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36 VSグラニュート


「さあ、パルテ! 覚悟してもらおうか!」


 私は剣を突きつけ、パルテを見下ろした。

 彼女は涙目になって、手をバタバタさせている。


「ま、待って……お、お願い」


「なんか命乞いしてるみたいだぞ」

「ああ、聞く必要ないよ。どうせ、嘘だから。無視して」

「……酷い言われようだね」


 しかし、私は中断することにした。

 グリーンが急に前に飛び出して来たからだ。


「わーわー。来るー。来るよー」


 要領を得ないが、何を伝えたいかは分かっている。

 盗賊団にはまだ一人、強敵が残っているのだ。


 ピシッ! 

 一筋の亀裂が走ると、そこを皮切りに壁が崩れはじめた。


 武器庫の壁って、普通は頑丈に作られているものだが。

 この男にとっては、その辺りの扉と大差ないようだ。


 グラニュート。

 元山賊の賞金首にして、この盗賊団のボスである。


「よっこらせっ」


 緩慢な動作で壊れた壁を飛び越えると、武器庫の中へと入ってきた。

 元がダンジョンだっただけあって、このアジトは天井が高い。


 軽く数メートルを超えるグラニュートでも、すっぽりと体が埋まる。


「ダーリン!」


 パルテは急に明るい声になると、夫のもとへと駆け寄っていった。


「ステラがねー。酷いのー。私のこといじめてくるんだよー」

「ぐえっへっへ。そうかそうか」

「コテンパンにやっつけてー」

「任せておけ。二度と生意気な口が聞けねえようにしてやるよ」


 なんだこいつら。


 パルテが砂糖菓子のように甘い声で、夫に囁いている。

 そして、それを聞いてニヤニヤするグラニュート。


 この夫婦、普段はこんなやり取りをしているのか。


「やべぇのが来たな」


 レッドが楽しそうに声を出した。

 彼女は一度、こいつと刃を交えてるからな。


「そんじゃあ、はじめっとすっか」


 グラニュートはこちらに向き直ると、表情を引き締めた。

 斧も最初から手に持ってる。まったく油断はなさそうだ。


「……ステラちゃん。どうするの?」

「……そうだね……」


 ロイドさんはパルテの方を恐れていたみたいだけど。

 私としては、こいつの方がずっと厄介なんだよな。


 単純なスペックの高さというのは、それだけで脅威になる。

 閃きや思いつきなんかでは、どうあっても覆せないからだ。


 まずは試しておきたいことがある。


「ピンク。能力アップをかけて」

「うん。マジックアップ! マジックアップ!」


 私の体が、桃色の光を帯びた。

 

「……ええっと」


 防具は避けて、肌の露出している部分を狙う。


「セイントスピア!」


 光の槍が放たれ、グラニュートの右肩に命中した。

 ジュッと音がして、肌に黒い焦げ跡ができた。


「……う……」


 グラニュートが表情を引きつらせた。


「……効いてる」


 シグマ警備隊は、誰もダメージを与えることはできなかったけど。

 私はきちんとダメージを入れることができている。


 そして、私にできるなら、レッドにもグリーンにもピンクにも可能なはずだ。

 四人で同時に攻撃すれば、単純に計算してダメージ四倍。頑張れば、倒せる。


 だが、その前に一つ問題がある。


「あいつのスキルだな」

「そう」


 ≪ギガントグレイブ≫

 難度  ★★★

 属性  地

 使用回数 5/5

 成功率 90%

 説明 大地が砕けるほどの一撃を放つ。溜め時間によって、威力が変動。


 レッドは受けていたが、あれはまだ本気ではない。

 この技は溜め時間によって威力が変動する。


 おそらく、最大威力だと受けきれない。

 レッドだけでなく、私も他の二人も。


 要するに、今の私たちに足りないのは攻撃力ではなく、防御力なのだ。


 ブラックがいればまた変わったかもしれないが。

 今回は控え。仕方がない。


「スキルの使用回数を削ろう」

「先に攻撃して、倒せばいいんじゃねーのか」

「ダメだよ。それじゃあ、リスクが大きい」


 受けられて、反撃で返り討ちってこともある。

 向こうの切り札は、先に潰しておきたい。


「何をごちゃごちゃ話してんのか知らねえが。いくぜ!」


 グラニュートは巨大な斧を地面から引き抜くと、


「どっこらしょい」


 頭上まで振り上げて、そのまま停止した。

 見ると、身体は僅かに光を帯び、蒸気のようなものが立ち上っている。


 力を溜めている。スキル使うための準備をしているのだ。


「……まずい」


 三人に指示をする。


「いい? 最大の一撃は、何がなんでも撃たせちゃダメ! 止めるよ! とにかく、ダメージを与えるの!」

「おう」

「ピンクは攻撃力を上げて」

「パワーアップ! パワーアップ!」

「速さもお願い」

「スピードアップ! スピードアップ!」


 狙いを絞っておこう。その方が効率がよくなる。


「右足だっ! みんなで右足を攻撃しよう!」


 レッドは剣。グリーンは弓でそれぞれ攻撃。

 もちろん、私も参加する。


「ブレイブラッシュ!」


 私たちのスキルにも使用回数があり、使いすぎると発動できなくなる。

 私は魔法も使えるので、いろんな攻撃をして節約をしていきたいところ。


 バリバリ攻撃していくと、グラニュートの右足が真っ黒になってきた。


「……ぐ……う」


 ガクっと身体が、右に傾いた。

 それと同時に、ギガントグレイブの発動に失敗する。


 これで残り四回。

 おお! 意外にいけそうか?


