第80話 メタリック・サモン
なんと! 私の家にモンスターが出没した!
というわけで、その魔物を捜索中。
名前はリトルサモナー。ミリアに手を出そうとしたゴミ野郎だ。
「う~ん。あいつはどこに」
たしか、この廊下を走って行くところが見えたのだが。
「見当たらないな」
まさか、外へ出て行ったのだろうか。
――ガッシャーン!
どこかで、大きな音がした。
「向こうからか」
行ってみよう。
突き当りの角を曲がってみると、部屋までたどり着いた。
ドアには、『ブラックの部屋』という札がかかっている。
――ガシャーン!
また、音がした。
「お邪魔します~」
室内は、落ち着いた配色。広さや造りは、ミリアのところと大差はない。
壁には武器と防具が飾られており、奥には畳が一枚敷いてある。
「……た……たみ?」
ブラックさんは、武人でしょうか?
明かりも、和風スタイルのロウソクだし。
「……人形?」
藁でできた簡素なものだが、これで練習してるんだろうか。
いや、トレーニング場を使え。外に広場があるだろ?
「ちなみに、ブラックはどこに……ん?」
奥の掛け軸が外れると……。
「ケケケ」
そこから、リトルサモナーが出てきた。
「どうなってるの? 壁に穴が……」
何か、細工がしてあるのか?
壁を掘って、隠し部屋でも作ってあるのか?
「……いや、だからさ」
ここは借屋なんだけど。
「……ん……」
跡を追うように、床が外れて、ブラックが登場。
どうやら、すでに臨戦態勢のようだ。いつもと変わらない格好をしている。
――ブン! ブン!
両手に掴んだハンマーを縦横無尽に振り回し。
――ガシャン! ガシャン!
床に叩きつけている。
「ケケケ!」
魔物は隙間を縫うように躱し、再び壁の穴へ。
それにブラックが続いていく。
「……」
まさに、猫とネズミの追いかけっこが目の前で繰り広げられている。
いや、おまえら、外でやれよ。
「ケーケケ!」
ボフっと音がして、モンスターが出現。
2メートル近い大きさのカニ型の魔物。
「カ――二――ッ!」
相変わらず、カニと鳴いている。
もっと、工夫しろ。
「ブラック。こいつには、『アシッドバブル』っていうスキルがあるの」
前に、ブルーの『シーキャノン』も溶かしていたのだ。
彼女の盾でも防ぎきれるかどうか。
「……ん……」
「何? 問題ないって?」
コクコクと頷いた。
そうこう言う間に、口をブクブクとさせ始めた。
こいつ、さっそく吐き出すつもりのようだ。
「カ――ニ――ッ!」
「……ん……」
――ガシャン!
ハンマーで、カニの体を横殴りにする。
「……カニ?」
突然のことに、目を白黒させるカニの怪物。
そこへ畳みかけるように、もう一撃。
――ガッシャン!
「……なるほど」
殴られる前に、殴る。
それが彼女の出した答えのようだ。
間違ってはいないと思う。
一定のダメージを与えて、態勢を崩せば、相手はスキルを発動することができない。
だが、好戦的だな。
敵の攻撃に、攻撃で対処って……。
一応、盾職なんだよね?
頼むよ? ちゃんと守ってよ?
――ボコッ! ドカッ! バキッ!
あっという間に、ハンマーでボコって敵を粉砕。
おい! ガードしろよ!
「ケケケケ」
「あっ、また逃げ出した」
今度は壊れた壁を抜けて、外へと飛び出した。
追いかけないと。
☆
外では、ミリアが待機していた。
「奴はどこに行ったの?」
「あそこです」
ちょうど、家の前の通りを横切っているところだった。
「まずいな。他の住宅に入られたりしたら、目も当てられない」
さくっと倒してしまいたいが、あの魔物はよく攻撃を躱す。
そのうえ、召喚させないためには、できるだけ一撃で仕留める必要がある。
「グリーン」
「う~ん。影が薄いのー」
夜中だし、月も雲で隠れている。
影縫いを使うのも、難しいか。
「……神速!」
こうなれば、破れかぶれだ。
接近して、首を落としてやる。
「ケーケケ!」
ボフっと音がして、モンスターが出現する。
こんなのでも、刺激になるのか。やりづらい。
「……むう」
やはり足止めだけして、人数が揃うまで待った方がいいかな。
そう考えていると、右手の方から人がやってきた。
私たちと同じように、職業に応じた格好をしている。
剣士に、魔法使い、格闘家。
ギルドの冒険者たちだ。異変に気付いて駆けつけてきたのだろう。
「もう心配ないぞ。我々に任せておけ」
バタバタとやって来ると。
、私を守るように、前に立ちふさがった。
「ケケケケ!」
「モンスターだな。すぐに倒してやろう」
やる気満々である。
だが、少し待って欲しい。
「みんな。集まってくれるのは嬉しいんですけど。こいつは強い刺激を与えると、いけないタイプなんです」
「ふむ。そういうことか」
冒険者たちは、私に向き直ると、三人で横並びになった。
「ところで、自己紹介がまだだったな。我々は……」
――バッ! バッ! バッ!
「ギルドの冒険者だ!」
知ってる!
そんなのわざわざ紹介されなくても、分かってるよ。
ギルドによくいるでしょ? 見たことあるもの。
「その証拠を、今からお見せしよう」
――キラリーン!
銀色に輝いた。
「……くっ。眩しい」
三人とも一斉だからか、目に応える。
「ケケーケケー!」
ああ。リトルサモナーも刺激を受けちゃってる。
ヤバい。また、杖を突き付けてきた。
「ケケケケケ……」
しかも、なんだ。
杖の先端が鈍く光っている。
これはさっきまでとは違う。
自身の力を溜め込んでいる様子だ。
何か新しいことを始めるつもりか。
「ケーケケケッ!」
ボフっと音がして、モンスターが召喚される。
その姿は――。
「……なんだあれ」
カマキリの魔物。
前に戦ったので、よく覚えている。
グランマンティスだったか。
いや、それはいいんだけど……。
「なんでこいつ……」
メタリックなの?
≪メタリックサモン≫
難度 ★★★★★★
属性 闇
使用回数 ∞
成功率 100%
説明 このスキルにより召喚されたモンスターは、全て『メタル化』される。
銀色に輝くカマキリ―メタルマンティスが、私に牙を向けてきた。
「シャアアアアアッ!」
ガガガガガガッ!
六本の鎌をタイミングよく振り込んでくる。
「……うっとおしい。ブレイブラッシュ!」
キィン! 弾き返すが、やはり固い。
だが、これは予想の範囲内。メタルなのだから、固いのは当たり前だ。
問題は、その能力。
わざわざ『メタル化』というぐらいだ。
固いだけでなく、他にも何かあるはずだ。
「とりあえず、このカマキリを倒したら……」
みんなをここに集めよう。
それで対策を考えるんだ。




