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38 転送テスト


 今回のメンバー……。


 メインメンバー:ステラ ブルー グリーン ブラック

   控え   :レッド ピンク (ミリア)


 今から転送陣に乗って、遠くまで移動する。

 そのメンバーが選ばれたわけだが。


「……ふむ」


 この組み合わせは、ありそうでなかったかもしれない。


「ピンクは分かるよ。ミリアと一緒にいてあげた方がいいから」


 というより、ミリアが手放してくれないだろう。


 彼女は『お姉さま』と言いながらベタベタとくっつく。

 そうやって、精神の安定をはかっているのだ。


 ……くっ。本当なら、私がそのポジションに。

 いや、それは今はどうでもよくて。


「レッド。どうしたの? 新しいダンジョンに行けるって喜んでたでしょ」


 いつもなら、ついてくるだろう。

 初めに突っ込んでいくのは、彼女の仕事みたいなものだ。


「……あたしは、いいよ。今回は留守番で」


 そう言うと、隠れるように後ろにさがった。


 どうした前衛。しっかりしろ。

 あなたの位置はそこじゃないぞ。


「ステラちゃん。ちょっと」

「なに?」


 ピンクが私に耳打ちしてきた。


「レッドちゃんね。聞いちゃったみたいなの」

「え? なにを?」

「ハエ男の話だよ」


 もしや、それは舞台化までされたあの有名な『ハエ男』のことを言ってるんだろうか。


 昔、一人の博士が転送装置を開発した。

 その博士がさっそく実験しようとすると、そこにはハエが。


 間違えてハエと一緒に転送してしまった博士。

 転送後、装置から出てきた彼は、なんと――。


 頭がハエ、胴体が人間になっていたのだ!


 と言ったあらすじの怪奇ホラーである。


「それで、レッドちゃん、怖くなっちゃったみたいで」

「なるほど」


 私も大げさに言いすぎたのかもしれないな。 

 

「レッド。あれはね。創作なんだよ。お話を面白くするためのスパイスみたいなものなの」


 と、穏やかな声で説得するが、彼女は首を横に振った。


「嘘つくな! あたしは聞いたんだ。ハエ男のミイラが発見されたって。それで、王都の地下施設に安置されていて、医者たちが解剖実験を……」


 なんだそりゃ。

 いろんな話がごちゃ混ぜになってる。


 町のおばさんたちの会話でも聞いてしまったのか。

 とにかく、レッドは信じ切ってしまっている。


 知ってたけど、根は素直な娘なのだ。


 では、ハエ男の物真似を。


「ブ――ン」

「……やめろ」

「ブ――ン。ブンブ――ン」

「……や、やめてくれ」


 縮こまって、体を震わせている。

 普段とのギャップもあって、かわいらしい。


 ――バシッ!


 ピンクが、私の頭を叩いた。


「ステラちゃん! 最低!」


 うん。本気で怖がってるようだし、やめてあげよう。


 しかし、レッドは転送陣に入れないか。

 これは今後冒険していくうえで、かなりの痛手になりそうだ。


 戦力が大幅にダウンしてしまう。

 何か対処法を考えておかないと。


 

 ギルドの裏側にある黒い建物にやってきた。

 転送陣は、奥の部屋に配置されている。


「……よっと」


 ガラガラ! 賢者さまの石像は邪魔なので、隅に追いやる。

 

「これが転送陣か。わりとでかいんだな」


 レッドも驚いているが、直径数メートルほどの大きさはある。


「……えっと、まずは賢者さまにもらったメモを」


 横の装置をいじって、軽い設定をしなければならない。


「ブルー。やって」

「わかりました」


 ダイヤルをカチカチと回して、ボタンをいくつか押していく。


 無機質な音がすると、魔方陣がうっすらと光り出した。

 スイッチが入ったようだ。


「みんな。乗って」


 私が陣に入ると、ブルー、グリーン、ブラックがそれに続く。


「レッドとピンクは見張っておいてね。転送中に魔方陣が途切れると、事故の原因になるから」


 で、目的地についてたが。


 登録地点は二つあり、一つは転職の神殿。もう一つはコダールの村。

 ギルマスには、後者に行くように言われている。


「……村か」


 もちろん勝手に登録するわけにはいかないので、普通は町長の許可が必要になる。

 しかし、許可って、なかなか降りてこないもの。


 だから、こうした村で試験的に導入することは、よくあったりする。

 

