第71話 VSゴーレム①
最近、森に妙な魔物がうろついている。
それを聞いた私たちは、マイと共に魔物のいる場所へと駆け付けることになった。
「レッド。顔を出さないで」
「おう」
できるだけ、隠れながら移動していく。
茂みに身をひそめて、マイが小声でささやいた。
「……いたぞ。あれだ」
マイが指さした先には、魔物が立っていた。
四角い岩をいくつも積み上げたような無骨な体。
巨人のような姿で、のそのそと移動している。
「ありゃなんだ」
「ゴーレムだね。土くれの怪物なんて呼ばれる」
「へえ」
しかし、なんでこんな森でうろうろしているんだろうか。
普段は、遺跡なんかで扉を塞いでたりするものだが。
「なあ、気味が悪いだろ? まるで、森を監視しているように歩いているんだ」
たしかに。マイが言うように、ふらっと立ち寄ったようには見えない。
何かを探索しているような、イヤな動き方だ。
「エリュシオンを狙ってるんじゃないの?」
「そうかもな。結界を抜ける方法を探しているのかもしれん」
気楽に話しているが、それはヤバいことなんじゃないのか?
「問題ない。結界を抜けるのは、とても難しいんだ」
「私たちは、抜けられたよ」
「あれは偶然だ。実際は、超難解なんだ。辿り着けた者は、ほぼいないから」
『ほぼいない』か。
ほぼ……やっぱり、不安じゃない?
「うーん」
ピンクが、うんうんと悩んでいる。
「なにピンク? ゴーレム怖い?」
「そうじゃなくて……あれ見て。頭にアンテナが刺さっている」
ほんとだ。
これ見よがしに、金属の棒が刺さっている。
受信でもするんだろうか。
「それに胸のところに番号が」
「『03』って書いてあるね」
「塗装されてるみたいに、鮮やかな色だし」
「言われてみれば、塗り方にムラがないね」
「変だよ! このモンスター、絶対に変!」
私もこいつからは、今までと違うものを感じている。
存在感が希薄というか、スカスカの空洞というか……。
「だあっ! いつまで、こそこそ隠れてんだよ! 早く倒そうぜ!」
レッドが茂みから出て、モンスターへ突っ込んでいった。
……仕方ない。
じゃあ、私も行くとするか。
「≪マッシュトラッパー≫!」
マイは地面をトンと踏んだ。
すると、ゴゴゴゴッと森が揺れ、地面からトラップが現れた。
「キノコのトラップだ。ステラ。おまえなら、上手く利用できるはずだ」
「ありがとう」
「私は遠くから援助する。どのみちパワー不足だからな」
「わかった」
☆
地面には足の踏み場もないほど、トラップが仕掛けられている。
「……よっと……よっと」
しかし、キノコの色とトラップの種類については、すでに教わっている。
どれを踏めば、どうなるのか。それはすべて記憶済みだ。
「ようしっ! ゴーレムまで近づいたぜ!」
レッドが剣を振り上げて、叫んだ。
「はああああっ! 炎月斬り!」
――カチ!
「……ぐお……お」
黄色のキノコは、麻痺のトラップ。
また、同じ罠にかかっているな。
もちろん、敵は待ってくれない。
ゴーレムは腕を振り回すと、レッドをぶっとばした。
「ぐおおおっ!」
私の近くをゴロゴロと転がってきた。
「……ちっ。油断したぜ」
「いや、油断っていうか。あなたもマイに教わってたでしょう?」
「あんなもの、覚えられるか!」
「……ええ」
ダメだ。この娘は、痛い目を見てから覚えるタイプだ。
「レッドは右から回り込んで。あっちは罠が少なめだから」
「おう」
「ピンク。バフを」
「うん。スピードアップ! スピードアップ!」
ついでに、攻撃と防御も能力アップしてもらう。
私とレッドの両方にかけた。これで万全。
「……神速!」
敵の懐に、ダッシュで飛び込む。
「ゴゴゴゴッ!」
ゴーレムが腕を振り回して、襲いかかってきた。
「……神速!」
敵の攻撃を回避。
そのまま、背後へ移動する。
「ブレイブラッシュ!」
――キィン!
