第59話 聖女には会えたけど……
只今、テーマパーク『グレイトピア』、光の英雄コースを攻略中。
現在のメンバー……。
メインメンバー:ブルー ピンク
控え :ステラ レッド グリーン ブラック ピンク
「カ――ニ――ッ!」
ブルーとピンクの前に現れたのは、カニのモンスター・アワガニラ。
普段なら、ブルーの魔法で速攻退治。楽勝な相手なのだが。
「アワガニラは、水属性無効です」
なんと。こいつはブルーの主要魔法を無効化してしまう難敵だったのだ。
どうする、ブルー! そして、ピンク!
「≪シーキャノン≫!」
砂浜がザザーっと流れて、そこから固定砲台が現れた。
ガシュ! カニの足に攻撃した。更に、ガシュッ! 目に攻撃した。
「カニ?」
効いていない。それは分かっている。
カニは固定砲台に向かってくると、ハサミで攻撃。
――ガガガガガッ!
激しい連打攻撃を繰り出すが……。
「≪シーキャノン≫はブラックさんに及ばないまでも、かなりの防御力を誇ります。あの程度の攻撃では、傷一つ付きません」
「うん。これなら、大丈夫だね」
砲台が攻撃を引き受けている限り、二人には攻撃は飛んでこない。
あの様子だと、当分は問題ないだろう。
「あとは、ダメージを与える手段ですが――」
と、二人が会話している最中、カニは攻撃の手を休めた。
何やら、力をため込んでいる。あれはスキルを放つ動作だ。
≪アシッドバブル≫
難度 ★★★★★
属性 水
使用回数 15/15
成功率 80%
説明 泡を放って、物を溶かす。
――ブクブク! ブクブク!
口から無数の泡が出てくると、固定砲台を包み込んだ。
ジュウウウッと音がすると、側面が溶かされて、液体のように垂れていく。
「ブルーちゃん。あれ……」
二人が気づいたときには、すでに原型をとどめて居なかった。
まるで、炎天下のチョコレートみたいだ。
「溶けちゃったよ」
「ええ。溶けてしまいました」
「こっちに来るよ」
「バフをかけてもらえますか」
「スピードアップ! スピードアップ!」
「逃げましょう」
しかし、カニもスピードは速い。
下は砂浜なので、足を取られる。追い付かれるのも時間の問題である。
「ブルーちゃん。私に考えがあるの」
「『ウルトラアップ』のことでしょうか。それなら、やめておいた方がいいかと。溶けてしまいますよ」
「ううん。違うの。考えっていうのはね」
――ガガガガッ! カニがハサミで襲ってきた。
「ダイダルウェーブ!」
波を発生させて、モンスターを呑み込んだ。
向こうへ流されて行く。
「あいつをやっつける方法があるの。でも、リスクが高くて……」
「どんな方法ですか?」
「それが……」
説明すると、ブルーは相槌を打った。
「良い方法じゃないですか。それで勝てますよ」
「ほんと?」
「さっそく、始めましょう……シーキャノン!」
固定砲台には、モンスターを引き付ける効果がある。
カニが攻撃をするために、向かってきた。
「また、泡を吐かれる前に、お願いします」
「うん……ふう」
呼吸を整えると、気合を入れて叫んだ。
「≪セクシーダンス≫」
≪セクシーダンス≫
難度 ★★★★★
属性 無
使用回数 15/15
成功率 80%
説明 相手を魅惑する踊り。敵の攻撃力↑↑。同時に『混乱』の効果を与える。
踊り子の衣装は、お腹も脚も出た刺激的なものだ。
そんな恰好で、彼女は腰をクネクネさせながら、ダンスを披露している。
「うわああああん! これじゃあ、私、バカな娘みたいだよう」
ダンスはオートなので、一度躍り出せば、終わるまで止められない。
これだけでも、高いリスクである。
「いいですよ。素晴らしいです。とてもお上手だと思います」
ブルーは、がんばって褒めようとしてるけど。
無理するな。余計に恥ずかしくなるぞ。
「止めてえええっ」
で、肝心のモンスターの方だが。
「カ――ニ――ッ!」
攻撃力は上がっている。
そして、『混乱』の効果の方は……。
「カニ? カニ?」
混乱してる。頭に?マークが浮かんでいる。
「カニィ!」
攻撃してきた。ガガガガガガッ!
