第51話 VSアイゴン①
様子がおかしい。
目玉の魔物『アイゴン』。
私たちパーティーは、四人の力でそいつに手傷を負わせた。
そして、あと一歩のところまで追いつめていた。
最後はミリアでとどめ。そういう手はずだったのだが。
「キュルルルル」
元気になってる!
手傷なんかどこにもないし、ぴょんぴょんと跳ねまわっている。
「こちらに向かってきますね」
ふわふわと湖を浮遊して、地面に降り立った。
身構える私たち。
しかし、目玉はその場を跳ねるだけで何もしてこない。
「よく分かんねーが、復活してるぞ」
「あと一歩だったのにね」
本当だ。様子からして、やせ我慢しているという感じもしない。
完全に全快していると言っていい。
情報では、アイゴンにそんな能力はなかったはずだが……。
「ということは、考えられるのは……」
ミリアか。彼女の『魔物活性化体質』が目玉に変化をもたらしたんだ。
しかし、それならレベルアップもしてることになるけど……。
「ああ。もう面倒くせーな。いつまでじっと睨み合ってんだ」
レッドはイライラしながら、剣を抜いた。
「あたしは行くぜ」
「待ってレッド。まだ、あいつの対策が……」
「バカか! 仕掛けなきゃ何も始まんねーだろうが!」
レッドは飛び出した。
正眼の構えで、モンスターに切りかかる。
「キュッキュ!」
目玉は鳴くと、バリアを形成。
赤い透明のバリアだ。物理攻撃を跳ね返すことができる。
「おまえの戦い方はもう割れてんだよ……とう!」
レッドは直前でジャンプした。
「今だブルー! やれ!」
「はい……ウォーターカッター」
水が刃状に変化。目玉に襲い掛かる。
「キュ……キュキュ」
「そのバリアじゃ、魔法を防げないだろ」
バタバタして焦り出すが、避けられない。
水の刃が、アイゴンに直撃する。
「キュウウウッ!」
「一丁上がりだぜ……ん?」
予想外の事態。
モンスターが倒れないのだ。
「変だな。体が切れてねぇ……それに、なんだ?」
バチバチッ! アイゴンに電撃が走ると。
「体が紫色になって……いや、これは……」
「キュキュウウウ……」
「……バリアか」
≪リフレクトオール≫
難度 ★★★★★★
属性 光
使用回数 ∞
成功率 100%
説明 紫色のバリアを形成。物理・魔法を問わず、あらゆる攻撃を跳ね返す。
反射ダメージ100%アップ。
「……まずい」
私のところからでも分かる。
アイゴンの体に凄まじいエネルギーが溜まって行くのだ。
レッドは呆けている。
もしも、あんな位置から反射ダメージを受けたりしたら……。
エネルギーが一点に集中していく。
レッドの顔を紫色の光が照らした。
「キュキュウ……」
「レッド!」
反射が来る。
私は前に踏み出して、叫んだ。
「……神速!」
高速移動して、レッドの服を掴んだ。
「……おお」
強引に引っ張って、彼女を転ばせる。
紫色の光線が、レッドの体をかすめた。
チリチリ! 服の一部が焦げる。
おい、これ防具だぞ。熱には強いはずだぞ。
それを焦がすって、どんな威力だ。
「ちょっと、ぼおっとしないでよ!」
「……すまねえ」
でも、レッドが突っ込んでくれたおかげで、目玉の能力は判明した。
物理は赤いバリア。魔法は青いバリア。
先ほどまでは、二つのバリアを使い分けていた。
そして、どちらか片方しか出せなかったのだ。
だが、≪リフレクトオール≫は紫のバリアで、物理と魔法の両方に対応している。
これがアイゴンのレベルアップ。
全ての攻撃を跳ね返せるってことか。
「どいてくれ。あたしが切る」
「無理よ。見たでしょ。凄い威力だったの」
ブルーの魔法を、二倍の威力で跳ね返したのだ。
レッドでも受けきるのはきつい。特攻は無理がある。
