第70話 エリュシオン
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ レッド グリーン ピンク
控え :ブルー ブラック
聖なる森。その洞窟の奥へとやってきた私たち。
そこで、見たものとは――。
大型の爬虫類を思わせる骨格に、体中に覆う鱗。長い尻尾。蝙蝠を思わせる翼……。
「あたし、知っているぞ。ドラゴンだろ」
レッドが自慢げに答えた。
いや、まあ、ドラゴンではあるのだが。
「これ神竜だよ」
「しんりゅう?」
「うん。竜の王様なの。世界でも数匹しか確認されていない珍しい竜なんだよ」
「へえ」
ミリアの話だと、これが『勇者の秘密基地』ということになるが。
たしかに、それが神竜なら、別に不思議でもなんでもない。
神竜はその名の通り、神にも近い力を持つと言われているのだ。
「ガアアアアアアアッ!」
突然、雄たけびを上げ出したことで、洞窟中が小刻みに揺れ動いた。
ビリビリッ! ビリビリッ!
しかも、気のせいではなく、私と目が合った。
「……あ……あ」
いけない奴だ。相手したらダメな奴だ。
そう思ったので、私はその場にひれ伏した。
「ははあっ! 参りました! 生きててすみませんでした!」
「おまえ、何してんの?」
「レッド。相手は神なんだよ。頭が高いよ」
ぺこぺこと地面に頭を打ち付けた。
調子に乗ってると喰われちゃう。冗談じゃなくて。
「倒したら、超レアイテムを落としそうだよな」
アホか。こんなのどう見ても、裏ボスだろう。格が違いすぎる。
たぶん、魔王よりも強いぞ。普通に考えて。
「ステラちゃん。女神のときには、そんなことしてなかったよね」
「ローザ様はいいんだよ。あんまり威厳なかったし」
「そう? 私はそれなりに緊張したよ」
それはともかく、私がもたもたしていると。
先に、グリーンが話しかけた。
「ねーねー。トカゲさんー」
うおおおっ! グリーン!
神竜様になんて口の利き方を! しかも、トカゲって!
「名前はなんて言うのー?」
「我の名は、エリュシオンだ」
わりと普通に喋ってる。
「どこで生まれたのー?」
「もう昔のことで、記憶にない」
「趣味はー?」
「音楽鑑賞だ。クラシックな落ち着く曲が好みだ」
「好きな食べ物はー?」
「肉が好きだ。だが、歳のせいか、脂っこいものはきつくなってきた」
そうか。肉が……。
なら、最初に食べられるのはピンクかな。ブクブクしてるし。
「さっきのタヌキ肉をあげようぜ」
「そうだね。さっぱりめの料理にしてあげよう」
「ええ。君たち、何を言ってるの? 竜だよ。タヌキなんて、矮小なもの食べないでしょ」
――チン!
「できた。タヌキ鍋。あっさり風味に仕上げてみました」
「ふむ。いただくとしようか」
爪を使って、鍋を持ち上げた。器用だな。
「ゴクリ……うむ。うまい。もっと欲しい」
「じゃあ、私がタヌキ狩ってくるー」
「おう。頼むぜ」
「がんばるー」
自由だな。勝手に洞窟から出ちゃったよ。
しかし、普通に話せるドラゴンのようだ。
気になることもあるので、たずねておこう。
「あの。知り合いから聞いたんですけど。エリュシオン様は、勇者の秘密基地なんだとか」
「うむ。間違っていない。我は秘密基地であった」
マジなのか。
というか、自分のことを基地って言っちゃうんだ。
「それなら……えっと……」
「なんだ。言ってみるがいい」
「その基地を見せてもらえませんか」
「気になるか」
「はい」
だって、そうだろう。
勇者の住みかなのだ。どんなものなのか、多少は興味がある。
「断る! 勇者以外の者は、出入りを禁じている!」
なんだと。やはり信用ある者しか入れないのか。
しかし、見せてもらうことすらできないとは。
「ほんの少し、覗くだけでも」
「断る!」
「きっと、すっごい汚部屋なんだぜ。ゴミだらけで、生臭いんだ」
「そんなことはない! 中はピカピカだ。チリ一つない。さらには、花のような甘い香りが……」
いや、そんなムキにならなくても。
「というのは、ジョークだ」
「え? ジョークなの?」
神竜のジョークは、分かりにくいな。
「本当は見せたくても見せられないのだ。我の体には封印がかけられていてな。おかげで、この森から出ていくこともできない」
「……そうなんですか」
「ああ。期待させておいてすまぬ」
「いえいえ。そんなことは」
もともと、この森へはキノコを採りに来ただけなのだ。
エリュシオンを見つけたのは、偶然に過ぎない。
でも、もう少し何かあると思っていたのだが。
ドラギドも『私が変われる』と言っていたし。
「代わりと言ってはなんだが、おまえに技を一つ伝授してやろう」
「技、ですか?」
「ああ。おまえたちはスキルというのであったか。それを今から教える。我の近くまで来てくれ」
なんだろう。ドキドキするな。
神竜は、私の頭に手を乗せた。
すると、なんだか頭がポカポカしてきて……。
≪エビルスキャン≫
難度 ★×8
属性 光
使用回数 15/15
成功率 100%
説明 闇の力を抑え込み、相手の正体を見破る。弱点までも探り出す。
何か、良さそうなスキルだ。
「特に魔族相手には有効に働くことだろう。勇者を職に持つなら、使い道もあるはずだ」
「はい。ありがとうございます」
さて、試しに使ってみるか。
私はマイに手をかざして、呪文を唱えた。
「エビルスキャン!」
「……」
反応なし。
「何故だ!?」
「私には、闇の力がないんだ。そんな技は効かんぞ」
そうか。キノコの怪物だし、てっきり効くものだと。
――チリンチリン!
紐に付いた鈴が鳴りだした。
マイが眉をひそめる。
「……今日は来客が多いな」
「どうかしたの?」
「最近、見知らぬ魔物が徘徊していてな。困っているんだ」
魔物か。この森にはこれからも世話になりそうだし、手伝っておくとしようか。
「私たちも行くよ」
「助かる。ついてきてくれ」
というわけで、魔物の元へ向かう。