固定砲台にはげしい攻撃を……しかし、壊れない。
「何故でしょう」
案内係のお姉さんは、頭を捻った。
「泡の攻撃をしませんよ。すれば、砲台を壊せるのに」
それは『混乱』の効果にかかわっている。
『混乱中は、スキルと魔法を使用できない』という優れた効果があるのだ。
だから、カニは、通常攻撃をするしかない。
しないのではなく、できないのだ。
「私たちの勝ちです」
「うん。やったね」
あとは時間稼ぎをして、自傷ダメージを稼ぐだけだ。
もう勝負はついてる。
☆
「『海』のエリア突破おめでとうございます」
パチパチパチと手を叩いた。
ボウッと、燭台に火が灯った。
部屋の中では、三つの燭台に火が灯っている。
「これで、みなさんは『陸』、『海』、『空』。全ての関門を突破することができました。どうぞ。奥の間へ進んでください。そこでは、あなたたちを最後のボスが待ち受けています」
案内係のお姉さんの説明が終わったので、私たちは前に進む。
「ラスボスだぜ。いったい、どんな奴なんだろうな」
レッドがわくわくしている。
本題を忘れていないか?
私たちは遊びに来たわけじゃないぞ。
「これが最後の扉か。そんじゃあ……ふんぐうううううっ!」
力一杯押しているが、びくともしない。
「おい。どういうことだ」
そうだ。仕掛けは解いたはず。
「あの。お姉さん……」
「おかしいですね」
案内係でも分からないのか。
「貸して。私がやってみるよ」
扉をペタペタ触ってみる。
すると、魔法の力が働いていることが分かった。
だが、感じられるのは光の力。
たぶんメアリが魔法で扉に鍵をかけたのだろう。
「……メアリ」
ここまで来て、扉に鍵までかけているのか。
この念の入りようは……。
「開かねーのか」
「ううん。すぐ開けるから……アンロック」
――カチッ!
鍵は開けた。中に入ってみよう。
ズズズズ……。扉を押し開けると。
見慣れた少女が立っていた。
修道服を着てるし、間違いない。
聖女メアリ・クロフォードだ。
俯いてるし、顔はよく見えないけど、私には分かる。
「メアリ。久しぶり。元気してた?」
「……」
「最近、連絡してくれなかったよね。というか、少し痩せた?」
「……」
「メアリ?」
「…………遅い」
「え?」
メアリは顔を上げると、キッと睨みつけた。
「遅いのよ! 私、寂しかったんだから! 怖かったんだから! ステラが来てくれなくて、すっごく心細くて……」
「ご、ごめん」
何か大変なことでもあったのか。
いつも以上に、気が立ってる様子だ。疲れてるのだろうか。
「ラスボスは! ラスボスはどこにいるんだ!」
レッドが興奮しまくっている。
「ラスボス? 先に倒しといたわ。暇だったから。奥の部屋で伸びてる」
「……おお。そうか」
がっくりと肩を落としている。
「ところで、メアリはどうして救援を呼んだの?」
「それがね。大変だったのよ……詳しく話せないんだけど……ま……ぞ」
メアリが顔面蒼白になり、前に目を剥けた。
「なんで! なんであんたがここにいるのよ! どうして!」
メアリが言う『あんた』とは、案内係のお姉さんのことだった。
彼女、いや、彼だったかもしれない。
とにかく、その人物は、私を見ながら笑いかけた。
「フフフ! ありがとな。感謝してるぜ。この扉、なかなか開かなかったんだよ」
メアリは震えながら、声を出した。
「どうして、あなた……」
「魔物というのは、光の力が苦手。だから、光のマナが浮いてるこの場所なら、奴は入ってこれないはず。そう考えたんだろうが、見通しが甘かったな。オレの体はそんなヤワじゃねーんだ」
男が近寄ってきた。
メアリが手をかざした。
「来るな! それ以上、近づいたら……」
「どうするんだ?」
「こうしてやる! ホーリー! ホーリー! ホーリー!」
聖女の得意な光魔法『ホーリー』の三連射。
普通の魔物なら、この攻撃で立っているものはいないだろう。
普通の魔物なら……。
「ああ、変装セットが壊れちまった。また、作り直さなきゃなんねえ」
ボロボロと体が崩れていき、そこから魔物の本性が見えてきた。
「……」
異様な空気を纏っていると思ったが、まさか姿まで異様なんて。
「……スロットマシン」
手足の生えたスロットマシンが、私たちに語り掛けた。
「おおっと、自己紹介がまだだったな。オレの名は『オバケスロット』。聖女メアリに、勇者ステラ。悪いが、ここでくだばってもらうぜ。魔王様のためにな」




