第52話 VSアイゴン➁
「キュルルルルル!」
さっきと微妙に鳴き声が違う。
こいつ、スキルを発動する気か。
地面が揺れているが、これ自体はダメージがない。
だが、この揺れ、どんどん大きくなっている。
「足音じゃないかな」
ピンクが言った。
「きっと仲間を呼ぶために鳴いてるんだよ」
なんだと。
それはひょっとして……。
≪仲間を呼ぶ≫
難度 ★
属性 無
使用回数 10/10
成功率 80%
説明 仲間を呼び出すことができる。
「なんだそりゃ。どんなスキルなんだ」
「そのまんまだよ。モンスターがよく使ってくるの」
モンスターがドタドタと音を立ててやってきた。
トレントだ。先ほどから、この辺りで群れを作っていた。
やってきたのは三匹だが、まだ奥からもっと出てきそうだ。
「キキ―!」
「キュキュル……」
何やら会話している。
「へっ。何が出てくるかと思えば、ただの雑魚じゃねーか。しかも、三匹程度なら、話にならねえ」
まあ、私もそう思う。
しかし、こいつら、攻撃させるために連れてきたのか?
「キュッキュ」
「キキー!」
話はまとまったみたいだが。
「キキー!」
トレントは腕を振り、目玉を殴りつけた。
――バキッ!
手加減が感じられない。本気のパンチである。
「キキー!」
更に、残りの二匹も参戦。
――バキッ! ベキッ! ゴキッ!
三匹で、アイゴン一匹をボコボコと殴りつける。
袋叩きである。酷いイジメを見た気がする。
「仲間割れか?」
「モンスターの世界も大変なんだね」
いや、そうじゃないだろう。
私はすぐに分かったぞ。アイゴンの狙いが。
「反射ダメージを溜めてるんですね」
「……はあ?」
「アイゴン自身の攻撃力は大したことはない。だから、仲間に殴らせることで、ダメージを蓄積させているのです。私たちに、反射させるために」
「……酷い。それって、本当に仲間なの?」
ピンクは憐れむが、これだって立派な戦略の一つだ。
彼らだって、別に好きでやってるわけじゃ……。
「キキー!」
ないよね?
あれ? 今、笑ってるように見えたぞ。
実はアイゴンって、嫌われ者?
「のんびりと会話してる場合でしょうか?」
「うん。まずいね」
トレント達はすっきりしたのか、その場をあとにする。
「キュッキュ」
目玉の体が、紫色に染まり切っている。
そして、エネルギーは一点に、瞳の部分へと収束していく。
ビリビリ! 鳥肌が立つ。
高威力の魔法が炸裂しそうだ。
だって、アイゴンの周りの空間が歪んでいるから。
ブルーの≪シーバスター≫と同様に、魔法としての密度が半端ない証拠だ。
「キュキュキュ」
私に瞳を向けて、ニヤッと笑った。
そして、ビームが発射。シュイン! 私の横を通り過ぎ、木々を折っていく。
まだ用意しているようだ。
ずいぶん溜めたようだし、あと十発ぐらいはあるのかも。
「……これ以上、撃たせるわけには」
みんなも危険にさらすことになるからな。
そろそろ、私も本気で行こう。
「……神速!」
高速移動で距離を詰める。
驚くアイゴンの前で、私は剣に手をかけた。
「……うけてみろ」
戦闘中に一度しか使うことができない。
私の奥義――。
「……流星!」
鮮やかな光に包まれた。
私の剣は、凄まじいスピードで、敵を切り刻む。
十……二十……三十……。
目玉のバリアを切り、切り、そして、切って行く……四十……五十……まだ続く……六十……七十……まだ終わらない……八十……九十……。
「……」
「キュキュ?」
効いてない! 効いてないぞ!
流星なのに。私の奥義なのに。
また、エネルギーが収束していく。
やばい。反射ビームが来る。
「うわああああっ……神速!」
後ろへ退避。
「レッド。煙だ。モクモクして」
「よっしゃあ! 狼煙断! 狼煙断!」
煙が噴き出し、モヤがかかった。
「≪シーキャノン≫!」
固定砲台が出現。
「みなさん。後ろへ」
わたわたと移動して、身を隠す。
「ピンク」
「ガードアップ! ガードアップ!」
砲台の防御力を上げる。
――キィン! スカッ! スカッ! キィン!
わー。怖いー。反射ビーム怖いー。
「……キュキュ」
「収まったようですね」
「死ぬかと思ったぜ」
弾が尽きたようだ。
おずおずとしながら、アイゴンの様子を伺ってみる。
色が元に戻っているから、とりあえず大丈夫だろう。
しかし、またトレントを呼んで殴ってもらうに違いない。
「ステラちゃん。あれ見て」
ピンクの視線の先には、バリアー……。
「あっ、あれって」
「うん。ヒビが入ってるみたいなの」
バリアーに傷がついた。
ということは、あのバリアーは壊すことができるってことか。
「……原因は、私の流星か」
蓄積できるダメージ量には限界があるんだ。
それなら……。
「勝てる! あの反射バリアーを破ることができるよ。ブルー」
「はい。≪シーバスター≫!」
地面がせりあがって、サメ型の砲台が出現した。
「チャージ!」
チュイイイイイン!
砲台の先端に光が集まっていく。
「それって、最大何回までチャージできるの? あなたが無理しない範囲で」
「三回でしょうか。それ以上はコントロールが難しくなります」
「じゃあ、そこまでやってくれる?」
「分かりました」
あとは……。
「ミリア」
「え? 私ですか?」
彼女は邪魔にならないように、後ろにさがっていた。
「あなたのクエストだからね。ちゃんと活躍してもらうよ」
「でも、私なんかじゃ……」
「何を言ってるの? 勇者の技があるでしょ」
「それって」
「ここで使うの。私と一緒にね」
私たちは二人で並んで、手を合わせた。
「行くよ、ミリア」
「はい」
せーので合わせて。
「「マックスブレイブ」」
頭上から雷が落ちてくると、私たちの体に力がみなぎってきた。
「ピンク」
「パワーアップ! パワーアップ!」
これで、攻撃力アップ。
もう怖いものなしだ。
「ミリア。ついてきてね」
私たちは剣を抜き、敵へ向かって走り出した。
「キュキュキュ」
反射ビーム。まだ残っていたのか。
左右に分かれて、回避。
剣を振り上げ、
「「ブレイブラッシュ」」
息の合った攻撃により、敵の体に刃を食い込ませた。
パキパキッ! バリアに更なるヒビが。
まだだ。ここから……。
「「はああああああっ」」
スキルによる確定クリティカルが、アイゴンに大ダメージを与えて――。
パリ―ン!
バリアを粉々に。
「……キュ……キュ」
アイゴンは倒れた。




