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第64話 バーベキューセット


 『聖女からの救援要請』。クエスト達成である。


「報酬は、こんな感じかな」


 メアリから、お金をもらった。

 数えてみよう。ひぃ、ふう、みぃ……。


「どうです?」

「おい。あたしにも見せろ!」

「……」


 え? このレベルの報酬をポンと出しちゃうの?

 メアリって、もしや金持ち?


「同じ賢者様の弟子なのに、どこでこの差が……はっ、まさか」


 メアリが聖女だからか。

 聖女は勇者よりも格が上。これが世間からの評価なのか。


 物語でも、勇者が噛ませ犬になることって多いしな。悪人にされたりも。

 それに比べて、聖女はかわいく描かれることが多い。


「私、転職するよ。明日から、あなたと同じ聖女にね。よろしく」

「やめなさいよ。ステラみたいな聖女、誰も欲しがらないわよ」


 酷いことを言われた。


 まあ、女神ローザも許してくれないだろうな。

 あなたにぴったりの職業は勇者だと言われているのだ。


 とにかく、助かった。


 私のパーティーは六人もいる。ミリアも加えれば、七人いる。

 なので、生活費や装備の修理なんかで、大量のお金が必要になる。


 家もある。

 あれは借家なので、毎月のようにお金を収めなければならない。

 更に、ギルドの会員費も。関所の通行料も……。


「クエストなんかじゃ、とても賄えないんだよ。もう私には、空き巣に入って日銭を稼ぐしか方法が」

「やめなさいよ」

「お金プリーズ! 仕事プリーズ!」

「……そう。大変なのね」


 メアリは指を立てた。


「では、もう一つ、報酬を追加しましょう」


 特別報酬というものがある。

 お金とは別に、アイテムや装備を追加でプレゼントしてくれるものだ。

 

「アイテムくれるの?」

「ええ。魔族を倒してくれたしね。これぐらいのお礼ならいいでしょう。報酬はステラのお家に届けるから、楽しみにしててね」

「うぃっす。メアリ! アイ・ラブ・ユー!」

「……テンション高いな」


  ☆


 帰宅して、数日が経った。


「ちわーっす。宅配便でーす」

「おっ、来た。はいはーい」


 荷物を受け取り、レッドに居間まで運んでもらった。


「軽かったぞ」

「ほんと?」


 持ってみると、たしかに軽い。

 中身はスカスカなんじゃないのか、と思えてしまう。


「空間魔法だよ」

「なんだそりゃ?」

「物の大きさを変えたり、重さを変化させたりするの」

「すげえ」

「転送陣にも同様の魔法が使われているんです。私たちを小さく軽くして、遠くまで運んでいるんですよ」


 ブルーが補足してくれた。


 賢者様もメアリも、空間魔法が使えるのだ。

 私? 無理に決まってるだろう。


「早く開けようよ」

「ああ。中身が気になる」

「待ってよ……えっと……」


 メアリなら大丈夫だと思うけど、いきなり変なことが起こっても困る。

 爆発が起こったり、大怪獣が出現したら。


 なので、ちょっと慎重に、開けてみる。


「これは……」


 鉄の器具。四本の脚がある。

 真っ黒く塗られていて、中には窪み。金網が張られている。


「調理器具じゃない?」

「ええ。よくある調理器具ですね」


 レッドがため息を吐いた。


「なんだよ、つまんねぇな」


 私も少し落胆してしまった。


 メアリが特別にくれたものなので、もっと良いものだと。

 一振りするだけでお金が振ってくる小槌とか。


「けど……」


 妙だぞ。

 メアリがクエストの報酬に、ただの調理器具を渡してくるのか?


「きゃああああっ!」

「ミリア? 突然、叫んでどうしたの?」

「あわわわ。こ、こ、これは」

「はい。お水」


 ゴクゴクゴク!


「これは、バーベキューセットじゃないですか!」

「え? それは肉を焼く?」

「肉はうめえよね」

「そんな平凡なものではないです! 非売品なんですよ!」


 そう言えば、聞いたことがあるな。


 食材を突っ込めば、僅か三分で美味しいものが出来上がってしまう。


 ダンジョンの中でも、好きなものが食べ放題。

 グルメ冒険者御用達のレアアイテム。


 その名も『携帯調理器具』。まんまだが。


「しかも、バーベキューセットは数ある調理器具の中でも、超ハイレベル。料理ベタでも、高級料理が作れてしまうんです」

「へえ。すごいんだね」

「試しに、食材を入れてみましょう。お姉さま」

「うん。キッチンから持ってくるね」


 タタタタッと、ピンクが走っていき、すぐに戻ってきた。


「今は、これしかなかったかな」


 手に持ってるのは、小麦粉だ。


「十分です。さっそく、突っ込んでください」

「うん。これでいい?」

「もっと奥です。お姉さま。コツンッと言うところまで」

「……うん」


 いったい、何が始まるんだ?


「……三分待ちましょう」


 ――チン!


「完成です。開けてみてください」


 中から出てきたものは……。

 食パン(高級)だった。


「出来立てですよ。どうぞみなさん一斤ずつ」


 私ももらったので食べてみる。モグモグ……。

 

「……おいしい」

「でしょう? 誰がやってもおいしくなるんです」

「いやいや。おかしいだろ。バーベキューセットに小麦粉を入れても、パンはできねえ。バカなあたしでも分かるぞ」

「そういうものなんです。細かいことを気にしてはダメです」


 でも、気にはなってしまう。口に入れるものなので。 

 レッドも器具をひっくり返して、怪しいところを探ってるし。


「ちなみに、こっちに小麦粉を突っ込むと」


 ――チン!


「うどん(高級)ができます」

「茹でろよ!」


 要するに、バーベキューセットはどこにいてもご飯を食べられるアイテムなのか。

 必要なものは、食材だけ。火や水すらも必要ないと。


 たしかに、凄い。凄いけどね。


 でも……。

 これでお金や仕事は増えるのかな? 私の問題は何も解決してないと思うけど。

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