第85話 VSメタルドラゴン③
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ レッド ブルー グリーン ピンク
控え :ブラック (ミリア)
「ガアアアアアアッ!」
ヴァルハラは地団駄を踏みながら、そこら中にブレスを吐きまくっている。
周りが爆破され、荒れ地に変わり果てる。
賢者様が見えない壁を張ってくれたので、幸いにも町の人々に危害は及んでいないが。
通りは穴だらけになっており、町は無事とは口が裂けても言えないな……。
「怪獣がいるな」
「ええ。あれは紛れもなく怪獣ですね」
こう見えても、神竜と競い合っていたのだ。とっても知能が高いのだ。
さっきまで、ペラペラと喋っていたので、二人にも聞かせてやりたいところ。
「なんか、キレてないか?」
「うん。よく分かんないけど、急に暴れ出した」
お腹が空いて、気が立っているのだろうか。
「吾輩の美顔に傷を付けよって!」
あっ、その部分にキレてるのか。
「勇者にも褒められたことがあるのに!」
「……ごめん」
「許せん! 許せんぞ!」
でも、エリュシオンよりダサいと思ってたけど。
素顔は割とかっこいい。
最初の発言は訂正させてもらおう。
ヴァルハラは、かっこいい。
レッドとブルーは、来たばかりで状況が掴めないだろう。
二人と情報を共有することにする。
「メタル化は、魔法を反射するのですか?」
「うん。でも、私が流星で壊したから、もうダメージは入ると思う」
「要するに、硬い奴ってことだろ?」
「硬いだけじゃないよ。普通に格闘も強い。ブレスもあるし」
では、まずはピンクにバフをかけてもらおう。
私とレッドは、攻撃と素早さ。ブルーは魔力。
「……これでよし」
ブルーには敵の攻撃を逸らしてもらい、その隙にレッドと私が……。
「待ってくれ」
「なに? レッド」
「試したい技があるんだよ」
夕飯のときに、新技がどうとか言ってたな。
その技のことだろうか。
「あのドラゴンは、硬いんだろ?」
「そうだね。どちらかと言うと、耐性が高いんだけど」
地・水・火・風・光・闇の属性に耐性があり、状態異常もほとんど無効。
斬撃や刺突、殴打のような物理攻撃にも、あっさりと耐えてくる。
まあ、ドラゴンの能力のようなものだ。
だから、英雄時代から、強力なモンスターとして君臨している。
「それなら、ぴったりの相手だ」
「……おお。自信あるんだ」
「任せとけ」
流星のない私では、どのみち相手にダメージを与えられない。
ここは、レッドのパワーに任せるという方向で。
「私が先陣を切る。レッドは敵の態勢が崩れてからね」
「おう」
「……神速!」
私が高速移動で、敵に接近。
すると、早くもヴァルハラが爪を出して、待ち構えていた。
「……速い!」
どうやら、金属の皮が剥がれたことで、素早さは上がってしまったようだ。
「アイアンクロウ!」
両手からの爪撃を、私は背を屈めて、回避する。
声を出して、合図を送る。
「ブルー」
「はい。≪シーバスター≫!」
呪文を唱えると、地面がせり上がってくる。
そして、そこから、サメを模した砲台が出現した。
「チャージ!」
チュイイイイイイン!
先端に光が集まって行く。
「アイアンテイル!」
鋼鉄の尻尾を横に振り、私を薙ぎ払おうとする。
「……ジャンプ!」
私はスキルで、上に飛び跳ねた。
「舐めるな! コバルトブレス! クイック!」
空中にいる私は身動きが取れない。
そこへ、ヴァルハラはブレスを放ってくる。
「シーバスター! 発射!」
あらかじめ用意していたものだ。
それをブレスにぶつける。
シュイン! 二つは衝突すると、そのまま消えてしまった。
「……よし」
準備はばっちりだ。
今だ。レッド。奴の背後から攻撃を叩き込むんだ。
「はああああっ!」
「……くっ」
さすがに、ブレスの後だと多少の間は空いてしまう。
その隙に、レッドがスキルを発動。
「炎刃乱舞!」
炎を纏った刃で、横薙ぎに切りかかる。
遠心力を利用したような動きで、クルっと一回転するのが特徴的だ。
「ガアアアアアッ!」
「はああああっ!」
キィン!
「……あれ?」
刃が弾かれてしまったんだが。
「……そんな攻撃」
ドラゴンが尻尾を振り上げた。
「痛くも痒くもないぞっ! アイアンテイル!」
「……ぐはあっ!」
おおい。レッドさん。
自信があるんじゃなかったのか。
「……やられちまったぜ」
レッドは口から出る血を拭いながら、笑みをこぼしている。
なんだか、やり切った感を出しているが。
「まったく、ダメージ入ってなかったよ」
「これでいいんだよ」
どういうことだ。
きっちり説明してもらいたい。
「奴をよく見てみろよ」
言われた通り、ヴァルハラを見てみるが。
「ガハハハハッ! 隙を作ったところで、吾輩の防御は破れんぞ」
ドラゴンは、ドンと胸を叩いた。
すると――。
――ネチャリ!
「……なんだ。吾輩の胸に、ネチャリとしたものが」
見ると、胸だけでない。
頭からもネチャっとしたものがこぼれてくる。
「ふんふん……鼻をつんざくような、妙な匂いだ。これはいったい……」
レッドが、ビシッと指をさした。
「教えてやるぜ! それはオイルだ」
ドラゴンは首をかしげる。
「オイルだと……。なんだそれは?」
「それは、要するに……えっと……」
耳打ちしてあげる。
「……レッド。油のことだよ」
「そうだ! それだ! オイルとは油のことだ!」
なるほど。レッドのやりたいことは理解できたぞ。
≪炎刃乱舞≫
難度 ★★★★★★
属性 火
使用回数 15/15
成功率 80%
説明 炎の刃による広範囲攻撃。相手にオイルを付着させて、火耐性を弱体化させる。
相手が硬いなら、柔らかくしてしまおう。
そういう考えのようだ。
うん。いいんじゃないだろうか。
ドラゴンにも、ちゃんと効いてるようだし。
「でも、なんで『幸運のしっぽ』が欲しかったの?」
「そりゃ、あれだ。オイルの付着しやすさが」
「関係ないよ」
「え? マジで」
「うん。普通の状態異常なら、関係あるけど」
しかし、少なくとも、これでヴァルハラにもダメージを入れられるぞ。
「……ガハハハハハハッ!」
なんだ。笑い出した。
まだ、何かあるのか?
「今日は、お腹の調子が悪い。ここで退散するとしよう」
え? 逃げんの?
「敵前逃亡だ。かっこわる」
「違う。撤退だ。逃げるわけではない」
「卑怯者! 負け犬! 万年二位!」
「うるさい。黙れ。吾輩は負けていない」
ヴァルハラは、手を上げると、呪文を唱えた。
「テレポート!」
竜の体が光に包まれる。
「魔法を使えたの?」
戦闘中には、使ってなかったけど。
「ついでに、この魔物も連れて行くとしよう。どこかで役に立ちそうだ」
「ケーケケケケ!」
なんかリトルサモナーも連れていかれた。
「ガハハハハハハ! 勇者のかっこうをした奴」
「だから、ステラだって」
「次は、倒してやるぞ。ガハハハハハッ!」
そう言い残して、どこかに消えてしまった。
「うーん。逃げられた」
まあ、仕方ない。
とりあえず、後片付けでもしようかな。




