第60話 モードチェンジ!
「オレの名は『オバケスロット』。聖女メアリに、勇者ステラ。悪いが、ここでくだばってもらうぜ。魔王様のためにな」
突如として、私たちの前に姿を現した謎の魔物『オバケスロット』。
その異様な姿と、やけに自信満々な態度を見て、私は正気を保つのがやっとだった。
「……なっ」
なんか、変なこと言ってる!
私のこと『くたばれ』って言ってる。
というか、魔王って何? 伝説の勇者が倒した魔王のこと?
「ステラ、知らなかったの? そろそろ、魔王が復活するって話」
「初耳です!」
「まだ噂話に過ぎないんだけど。こうして魔族が出張ってくるからには満更ウソではないのかもね」
「ま、魔族!? 魔族がどこにいるの!?」
「……最初から説明した方がいいかな」
近年、魔族達の動きが活発になってきている。
というわけで、聖女メアリは偉い方々からの命を受けて、調査を進めているのだ。
「ようやく、しっぽを掴めたかと思えば、この有様よ。もうイヤになるわ」
「ところで、偉い方々って?」
「これ以上は話せないわ。あなたを危険に巻き込みたくないから」
只今、現在進行中で危険に巻き込まれているような……。
「スロロロロッ! 話は終わったか?」
「……むっ」
とにかく、スロットのお化けを倒さないとな。
メアリの安全を確保するまでは、クエスト達成とはいえない。
しかし、『オバケスロット』か。
初めて聞く名前だし、似たような種類の魔物にも会ったことがない。
情報がなさすぎる。
敵の能力も判明していないし、無策で突っ込むというのも。
「情報が欲しいのね。それなら、あいつの足元を見て」
今、私たちがいるのは、部屋と部屋の間を繋ぐ通路。
物置きのような場所で、周りには木の柱が何本も立っている。
壁際には木箱が積まれてあり、メアリが『ホーリー』を放ったおかげで物が散乱している。
そして、奴の足元に注目してみると、床の色が他より少し薄いことが分かる。
木箱はカモフラージュ。ダンジョンに慣れている人には、バレバレだ。
「……トラップか」
忘れそうだが、ここはテーマパークで、光の英雄コースなのだ。
当然、通路にはトラップもある。気を抜いて歩く冒険者を罠に陥れるために。
「あいつはまだ気づいてないわ。あれを利用しましょう」
意表を突くことはできるかもしれない。
やってみよう。
「おおっ! 行くのか!」
「レッドはまだ待機。最初は私から」
まずは小手調べ。
「……神速」
相手にまっすぐ突っ込む。
私は柄に手をかけ、鞘から抜こうとする。
敵は……無反応。
……ちっ。余裕だな。
直前でしゃがみ込み、足に力を溜める。
「ジャンプ!」
スキルを利用し、飛び上がった。
スロットマシンは、私を見上げている。
視線誘導に成功。足元がお留守だぜ。
「グリーン」
「≪ハリケーン≫」
ビュウウウウウウッ! 風が吹き荒れた。
「……くっ」
この突風により、オバケスロットが引きずられる。
ズズズズズ……。後ろにさがって行く。
――カチッ! トラップのスイッチが作動。
床から、爆発が起こった。ドッカ――ン!
「ぐうおおおおっ!」
ガレキがスロットマシンに飛び散った。
マシンは黒いのだが、奴の体は白い擦り傷でいっぱいに。
普通にダメージは入ってるな。
少なくとも、固いタイプではないのか。
ビュウウウウウッ! 風は更に強まって行く。
さっき確認したところ、後ろにトラップがもう一つあった。
あれも踏んでもらおう。
――カチッ! スイッチが起動。
床から網が出現し、スロットマシンを絡めとった。
そのまま、上に引っ張られる。
拘束系の罠か。これは好都合。
「今よ。攻撃して」
レッドとグリーンはスキルを使った。
「炎月斬り!」
「アローレイン!」
炎の剣が、マシンを燃やし切る。
矢の雨が降り注ぎ、体中が穴だらけに。
「ダイダルウェーブ!」
ブルーも攻撃。
波が振りかかると、機械の体がバチバチ言い出した。
「……ん……」
ブラックもハンマーでボカスカ殴る。
それ気に入っちゃったの?
「ブレイブラッシュ!」
私もやっておく。
壊れろ! 壊れろ!
「……ごがが……」
スロットマシンから、いくつも部品が落ちていく。
体は崩れ始める。
腕や足も、すぐにも外れてしまいそうだ。
押し切れるんじゃないか。
そう思ってしまうほど、奴はボロボロだった。
「本当に、これだけだと思う?」
「メアリ」
「魔族っていうのはね。魔王に認められ、魔族と名乗ることを許された特別な魔物なの。私やあなたが女神に認められて、聖女や勇者と名乗ってるのと同じこと」
メアリは、壊れたスロットマシンを見下ろし、声を落とした。
「……こいつらの力は、こんなものじゃないわ。こんなものじゃ……」
そのとき、ピクッと魔族が動いた。
「……よく分かってるじゃねえか。そうさ。オレの力はこんなものじゃねえ」
まだ立ち上がってくるのか。
奴の体には、ガタが来ているというのに。
「教えてやろう。魔王様に認められた、このオレの能力を」
オバケスロットは立ち上がると、右手をビシッと前に突き出した。
「へ――――んしん!」
そうして、右のレバーをガチャリ。
スロットが回転を始める。
やがて、回転が止まり、三つの絵柄が顔を出す。
絵柄は……ナイト、ナイト、ナイト。
と同時に、奴の体を闇が覆い尽くした。
ガシャッ、ガシャッと、中から音が響く。
何をするつもりだ。
「モードチェンジ!」
≪モードチェンジ≫
難度 ★×8
属性 闇
使用回数 ∞
成功率 100%
説明 出揃った絵柄により、姿と能力が変化する。
私の目の前に、何かが降り立った。
「こいつは……」
騎士だ。銀色の甲冑を纏った騎士。
右手には身の丈ほどの槍。左手には盾。
「ナイトモード」
騎士は立ち上がり、私に槍を向けた。
「さあ、始めようか。勇者ステラ。ここからが、本当の戦いだ」




