第76話 リトルサモナー
「裏技があるんだ。それを知ってさえいれば、すぐにポイントを増やせる」
……なん……だと!?
じゃあ、面倒なゴブリン退治をやらなくていいのか。
雑魚モンスターを大量に狩る必要もないってことか。
「ああ。その方法とは……」
「方法とは?」
「なんと!」
「なんと?」
「……」
「……早く言ってよ」
このキノコ女、面倒だぞ。
私がイライラしていると、後ろから声が響いた。
「聖なる森にいるモンスターは、ポイントが割高なのだ」
「わああっ! エリュシオン様、言っちゃダメ!」
「普通に倒しているだけでも、かなりのポイントを獲得できる」
そんなことでよかったのか。
というか、それはマイの実力ではないんじゃ……。
彼女はエリュシオンの護衛をしている。
普段から聖なる森にいるので、いくらでもモンスターを狩れるはずだ。
それに彼女の≪マッシュトラッパー≫は、まさに狩りにぴったりの能力。
罠をかけて一晩待つだけなので、ポイントも取り放題。
ランキングが上位なのも頷ける。
「更に、我がクエストを出そう」
「エリュシオン様が?」
「ギルドでは受けることができんぞ。ステラだけに特別だ」
この感じ、女神ローザの時と一緒だな。
限定クエストという奴か。
特殊な条件を満たした時にだけ発生すると言われている。
クエスト:幸運のしっぽを入手せよ
条件 :聖なる森から出ないこと
内容は、アイテムの入手か。
たしか、『ハッピーラビット』というモンスターからドロップする。
特徴は、出現率が低いこと。
まず、ドロップ以前に、エンカウントが困難なのだ。
森の中を歩き回ってるだけでは、いつまでたっても出会うことはできない。
「そうだ。『ハッピーラビット』のエンカウント率は『0.0001%』だ」
「……神竜様って、意地悪?」
「意地悪ではない。クリア不可能ではないのだから」
……くっ。女神ローザは、簡単なクエストだったのに。
でも、攻略法はあるということか。
考えてみるとしよう。
ウサギにはエンカウントできないんだから。
「そういえば……」
前に、珍しいモンスターを見かけたんだよな。
術を使える特殊な魔物。
その術を利用できれば、ウサギにもすぐに出会えるかもしれない。
まずはそいつを探してみよう。
マイに質問してみる。
「ここでも地形の変動って起きるの?」
ダンジョンでは、定期的にマップが変わる。
だから、そのたびに地図を更新する必要がある。
「起きるぞ。年に四回ほどな」
「そのとき、トラップは?」
「張り替えてるぞ」
「全部? それとも、一部だけ?」
「……その質問になんの意味があるんだ?」
私の予想では……。
地形の変動を受けない。
トラップが張られてない。あるいは機能していない。
この二つの条件を満たす場所。
そこに、目当てのモンスターがいるはずなんだが。
聖なる森では、何故かマップを作れない。
なので、マイをとにかく質問責めにして、情報を集めよう。
「入口から、トラップの配置を順番に説明して」
「え? 覚えてない」
「まず、どの方向?」
「西、だったかな」
「西に何歩?」
「ほ、歩数!?……三歩ぐらいか」
「……そう。では、そのトラップはいつ張ったものか答えて。何年目の何月の何日目?」
「そんなこと知るか!」
☆
今回のメンバー……。
メインメンバー:ステラ グリーン ブラック ピンク (ミリア)
控え :レッド ブルー
「狩りと言えば、グリーン。なんと言っても、狩人だしね」
「がんばるー」
いつも元気だな。
バトルの時は、文句一つ言わずに戦ってるし。
ちなみに、私は……。
しばらく、ゴブリンは見たくない!
もう、あいつらには、うんざりだよ。
「で、ブラック。あなたは……」
「……ん……」
「今回は、特にやることないかも」
「……ん……」
ごめん、ブラック。
でも、レッドとブルーは休ませたくて……。
「ミリアちゃんは、呼んでよかったの?」
「当然。バリバリ活躍してもらうからね」
ミリアは、私の横で申し訳なさそうにしている。
「いいんですか? 私、お姉さまたちよりも弱いし。手ごわいモンスターとは、戦えませんよ」
「問題ないよ。今回の敵は、歯ごたえはないから」
ハッピーラビットは逃げ足が速いが、それ以外は貧弱。
ミリアでも、問題なく倒すことができる。
「それにポイント貯めてるんだよね」
「はい」
「それなら、ここのモンスターはぴったりだよ」
「どういうことですか?」
私はミリアに説明した。
聖なる森は、神竜様が住んでることもあって、ポイントが割高。
私も試してみたが、そこまで頑張らなくても、一日で1000ポイントは軽く貯められる。
というわけなので、ミリアにもやらせたい。
費用を負担してもらえるので、それでレアな装備でも買ってもらおう。
「はい。分かりましたけど……神竜?」
一応、秘密にした方がいいのかな。
騒ぎになるかもしれないし。
「土地神様だよ。この辺りを守護しているの」
「へえ。神聖な場所なんですね」
「……ステラちゃん。また、適当なことを」
では、クエストを始めるとしよう。
「ハッピーラビットを捕まえるんだっけ?」
「いや、それは無理だよ」
「じゃあ、どうするんですか?」
「出してもらうの」
「出してもらう?」
「うん。あいつにね」
私が指をさすと、草陰からひょっこり顔を出した。
高い鼻と、長い耳。つるつるの頭。
ローブを着て、手には杖を持っている。
「なんですか? 小人? ノームかな?」
「リトルサモナー。妖精タイプのモンスターだね」
魔物は、自分の頭をペタペタと触っている。
このタイプの特徴は、魔力を持っていること。
つまり、私たちと同じように魔法を使うことができるのだ。
「ケケッ! ケケケッ!」
「鳴いてますね。喋りそうな見た目なのに、話せないんだ」
リトルサモナーは、私たちに杖を向けると。
「ケケケケケッ!」
呪文みたいなリズムで鳴いた。
それを見て、ミリアが怖がる。
「ひゃああっ! 撃って来ますよ!」
「来ないよ。こいつが術を撃つタイミングは決まってるの」
その条件は、『強い刺激を受けること』。
ヘマをしなければ、まず安心だ。
「グリーン。やって」
「はーい」
――キリリリリ……シュッ……ストン!
魔物の頭に、矢が命中した。
「ケケケッ! ケケッ!」
怒ってるのか、杖を突き付け、
「ケケーケッ!」
ボフッと音がすると、そこからモンスターが現れた。
召喚術。
魔法の一種で、これを使うとモンスターを召喚することができる。
「スラ―!」
スライムだ。青い液体で、ぷにぷにしている。
「……うーん。外れか」
もう一度。
グリーンの攻撃。
「ケケーケッ!」
ボフッ!
と、音がして。
「フラーラ」
フラミンゴスか。これも外れだ。
「……あの。ステラさん、いいですか?」
「なに? ミリア」
「まさか、これでハッピーラビットを呼ぶつもりなんですか?」
「うん。そうだけど」
「ええ……」
ミリアは、引くように後ろにさがった。
「……じ、地味すぎる」
「地味じゃないよ。きちんとした攻略法だよ」
「そうですか?」
何を言うんだ。楽しいじゃないか。
少なくとも、ゴブリンを生き埋めにするよりは。
よっぽど有意義な時間だぞ。
「……私には、同じように見えますが」
よし。がんばろう。
私の予想が正しければ、これでウサギは出現するはずだ。