「じゃあ、どうすんだ?」
「うーん」
まず、最初の対策として……。
「ピンク。バフだよ」
「ガードアップ! ガードアップ!」
私たち全員に能力アップをかけてもらった。
「これで、どうなるんだ?」
「防御力を上げたから、反射ダメージを減らせる」
「ほへえ」
でも、根本的な解決にはなってない。
というか、攻撃しなきゃ反射は来ないし。
「やっぱ、攻めるしかなくねーか」
「そうだよね……って、ダメだよ! 反射が来ちゃう」
あわあわ。私、考えろ。何か良い案は……。
「ステラさん。私に考えがあるのですが」
「おお。ブルー。何? 名案が浮かんだ?」
「えっと……」
なるほど。良い案かも。採用。
☆
「≪シードローン≫!」
ブルーの手のひらから、ドローンが出現。
パタパタパタパタ! 空に飛び上がった。
「≪シードローン≫! ≪シードローン≫! ≪シードローン≫!」
更に、二機、三機、四機、と、ドローンの数を増やしていく。
パタパタパタパタ! 散らばって飛んでいき、目玉の怪物を取り囲んだ。
「バリアの大きさが変わってなかったんです」
ブルーが説明する。
「あの大きさでは、180度までしかカバーできません」
「つまり、あいつには死角があるってこと?」
「死角と呼べるほどでもありません。頭上も背後も空いています。撃ち放題です」
ふむ。それでは、やってもらうとしよう。
ブルーが操縦することで、四機のドローンを自在に動かすことができる。
ドローンはアイゴンを中心に円を描くように飛びまわっている。
「キュルキュルキュル……」
アイゴンが目を回しそうになっている。目玉だけに。
「やります」
「うん。お願い」
彼女はバッと手を振り、掛け声を出した。
「ショット!」
ドローンの下部から銃口が出てきた。
チュンチュン! 小気味良い音と共に、散弾が撃ち込まれる。
四機は同時に攻撃。
さらに散弾なので、ほとんど滅多撃ち状態。
これでもか、というほど撃ち込みまくっている。
……ブルー。ストレスでも溜まってるのかな。
「……これでやれたはずです」
シュウウウウ! 白い蒸気が上がっている。
やがて、晴れていくと、そこには……。
「キュルルル」
目玉がいた。ピンピンした様子だ。
あれだけ散弾を受けたのに、まったく傷を負っていない。
見ると、その表皮には紫の波紋が。
「キュルキュル!」
散弾が紫色の光線になって、撃ち返された。
パタパタパタパタ! 逃げきれない。
ドローンたちが、反射ダメージの餌食に。
「ダメっぽいね」
「……はい」
肩を落としてる。
自信があったんだろうな。
どうやら、≪リフレクションオール≫は盾というより鎧。
全体を覆い尽くす膜のようなものらしい。
それが分かっただけでも、十分だ。
次に行こう。
☆
「……う……ウルトラアップ」
――ブックン!
ぶくぶくピンクが、アイゴンを掴み上げ、ホールドをかけた。
ミシミシ! 目玉が馬鹿力により、細長くなる。
打撃じゃなければ反射されないのでは、と考えたのだが。
――バッシーン!
「きゃあああああっ!」
ダメだったらしい。
「……ダメだ。対抗策が」
私は思った。
このまま、待ってればいいんじゃないか。
どうせ、アイゴンは自分から攻撃してこない。
待っていれば、日が暮れて夜になるのだ。
そうすれば、相手も眠りにつき、その隙にグサリ!
楽勝で討伐できるな。
と、勇者にあるまじき考えが浮かんでいたのだが。
どうやら、その考えは間違っていたようだ。
「キュルルルルル!」
さっきと微妙に鳴き声が違う。
「……地面が揺れてるぞ」
「危険ですよ。みなさん、離れないように」
そこで気づいた。
「……スキルか」
反射だけではない。
こいつはまだ能力を隠し持っていたのだ。




