第57話 赤と緑①
「さーて、みんな! 準備はいいかな?」
「おう」「はい」「にゃあ」「……ん……」「うん」
うん。良い返事だ。 元気があっていい。
只今、テーマパーク『グレイトピア』――光の英雄コースに挑戦中。
『陸』の関門を突破したので、あと二つだ。
「それでは、次に挑戦する二人を発表しようかな」
私はもう出た。ブラックも。
というわけで、残りのメンバーから選ばなければならない。
「まずは、レッド。あなたに行ってもらうよ」
「よっしゃあ! 来たか」
「『ジャンプ』のスキルは、ちゃんと覚えた?」
「ばっちりだぜ!」
「そう」
じゃあ、レッドに任せても安心かな。
「もう一人は、グリーン。あなただよ」
彼女は座ったまま、答えた。
「にゃあ」
なんて間の抜けた返事なんだ。
今は、聖女を救出するという大事なクエスト中なのに。
「いつまで座ったままなの? 次はあなたの番なんだよ」
「にゃあ」
「返事は『はい』でしょ」
「にゃあ」
困った娘だ。
私は頭に触る。
「……ん?」
なんか、頭が小さいような……。
「これグリーンじゃない! ネコだ!」
「……そのネタ、前にもやったぞ」
「しつこい人は嫌われますよ」
ごめん。
しつこい女で、ごめん。
「グリーンはどこに行ったの?」
「さっき外に出てったよ」
仕方ない。探しに行くか。
☆
館内は広いとは言っても、グリーンの行きそうなところは検討が付く。
案の上、すぐに発見できた。
場所はカジノだ。
テーマパークに備え付けられた遊び場の一つ。
利用するのはコインで、それはお金を払って購入しなければならない。
だが、入会特典で数枚ほどもらったのだ。
どうやら、彼女はその数枚だけで遊び続けているらしい。
「……へえ」
ポーカー、ブラックジャック。向こうはルーレットだろうか。
基本的なものは、揃っているようだが。
グリーンのお気に入りは……。
「えい!」
右のレバーを引く。
すると、ガチャっと音がして、スロットが回転。
「……」
かつてないほどの迫真の表情で、画面を見つめている。
戦闘中でも、あんな顔は見たことない。
そして――。
「てりゃあああああっ!」
気合を入れて、ボタンを押す! 押す! 押す!
回転が止まる。
絵柄は……ナイト。ナイト。ナイト。
「やったあ!」
下の口から、ジャラジャラとコインが溢れてくる。
床中がコインだらけで、足の踏み場もなくなっている。
「おい。あの子、また当てたぜ」
「グリーンさん、ヤベーな」
他の客たちも感心し、グリーンに賛辞を送っている。
「えへへー」
彼女は照れ臭そうにしながら、レバーをガチャリ。回転スタート。
「……うーん」
分かってはいたが、すげえ楽しんでるな。
止めさせるのが、もったいないぐらいに。
「やったあ!」
コインがジャラジャラ。
今度は、ウィザードか。いくつ絵柄があるんだろう。
「お嬢ちゃん。教えてあげよう」
後ろから、おじいさんが話しかけてきた。
「絵柄は全部で四つあるんじゃよ。ウィザード、ナイト、ヒーラー。そして、ブレイブス」
「へえ。四つ」
「ちなみに、この絵柄は何を表しているのか分かるかな?」
「さっぱりです」
「勇者パーティーのメンバーじゃ。お嬢ちゃん、常識ないのう」
そうか。勇者パーティーは四人編成だったんだな。
私のところは六人いるけど。
「やったあ!」
また、当たってる。ブレイブスの絵柄が出揃ったようだ。
「おめでとうございます! おめでとうございます! ボーナス出ました! ボーナス出ました!」
店員が叫ぶと、周りがざわつき出した。
ボーナス? なんのことだろう。
「凱旋ボーナスじゃね。魔王との戦いから町に帰ってきた順番。ナイト→ウィザード→ヒーラー→ブレイブス。こうなるわけ」
「ほへえ」
普通に、勉強になるな。
「ちなみに、入城ボーナスというのもある。こちらは魔王城に入った順番で、ブレイブス→ヒーラー→ウィザード→ナイト。凱旋の逆じゃね」
なるほど。順番ね。
それがそのままボーナスになってると。
「って、私!? こんなところで、油を売ってる場合じゃない! グリーンを連れて行かなきゃ」
そんなわけで、グリーンを引っ張ってきた。
「おい。ほっぺたが膨らんでんぞ」
「ぷっくー!」
「ごめんって。クエストが終わったら、好きなだけやらせてあげるから」
「ほんとー? それなら、がんばるー」
この二人には、『空』の関門に行ってもらうことにしよう。
☆
パタパタパタパタ! ≪シードローン≫を飛ばしてもらった。
私たちは、水晶玉を通して、レッドとグリーンの様子を伺う。
緑色の大地。見上げれば、一面が青空で広がっている。
「すげえところに来たな」
「雲が近いところにあるよー」
案内係のお姉さんが説明した。
「『空』の間は、浮島ステージとなっています」
レッドが眉をひそめる。
「浮島ってことは、空に浮いてんのか?」
「そうですよ。端まで行ってみてください」
そーッと下を覗き込んだ。
「……そ、底が見えねえ」
「わー。レッドー。ビビってるー」
「だ、誰がビビるかよ」
「わあ!」
「きゃああああっ! やめろ! 押すなあっ!」
高い声が出ちゃってるな。
「あっ、落ちませんよ。見えない壁があるので」
「そんなもの見えねえぞ」
全然、信用してなさそうだ。
代わりに、グリーンが手を伸ばしてみる。
「ほんとだー。壁があるよー……。よいしょっと。こうやっても、落ちないー」
見えない壁は、横だけではなく上にも張られている。
透明の壁がドーム状に覆われているようだ。
「ねー。レッドも来てよー。面白いよー」
「……イヤだ。死んでも行かねー」
ステージの説明は終わったので、次はモンスターだ。
しかし、敵の姿は確認できない。
「敵はどいつだ! どんな奴だ!」
そう言って、威嚇するように、剣を素振りしている。
「強いのかなー。どこにいるんだろー」
「グリーンさんは、感知が上手と聞いてますよ」
「あー、忘れてたー……ムムー、ムムー。あっちー」
西の空を指し示すと、そこから何かが飛んできた。
黄色の大きな鳥である。
「クエ――ッ!」
特徴的な鳴き方をしている。
「クエー鳥です」
「ほへえ。マジで鳥なんだな。ブルー、頭が良いな」
口を半開きにしながら、天を仰いでいる。
「ムムー! ムムム―! 攻撃が来るよー」
「そうか……よし!」
レッドが剣を持ち、身構えた。
いったい、何をしてくるんだ。