「じゃあ、出発しようか」

「はい。では、ボタンを……」


 ブルーがボタンに手をかける。

 やばい。心臓の鼓動が激しくなってる。


 さっきから装置が小刻みに揺れるし、魔方陣が点滅してるし。

 すごく怖いのだ。事故りそうで。


「押しますよ」


 そう言って、ボタンを――。


「ストップ! ダメ! 待って!」

「え?……はい。それなら、待ちますけど」


 手を下ろしてくれた。


 よし。ちょっと休憩しよう。

 まずは、深呼吸を……。


「もう、いつまでやってるのー!……えーい!」


 ――ポチッ!


 は? この娘、何やってんの?


「うおおおおっ! グリーン! ちょっ、あなたっ! バカ! バカー!」

「えー? 出発するんじゃないのー?」

「出発するけど! するけどね! でも、まだ心の準備が」


 ――ブイイイイイン!


 動き出した。もう止められない。

 ああ。終わってしまう。


 私は手を合わせて、目を閉じた。

 それから、天に祈りをささげる。


「神様! お願いします。私、まだ死にたくない。死にたくないんです」


 あと、せめて死ぬなら、どうか人間のままで。


 シュイイイン! 

 私たちの体は光に包まれ、ふわっと浮き上がり――。


 ☆


 生きてる! ちゃんと生きてるぞ!

 手は……ある。足も……ある。


 か、顔も……ある。

 肌を触ってみるが、つるつるしてる。いつも通りだ。


 念のため、鏡を。たしか鞄に入れてたはずだ。

 確認しよう。私の姿、どうなってる。


「……よかった。私だ。変なところないよ」


 まだ心臓がバクバク言ってる。

 レッドのこと笑えないな。すごく焦った。


「……ところで、ここは」


 どこだ。草むらなのは分かるけど。

 すっかり暗くなっていて、空には月が出ている。


「夜、みたいですね」


 私の側にいたブルーが答えてくれた。


「ウソ。私たちが転送陣に入ったのは、お昼だよ。なんで夜になってるの?」

「時差です。コダールの村は大陸の端にあるので、私たちの村から距離が離れすぎている。したがって、時刻にずれが生じているんです」


 なるほど。ずいぶん遠くまで来たんだな。

 といっても、あまり実感は湧かないけど。


「いや、でも……」


 あらためて見ると、生えてる草も違う。

 鳥や虫も変わった鳴き声をしている。


 匂いも違うな。あまり嗅いだことのない独特な香り。


「なんというか、別の世界にやってきたような気分だね」

「ええ。とても新鮮な気分です」


 グリーンとブラックもすぐ側で発見。

 みんな何事もないようだ。


「それで、ここはどこなのかな」


 予定では、同様の転送陣があるはずなのだが、ここは原っぱだ。


「位置が外れてしまったみたいですね」

「あー。人が来るよー」


 ちょうど、よかった。

 その人に道をたずねてみよう。


 ザッザッザ。足音を立て、こちらに近づいてきた。

 数は、だいたい十人ほど。


 クワや鎌を持っている。きっと農民なのだろう。、

 それから、あれは弓矢だな。狩りの帰りだろうか。


 手を振って、呼びかけてみよう。


「あのー。すみません……」


 ――ヒュッ! 突如として、矢が放たれた。

 私の頬をかすめる。


「……ん?」


 おかしいな。

 周りに獣の気配はないけど。


「もっと、よく狙え」


 男の怒号が飛ぶ。


 氷の矢も飛んできた。

 私に命中しそうだったので、とりあえず後ろに移動しておいた。


 地面に矢が刺さり、穴が開く。


「……ちっ。かわしやがった」


 更に、数本分の矢が一気に飛んできた。


「ブラック」

「……ん……」


 キィン! キィン!

 盾を前に出し、全ての矢を弾いた。


「あの……」


 ブルーが私に話しかけた。


「気のせいだったら、いいのですが。私たち襲われていませんか?」

「うーん。気のせいじゃなくて、確実に狙われていると思う」


 しかも、なぜか怒っている。

 すごい形相で、私のことを睨んでいる。


「今日こそ、とっ捕まえてやる! 覚悟しろ!」


 村の住民たちが、いったいどうして。

 

 

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