「ようし! もっとぶち込んで!」

「おう」

「りょーかーい」


 そのとき、グラニュートの隣で高笑いが響いた。


「バカね、ステラ。私がいること忘れたの?」


 パルテは、バッと夫に手をかざし、呪文を唱えた。


「ヒール」


 右足の傷あとが淡く輝き、傷が癒えていく。

 さらに、呪文を追加。


「ガードアップ!」


 グラニュートの防御力が上がり、身体を持ち直した。


「ダーリン~。気合を入れて~」

「力がみなぎるぜ」


 パルテめ! まだ邪魔をするつもりか。


「……ギギ……」


 しかも、まだいるのか。あの武器モンスター。

 でも、彼女の額に汗が浮かんでおり、髪はベチョベチョになっている。


 古代魔法の使いすぎで、相当無理が来ているのだろう。

 何度もサポートはできないはずだ。


「グリーン。悪いけど、モンスターの処理をお願い」

「まかせてー。アローレイン!」


 矢の雨を降らせてもらった。

 といっても、これだと攻撃が分散してしまう。


「おい。溜まりそうだぞ」


 やっぱり。ダメージが足りないんだ。

 まずいぞ。最大威力が飛んでくる。


「レッド。煙を出して」

「……はあ?」

「いいから、早く!」

「狼煙断! 狼煙断! 狼煙断!」


 煙がモクモクと発生。

 武器庫の中が、灰色で包まれた。


 キラリーン! 斧の刃が発光した。

 力を溜め切った合図だ。


「はあああああっ!」


 グラニュートが、勢いをつけて斧を振り下ろした。


「ギガントグレイブ――ッ!」


 ――スカッ!


 攻撃は空を切った。

 スキル失敗。これで、あと三回。


「なんだ? どうなってんだ?」

「いや、レッド。これ、あなたのスキルでしょう」


 煙幕の効果は、目くらましだけではない。

 スキルの命中率を、大きく下げることもできるのだ。


 ――スカ! また失敗。 これで、あと二回。


「ぐぬうっ! おのれ……ふん! ふん!」


 グラニュートは、周りの壁を手あたり次第に壊し始めた。

 煙を外に逃がすつもりのようだ。


「もう撃てねえ」

「わかった。煙幕はここまでね」


 また、右足を攻撃するとしよう。


「モンスター倒したー」

「よし。お帰り。次は影縫いをやってくれる?」

「んー?」

「難しいこと考えなくていいから。私が合図したら撃ってね」


 キラリーン! 斧の刃が発光した。


「はあああああっ!」


 斧を思いっきり振り下ろし――。


「今よ!」

「影縫いー!」

「ギガ……ガ……」


 ピタリと止まった。

 スキル失敗。あと、一回だ。


 影に刺さった矢は、パルテが引っこ抜いた。

 そのタイミングで、グラニュートにかかっていた能力アップが消える。


 パルテが手をかざし、呪文を唱える。


「……はあ……ガード、アップ……」


 途中で手が下りた。


「……ダメ……ムリ」


 かかってないよ。

 どうした? 疲れちゃったか?


「今のうちに、攻撃を再開だ!」


 そして。


「ぐおおおっ!」


 右足をボロボロにすることに成功。

 スキルの発動を阻止できた。これで、あと0回。もう撃つことはできない。


「ピンク」

「……う……ウルトラアップ」


 ――ブックン!


「……くっ。おりゃああっ!」


 バイン、と斧が弾かれた。

 スキルがなければ、ピンクの身体に刃は通らない。


「ええいいっ!」


 ピンクは両手を使って、グラニュートを押し倒した。

 

「……ごはあっ!」


 地面に叩きつられるグラニュート。

 さらに、その上に馬乗りになって押さえつける。


「恥ずかしいよ~」

「……」


 カランと、斧が転がった。

 ここまで来れば、もうこちらのものである。


「行くよ。全員で攻撃だ!」


 ☆


「というわけで、無事に賊を退治することに成功しました」


 一応、捕縛をしておいた。

 あとは、町の衛兵たちが上手いことやってくれるだろう。


「そして、聖剣を入手~」


 なんか『流星』で砂にしたように見えたけど。

 あれはエフェクトだから。もちろん、壊れてないよ。


「……で、あとは」


 ちょっと、気になるものがあったのだ。

 武器庫の奥にあった謎の宝箱。


「おまえ、それネコババする気なの?」

「人聞きが悪いね」


 略奪品じゃないと言っていたはずだ。


 つまり、この廃ダンジョンに元からあったお宝ということ。

 持って帰っても、構わないだろう。


 ――カチャカチャ!


「やっぱり、鍵がかかってるな」


 しかし、忘れてもらっては困る。

 私は錠前なら、大抵のものを外すことができるのだ。


 それは魔法の錠前でも例外ではない。


「アンロック」


 ――カチ!


 スキルを発動し、開錠に成功。


「さて、中には何が入ってるかな~」


 わくわくしながら、開いてみると。


「……なにこれ?」


 本だ。この場合は書物と言った方がいいだろうか。


 ちなみに、少し捲ってみたところ、まったく読むことができない。

 謎の文字が使われているのだ。私はこの分野には疎い。


「やっぱ捨てて帰る気か?」

「……いや」


 気になるな。

 家に戻ったら、調べてみるとしよう。

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