第56話 黒とステラ➁
テーマパーク『グレイトピア』。
私たちはそこで『光の英雄コース』に挑戦することになった。
その先で、聖女メアリが救援を求めているからだ。
現在のメンバーは……。
メインメンバー:ステラ ブラック
控え :レッド ブルー グリーン ピンク
「ガアアアアアアッ!」
赤鬼のモンスター、オーガが私に向けて、こん棒を振り下ろしてきた。
――ブン!
風を切る音。
先ほどのように命中すれば、そのうち頭が割れてしまうかもしれない。
「……神速!」
地を蹴り、右に高速移動。
こん棒は地面にめり込んだ。
「はあっ!」
その隙に、鬼の腕に剣を突きたてる。
今は人数が少ないので、少しずつでもダメージを入れる必要がある。
「ガアアアッ!」
今度は腰を捻って、こん棒を横に振ってきた。
縦がダメなら、横って感じか。
たしかに、『神速』では避けにくい攻撃だ。
――ブン!
背を屈めて、初撃をかわす。
同時に、足に力を溜める。私の足が淡く光る。
オーガが手首を返して、ふたたび攻撃を繰り出した。
「……よし」
私は待ってましたとばかりに、スキルを発動。
「ジャンプ!」
飛び上がる。ただ、それだけのスキルだが。
少し力を溜めれば、数メートルは余裕で飛べる。
「ガアアアアアッ!」
空中に飛んだ私を狙うようだ。
だが、その行動はとっくに読んでる。
「……ん……」
ブラックの『挑発』が発動した。
相手は私の存在が気にならなくなり、ブラックに目を向ける。
今のうちだ。
鬼の肩に飛び移り、剣を突きたてる。
――ザク! ザク!
痛かったのか、オーガが私に手を伸ばしてきた。
「ジャンプ!」
飛び上がって、回避。
「……ん……」
そして、またブラックの『挑発』。
敵の注意が逸れた。
隙ができたので、私はまた剣で刺す。
――ザク! ザク!
ほとんど、ハメ技である。
だが、音に反して、あまりダメージはないな。
おそらく、防具のせいだろう。
人型のモンスターは、私たちと同じように装備ができるのだ。
だから、装備が良いと、それに比例して能力が高かったりする。
「……防具を壊すか」
作戦変更。
私はオーガの体から降りて、後ろにさがる。
「ブラック。お願いね」
「……ん……」
敵の間合いから出た。
後衛にまわって、魔法攻撃に切り替えよう。
「セイントスピア」
すかさず、腕防具を破壊。
「ガアアアアアアッ!」
向かってきたが、私の前にはブラックがいるのだ。
おまえにブラックの防御が崩せるのか?
「さあ、ブラック! 防御して!」
「……ん……ん……」
あれ? 否定した?
様子がおかしいな。
「……ブラック?」
その瞬間、私に衝撃が走った。
なんと! ブラックが! あのブラックが――!
盾を投げ捨てたのだ!
ポイッと、まるでゴミでも放るように。
「え、ちょっ、ブラ……ブラック!?」
「……ん……」
代わりに、手から何か出してきた。
あれは……ハンマーか。
「ガアアアアアアッ!」
敵が来たぞ。
いいから、盾を拾って。
「……ん……」
――ビュッ……バキッ!
オーガの顔をぶん殴った。ハンマーで。
「ガアア?」
怯むオーガ。
――ビュッ……バキキッ!
さらに、もう一発。
敵の防具は砕かれてしまった。
そこからも、ブラックは殴る。殴る。殴る。
気づけば、ハンマーの方が先にぶっ壊れていた。
モンスターも完全に虫の息である。
「……ん……」
ブラックはすがすがしい顔である。
状況がつかめん。
「なぜ、盾を捨てたの?」
「……ん……」
「え? いつも守ってばかりだと飽きるから、たまには攻撃したくて?」
「……ん……」
なんと。ブラックは武器を持って攻撃したかったのか。
カタログ見てたのも、良いハンマーを選んでいたのか。
「ハンマーで殴るのは楽しかった?」
コクコクと頷いた。
それなら、仕方ないね!
「でも、あなたは盾職だから、盾は大事にね」
「……ん……」
よく分からないが、モンスターは倒した。
私たちの勝利である。
☆
「ただいま~」
わりと疲れた。
ジャンプでぴょんぴょん跳ねたけど。
慣れないスキルを使うってのも、体力が要る。
しかし、ブラックのおかげもあって、スキルを温存できたのはよかったか。
特に『流星』は一度しか使えない。
あとから強敵と戦うことも考えて、ぜひ残しておきたい。
「『陸』の関門クリアです。おめでとうございます」
案内係のお姉さんが、パチパチと手を叩いた。
「向こうをご覧ください」
ボッと燭台の一つに火が灯った。
これで残りは二つである。
「では、次の関門を」
「すみません。少し待ってもらえますか?」
「構いませんよ」
お姉さんに許可をもらったので、みんなのところへ戻る。
「ねえ、ブルー。映像見てた?」
「敵はオーガでしたね」
「次はなんだと思う?」
「『陸』がオーガということは……。『海』と『空』はそれぞれのフィールドに対応したモンスター、ということでしょうか」
ここはテーマパークだ。
派手に演出したいなら、そうするだろう。
『海』は魚で、『空』は鳥とか。
だとしたら、戦いにくい相手だ。
私が『陸』を選んだのは、失敗だったかも。
「レッド! こっちに来てくれる? あなたにこの本を読んでもらいたいの」
「本だあ! そんなもの読めるかあ!」
「いや、読んでよ。簡単だから。すぐにスキルを習得できるの」
スキルの名は『ジャンプ』。私も先ほど覚えたものだ。
レッドの剣は、魚や鳥には届かない。
モンスターにボコられる姿が、容易に想像できてしまう。
なので、これを習得させて、ジャンプ斬りをさせたい。
「読め! リーダー命令だ!」
レッドに本を手渡した。
「……えっと……どれどれ」
シュウウウウウウッ!
頭から、湯気が沸き立った。
「……ジャプジャプ……ジャパジャパ……すかっとジャパン」
なんか意味不明なこと言ってる。
ダメだ。この娘、想像以上にバカだったんだ。
「ブラック先生。お願いします」
「……ん……」
さらさらと紙に絵を描く。
わずか数分足らずで、四コマ漫画の完成である。
レッドに見てもらう。
「……ジャンプ……跳ねる……ははっ。なんだ簡単じゃないか。答えは全てここに描いてある」
レッドは覚醒したように、本を読み解いていく。
その調子だ。スキルを習得してくれ。