分かっていはいたが、バカみたいな固さだ。
もともと、ゴーレムは物理防御が高い。
それが売りみたいなものだからな。
「……だから、そのためのトラップ」
「ゴゴゴゴッ!」
「……ジャンプ」
飛んで攻撃をかわす。
「レッド!」
「……爆裂断!」
刃が当たった瞬間、爆発が起こる。
ゴーレムの態勢が崩れた。
そこでレッドが駄目押しの一撃。
「おりゃああっ!」
「……ゴゴ」
――カチッ! プシュウウ!
灰色キノコは、盲目の効果。
これで敵の命中率が大きくダウン。
「ゴゴゴッ!」
――スカ!
当たらないって。
「ブレイブラッシュ!」
「……ゴガガ!」
――カチ! ボウッ!
赤いキノコは、火傷の効果。
ゴーレムの体が赤く点滅し、ダメージ減少。
一定時間ごとに、敵の体力が減っていくのだ。
他にも、毒や凍傷のトラップがある。
三つ踏ませれば、ダメージも倍加する。
それで、このゴーレムを倒すとしよう。
「ゴゴゴッ! ゴゴゴゴッ!」
やけになったのか、地団駄を踏み出した。
「終わりか? あっけねーな」
「……いや」
スキルか。
力を溜めているな。
「レッド。さがるよ」
「……は?」
「はやく」
私たちが遠ざかっていると、地面が小刻みに揺れ始める。
それから、ピシッと亀裂が走った。
≪グランドスラム≫
難度 ★★★★★★
属性 地
使用回数 20/20
成功率 80%
説明 大地を揺らし、地割れを引き起こす。相手の移動力を低下させる。
地割れによって、地面が盛り上がり、辺りの樹木が呑み込まれていく。
これは威力の高いスキル。そして、攻撃範囲の広い技だ。
私たちも、簡単には踏み込むことはできない。
「どうすんだ? 近づけねーけど」
「……」
というか、敵の狙いは。
「……トラップ封じ」
地面を破壊して、全ての罠を取り除く気なのか。
それをされるのは、面倒だ。
こいつをトラップで倒せなくなる。
「私が前に出るよ」
危険な時こそ、先陣を切る。
それがリーダーの役目だ。
「できるだけ、敵のスキルを妨害するから。その間に、ピンクは踊って」
「踊るって……」
「セクシーダンスだよ」
「うにゃああっ!」
では、行くとしよう。
「ゴゴゴッ! ゴゴゴッ!」
スキルの≪グランドスラム≫は二回目に突入している。
そろそろ、火傷の効果も切れそうだ。
「さて……」
依然として、地割れが起きているが。
「まだ、トラップは残っているよね」
私は走り出しながら、両足に力を溜めた。
「……ジャンプ!」
地割れを飛び超えた。
そして、ジャンプ先には、キノコの罠が……。
――カチッ! シュイン!
白色キノコは、ワープのキノコ。
ゴーレムの側まで一瞬で移動した。
「ゴゴゴッ! ゴゴゴッ!」
敵は驚いている。
腕を振り回して攻撃してくるが、まったく当たらない。
――カチッ! シュイン!
瞬間移動して、背後から切りかかる。
「ブレイブラッシュ!」
「……ゴゴッ!」
効いてないが、問題はない。
相手は≪グランドスラム≫を撃つ余裕がなくなっている。
「ピンク!」
「もう終わるよ……えいっ!」
あれは、決めポーズ。
ダンスは踊り切ったようだ。
「……ゴゴゴゴゴッ」
ゴーレムの頭上に、ハテナマークが浮かび上がった。
混乱状態。
これで、地割れは起こせない。
「レッド」
「おう……爆裂断!」
――カチッ! ブシュウウッ
出血か。こういうのもあったな。
――カチッ! グチュ!
毒が来た。これで勝てる。
ゴーレムが、ふらふらし出した。
混乱もまだ解けないし、あとはボコるだけだな。




