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第47話 女神と交渉


 女神ローザに抗議することができるそうだ。

 さっそく、行ってみよう。


 というわけで、私たちは神殿の奥深くの通路を歩いている。

 先頭は神官のヨルクさん。私がその後ろに。


「……ガ、ガツンと言ってやらないとね。こう、ガツンと……」

「おーい。声が震えてんぞ」


 今から、神とお喋りするんだぞ。

 緊張するに決まっているだろう。


「ローザって、どんな性格をしてるんだろう」

「神と言うからには、厳格な性格なのでは」


 ピンクとブルーが、また呑気な会話をしている。


 底意地が悪いに決まっているだろう。

 私たちの妹―ミリアを泣かせたクズ女神なのだ。


「レイラントさん。底意地が悪い。クズ女神。全て聞こえてますよ」

「……はうわ!」


 声に出してないのに。なんで。


「神は全てお見通しなのです」


 神様、怖い。気をつけないと。


「着きました」


 女神ローザをかたどった石像が立っている。


 その姿は清楚で、可憐で、おしとやか。

 まるで絵の中から飛び出したかのような完成された美しさをそなえていた。


 絶世の美女とは、彼女みたいな人を言うんじゃないのか。

 もしも、私が男性ならすぐにも惚れていたことだろう。


「そうです。その意気です」

「はい。がんばります」


 石像の足元には、机が設置してある。

 そして、そこには白い箱と分厚い紙の束が。


「この紙に文字が浮き上がってきます。それで、神からのお告げを受け取ることができます」

「なるほど。分かりました」

「手始めに、検定を受けてみてください。あなたにふさわしい職業を教えてもらえます」


 と、質問が書かれた紙を受け取った。


 内容は心理テストみたいなものだ。


 親友と恋人が魔物に襲われました。

 どちらを先に守りますか?


 と言ったような質問が数十問にわたって書かれている。

 こんなもので、何が分かるのだろうか。


 とりあえず、答えてみた。

 箱に入れてみる。


 すると、文字が浮かび上がってきた。

 読んでみる。


 職業:勇者  

 備考:能力はあります。あとはどう活かすかです。期待しています。


「レイラントさんは、勇者がふさわしいようです。女神にもお墨付きをいただいていますね」


 私は大丈夫なようだ。

 というか、わりと高評価じゃないか。アドバイスまで書かれている。


「次は……レッド。やってみてよ」

「あたしもやるのか」

「転職に興味があったんでしょ? やってみてよ」


 質問に答えて、箱に入れた。


 職業:剣士

 備考:バカ。どうしようもなく、バカ。何も考えず、突っ走れ。


「よかったね。褒められてるよ」

「そうなのか」


 続いて、ブルーだ。


 職業:魔法使い

 備考:寒くなってきたので、お体を大切に。


「体調を気遣われています」

「他に言うことはないってことじゃない?」


 ピンクもやってみる。


 職業:踊り子

 備考:ヘソが出てる。お腹、冷えそう。


「なんの話?」

「神様の率直な感想なんじゃないの」


 最後は、ミリアだ。

 女神は彼女のことを、どう見ているのか。


 職業:剣士ならできそう

 備考:根性が足りない。一から出直してこい。


「剣士ならできそう……」


 ミリアが呆然としている。

 なんか、彼女にだけ当たりが厳しいな。


 文字も走り書きで、やっつけ感が酷い。

 神の気に障る答えでも書いたんだろうか。


「ミリア、気を落とさないでよ。剣士なら、やっていいみたいだよ」

「うわああああん! 剣士やだああ!」


 やっぱり、剣士じゃダメ?

 仕方ない。抗議しよう。


 私はビシッと石像を指して、言い放った。


「異議あり! ミリアは勇者がやりたいと言っている。このお告げは認められない!」


 こら女神! 調子乗ってんじゃないぞ!

 今すぐミリアが勇者だと認めろ! ボケが!


 ――ガッシャン!


「……あたっ」


 なんか頭に落ちてきた。


 クエスト:鏡の涙を入手せよ

   期限:三十日以内。


「何だこれ?」


 もしや、限定クエストという奴か。

 特殊な条件を満たしたときにのみ発生すると言われている。


 さすがは神だ。

 これは特殊なイベントってことか。


 ――ガッシャン!


「……どぅわはっ」


 再び、頭に落ちてきた。


 条件:ミリアの同行。加えて、ミリアに勇者の技を使用させよ。

 備考:誰がボケだ。ボケは貴様だ。


「怒ってらっしゃる。ひとまず、謝っておこう。ごめんなさい」 


 でも、クエストを達成すれば、ミリアを勇者だと認めてくれるのか。


「今回だけは大目に見てくれるそうですよ」


 女神ローザ、意外に話が分かる人じゃないか。

 

「ありがとうございます。頑張ります」


 とりあえず、石像に祈っておこう。

 ありがたや、ありがたや。


「『おまえは頑張らなくていい。ミリアにも少しは働かせろ』と言ってます」


 そうか。ミリアに……まあ、考えておこう。


 というわけで、神様に約束は取り付けた。

 私たちは神の石像を後にする。


「ステラさん。あれを見せておきませんか」

「なにブルー。なんの話?」

「書物です」

「なにそれ?」


 ピンクが私のカバンを叩いた。


「前に、盗賊団を倒したことがあったでしょう? そのときに、アジトにあった宝箱を開けたよね?」


 アジト?……ああ、あれか。

 中には書物が入ってたんだけど、中は謎の文字が使われていて、まったく読むことができなかったのだ。


「ヨルクさんに見せておいた方がいいんじゃない?」


 神官というのは神学校を卒業しており、難しい学問を勉強している。

 もしかしたら、書物の文字も解読できるんじゃないのか。


 ブルーとピンクは、そう考えてるわけか。


「ヨルクさん。見てもらいたいものがあるんですが」


 ヨルクは本を受け取ると、中を拝見した。

 真剣な眼差しだ。どうやら、興味深いものが書かれているようだ。


「この書物をどこで?」

「荒廃したダンジョンで発見したものなんです」


 ペラペラと捲りながら、顔をしかめている。


「読めるんですか?」

「いえ。まったく。これっぽっちも」

「え?」

「しかし、文字の形式から考えて、ずいぶんと古いもののようです……素晴らしい」


 ヨルクは、目を輝かせている。


「レイラントさん。これをしばらく僕に預からせてもらっていいですか。悪いようにはしません。知り合いなどにも当たって、細かく分析してみようと思うのです」


 私は構わない。

 彼に預けてみることにしよう。

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