じゃないはずだ。
「ピンク。バフをお願い」
「パワーアップ! パワーアップ!」
さて、行くとしよう。
「……神速!」
直進して、相手の懐に飛び込んだ。
「アイアンクロウ!」
両手を広げて、爪による二段攻撃。
「ブレイブラッシュ!」
ガキィン! 金属がぶつかるような音をした。
敵の攻撃はきっちり弾くことができてる。
「でも……」
相手の態勢が崩れていない。
これだと上手にヒットしないのだ。
できるだけ、最良の状態で奥義を使いたい。
じゃないと、こいつは倒し切れないと思う。
「……ふん!」
爪による攻撃を躱した。
だいぶ見慣れてきたせいか、スキルを使わずに避けられている。
「ブレイブラッシュ!」
ドラゴンは腕できっちり防御した。
しかし、こいつガードが固いな。
ダメージどころの話じゃないぞ。
「勇者の格好をした奴」
「ステラだよ」
「思ったより粘るが……これならどうだ」
そう言うと、ドラゴンが頭を後ろに下げた。
その口には、光が溜まっていく。
「……ブレスか」
と言っても、私なら容易に回避できる。
そこまで脅威には……。
「コバルトブレス! クイック!」
クイック!?
クイックなんてあるの!?
名前の通り、素早く撃ちだしてきたが。
「……いや」
これは逆にチャンスだぞ。
「グリーン」
「≪ハリケーン≫!」
ビュウウウウウウッ! 突風が吹き荒れた。
「……おごご」
どうだ。グリーンの風は驚くほど強いのだ。
油断してると、私まで吹っ飛ばされるからな。
体がズズズっと引きずられていく。
ブレス中は体の自由が効かないのだろう。
そのせいか、奴の態勢が崩れた。
「……今だ!」
受けてみろ。
私の奥義――。
「……流星!」
鮮やかな光に包まれた。
私の剣は、凄まじいスピードで、敵を切り刻む。
十……二十……三十……
――ピシッ! ピシピシッ!
奴の表皮に、いくつものヒビが……。
「……いけるぞ」
……四十……五十。まだ続く……六十……七十……銀色の表皮が割れていく……まだ終わらない……八十……九十……ボロボロと崩れ落ち、青い肌があらわになっていく。
「ガアアアアアッ!」
唸り声をあげている。
もう少しだ。もう少しで……
――シュイン
「……え?」
私の体から力が抜けていく。
これは、マックスブレイブの効果時間が切れたのか。
「ちょっと待って。なんでこのタイミング」
あとちょっとで、倒せそうだったのに。
「……ちっ」
ドラゴンは頭に付いたメタルを剥ぎ取ると、尻尾を振り上げた。
「アイアンテイル!」
「……ぐはあ」
尻尾により吹っ飛ばされ、腰を打ちつけてしまう。
「……あたた」
見ると、ドラゴンが大きな口を開けて待ち構えていた。
「コバルトブレス!」
「……なっ」
もう準備完了?
タイミングが早すぎるだろう。
「消し飛べ!」
「……ちょっ、ま」
距離が近い。
十メートルも離れてないのだ。
こんなの受けたら、私でもただじゃ済まない。
「……」
ブレスが私に迫ってくる。
そのとき、遠くから声が響いた。
「≪シーバスター≫! 発射!」
青白い光線が発射されて、ブレスにぶつかった。
――バシュン
両者がぶつかり合った結果、弾けて消滅してしまった。
「……はあ」
危なかった。
レッドとブルーが駆けつけてくれたようだ。
「無事ですか?」
「うん」
「遅くなっちまったぜ」
本当だよ。
二人とも、時間がかかりすぎだ。
「でも……」
これで六人そろったぞ。
「……あっ」
ブラックは吹き飛ばされたままだっけ。




