34 盗賊団を追跡
宿屋に戻ってきた私たちは、ロイドさんに話を聞くことにした。
「パルテについて、ですか? なんでまた」
「ロイドさん、前に教えてくれたじゃないですか? ということは、会ったことがあるんですよね? 外見の特徴を教えて欲しいんです」
「たった一度だけですよ。それに、距離もあったので詳しくは……」
「構わないです。一つずつ思い出してもらえれば」
私は、紙とペンを用意した。
「まずは、そうですね。動物に例えるなら……」
「……ん……」
「髪型と顔の輪郭は……」
「……ん……」
「身長は。肌の色は……」
「……ん……」
「ごめん、ステラちゃん。ちょっと待とうか」
ピンクに引っ張られた。
「それ、ブラックちゃんの真似だよね」
「いやあ。絵が上手くなるかなと、思って」
彼女はよく絵を描いているのだ。
ペンを使って、イラストっぽいものを。
「真面目にやろうよ。ミリアちゃんのためにも」
ちなみに、ミリアは泣きじゃくったあと、部屋に引きこもってしまった。
彼女は本当に極端というか、分かりやすい性格をしてるな。
「ミリアちゃんが塞ぎこんでたら、私たちも辛いよ。聖剣を取り戻してあげて」
「うん。もちろん、そのつもりだよ」
ギルドから正式な依頼がされるまでは、たぶん数日ほどかかる。
だから、今回はクエストではないし、仕事でもない。
ミリアを元気にするために、やっているのだ。
もともと、彼女と仲良くなるために聖剣祭に参加したのだ。方向性は間違っていないはず。
というわけで、似顔絵を描いてる。
「……できた。こんな感じでどうですか?」
「はい。問題ないですね。私が言った特徴は捉えているかと」
これで確定したな。ミロスの正体は、パルテだ。
見え見えの嘘をつきやがって。吠え面をかかせてやる。
次に私たちは、食料品店までやってきた。
町にはいくつもお店があるが、この店は品揃えが豊富。
ここに来れば、大抵の食品は手に入れることができるだろう。
店員に似顔絵を見せると、すぐに思い当たった。
「ああ。来たよ」
服装や髪型は変わっていたが、何度か店を訪れたそうだ。
「なんか、一人で大量に買い込んで行くから、変な娘だなと思ったんだ。よく覚えてるよ」
当たりだ。
グラニュート盗賊団は構成員が多かったので、それだけ多くの食料が必要になる。
しかし、遠くから運んでくるわけにもいかない。
だから、近くの町でまとめて買ってしまう。その方が簡単で手間もかからないからだ。
ボロが出てきたな。
複数の店で、小分けにして買うんだったな。
「あの、その娘の買い物リストって作ることできますか?」
「そうだな。そんな正確なものを期待されては困るが」
「お願いします」
で、宿屋に戻ってきた。
「ロイドさん。地図あります? この町の周辺の地理が知りたいんですが」
「いくつか、持ってますよ。職業柄、必要になるので」
「助かります」
机の上で、バサッと開いた。
「……よし」
買い物リストを見ながら、定規で線を引いていく。
「何してんだ?」
「食料には、賞味期限があるでしょ? 距離が遠いと腐っちゃうから、期限が長いものを買う。逆に近ければ、期限の短いものを買ったりもする」
「……は?」
「これを利用して、どのあたりに敵が潜伏してるか割り出してるの」
「……意味がわからん」
あとは、グラニュートか。
あの大きさだと目立つし、アジトも広い場所を選んでいるはず。
「だいたい、この辺りかな」
地図の中に、丸印を加えた。
「じゃあ、準備ができたら、出発ね」
「おう」
☆
私たちは、町の外に伸びた水路を見張っている。
周りは荒野地帯なので、水を汲むなら、この地点だと思う。
「……はあ。だるいぜ」
盗賊が現れた。
「影縫いー!」
「ぐわあああっ!」
捕まえることに成功。
居場所を聞き出した。
「地図でチェックした場所とも一致してる。間違いないよ」
ガラガラと、地面のマットを剝ぎ取ると、その下には階段が続いている。
「何があるか分からないから、注意してね」
階段を下って行き、中に入って行く。
中は、いくつかの部屋が繋がったような構造になっている。
「ダンジョンみたいだな」
「うん。ダンジョン廃墟。資源がなくなって役目が終わっちゃったダンジョンなの」
だから、モンスターは狩りつくされていなくなっている。
たぶん壁が壊れても直ることもない。
普通のダンジョンと違って、地形の変動も起きないからだ。
「ムムー! ムムムー!」
不意打ちを警戒し、グリーンに感知してもらう。
トラップはなし。
人の気配も感じられない。
「おい。食料は残ってんぜ」
「ほんとだ」
食料の賞味期限は過ぎていない。
さっきまで、ここで生活していたのは間違いない。
「ステラちゃん。こっち」
ピンクが何か見つけたようだ。
……ギギィ!
鋼鉄の扉を開けて、中に入ってみる。
「ここは……」
武器庫だろうか。
中にはたくさんの武器が置いてある。
剣、槍、斧、弓……。
中には、大砲や爆弾のような火薬類も。
「武器だらけだな」
「うん」
まあ、別に不思議ではない。
食料と同じで、人員が多ければ、それだけ多くの武器が必要になってくる。
「宝箱も置いてあるよ」
かなり本格的な造りだな。
色合いから言って、中には相当なレアアイテムが入っている。
「開けてみよう……」
ガチャガチャ!
「あれ? 開かない」
鍵がかかってるのか。
「どうせ、略奪品だろ」
彼らは盗賊なのだ。
普通に考えれば、そうなるだろうけど……。
そのとき。
「略奪品なんかじゃないわ」
武器庫の入口から、誰かの声がした。
「それはこのアジトに元からあった宝箱よ」
パルテが、立っている。
わざわざ自分から、姿を現すとは。
前のときとは、違う。
ここは彼らのアジトで、彼女が賊だということも判明している。
その気になれば、すぐに捕まえることができるぞ。
「追い詰めたよ」
「いいえ。私が誘い出したの。あなたたちを罠に嵌めるために」
なんだ。
その余裕はいったいどこから……。
「ステラちゃん。下を見て」
「……え?」
私は驚きのあまり、言葉を失ってしまった。
目の前に転がっている剣が……。
「……ギ……ギギギ!」
鳴いている。
さらに、そいつからは、手が生え、足が生え……牙が生え、爪が生え……。
「ギギギ……ギギギ」
浅黒い肌を持ち、両目がない凶暴な怪物の姿に……。
「パルテ。まさか、あなたの魔法って……」
≪アニマ・ライズ≫
難度 ★★★★★★
属性 無
使用回数 15/15
成功率 100%
説明 古代魔法の一つ。 剣・槍・斧・弓。全ての武器をモンスターへと変身させる。




