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29 馬車で移動➁


 現在のメンバー……。


 メインメンバー:ステラ レッド グリーン ピンク (ミリア)

  控え    :ブルー ブラック



 黒々とした鋼鉄の大砲が、高台から私たちを狙っている。

 その数は八門。けっこうなピンチである。


「グラニュート盗賊団だ! 命が惜しければ、我々に積み荷を全て引き渡すことだ!」


 彼らは山賊上がりの荒くれものたちだ。

 モンスターの毛皮のような服を着ており、無精ひげを生やし、恰幅の良い体つきをしている。

 はっきり言うと、いかにも賊らしい容姿をしているのだ。


 しかし、一方で統率が取れている。

 誰一人、足並みを乱すものはおらず、全員が一つにまとまっている。

 まるで、どこぞの騎士団のようである。


 集団行動のできる山賊ということか。

 なんだか、変な感じだな。


「おかしいですね」


 御者さんが首をかしげている。


「あの……えっと」

「ロイドと言います」

「ロイドさん。何がおかしいんですか」

「リーダーが見当たらないんですよ。あの中には、グラニュートもパルテもいないんです」


 グラニュートは斧を武器にする巨漢。

 そして、妻のパルテは怪しい術を使う魔法使い。


 たしかに、ざっと見たところ、該当する人物はいないな。 

 パルテに至っては、まず女性がいない。集団は男ばかりだ。


「パルテはともかく、グラニュートがいないのは変です。彼は戦闘を指揮するリーダーであるはず」


 なるほど。リーダー不在か。

 でも、それは彼らの都合だろう。私たちには関係ない。


 まずは現状を打開しなくては。

 私たちは攻められている側なのだ。


「もう一度、言うぞ! 命が惜しければ、積み荷を引き渡せ!」


 声を張り上げる男は、角刈りで髭はきっちり剃ってある。

 一応、彼がリーダー代理なのだろうか。

 今回は、便宜上『角刈り』と呼ぶことにしよう。


「……積み荷を……」


 角刈りは、同じようなことを何度も言っている。


 だが、もちろん積み荷を渡すつもりはない。

 クエストは絶対に達成する。それは決定事項として。


「あいつら、うぜーな」


 レッドは剣を抜いた。さっきから、私の横でイライラしていたが。

 まさか、このまま突っ込むつもりか。


「りゃあああっ」


 賊たちのもとへ走っていく。

 いや、さすがに、それは無謀すぎないか。


「言っても、分からんか……装填準備!」


 角刈りの支持に従って、男たちが砲身に弾を詰めた。

 そして、ガコンっと砲身を前に向けて、レッドに狙いを定めた。


「発射用意! 3……2……1……撃て! 撃て!」


 ドカーン! ドカーン!


 レッドの足元に被弾。轟音とともに、火花が散った。


「うおっ! うおおおっ!」


 レッドはためらうが、前進をやめない。

 へこんだ地面を上手に避けながら、さらにスピードを上げる。

 

 しかし、装填した大砲はまだある。


「撃てー! 撃てー!」


 ドカーン! ドカーン!


 一発目は外れた。だが、二発目。ついに命中する。

 

「だっは……」

 

 黒い煙を上げて、レッドはすっころぶ。

 体重は軽いので、爆風によって後方に吹っ飛んでいく。


 装填した大砲は、まだ残っている。


「撃てー! 撃てー! 撃てー!」


 ドカーン! ドカーン! ドカーン!


 地に落ちたレッドに向けて、畳みかけるように砲撃。

 さすがに、避けようがなく、全弾命中。


 その間に、最初の大砲に装填準備。

 まだ、撃つつもりだ。レッドに狙いを定める。


「……ゴホゴホ! この、ちくしょー」


 腕のあたりを抑えて、咳き込んでいる。

 また、喰らう前に、私のところまで逃げてきた。


「あいつら、無茶苦茶しやがる。前に進めねー」

「うん。というか、丈夫だね。砲弾に当たってたけど」

「ああ。あたしもちょっと驚いてる。意外と死なない」


 とにかく、無理だな。

 まあ、最初から分かってたことだけど。


「……ふん。これで、理解できたか? 一歩でも前に踏み出せば、そいつのように、大砲の餌食だぞっ!」


 角刈りが警告した。実際に、彼らはためらわずに撃ってくるだろう。

 助かる方法は、積み荷を渡すしかない。そう言いたいんだろうけど。


「おい。どうすんだ」

「……待って。今、考えてるから」


 ここからだと、300メートル以上ある。距離がありすぎる。

 そのうえ、高低差もあるから、攻撃魔法でも命中しにくい。


 位置取りをミスってしまったのだ。

 あの高台に陣取られた時点で、私たちは完全に後手に回っている。


 その気になれば、砲撃し放題だろう。

 あそこからなら、私たちなんて、ただの狙いやすい的だ。


「……勝つ方法はある」

「マジか。どうやって」


 私はレッドを指でさした。


「あなたに煙を出して欲しいの」

「はあ?」

「モクモクで、モヤモヤした奴をお願い」


 彼女は、炎属性なのだ。

 炎と言えば、煙だ。出すことは、できるだろう。


「煙を出せばいいんだな」

「うん。そうそう。できるだけ、大量にね」

「よっしゃあ。任せとけっ!」


 レッドは後ろにさがった。

 前に行き過ぎると、さっきみたいに撃たれちゃうからな。


 剣を地面に突き付ける。

 それから、スキルを発動した。


「はあああっ! 狼煙断ロウエンダン


  ≪狼煙断≫

 難度  ★★★

 属性  火

 使用回数 20/20

 成功率 100%

 説明 威力はない。上に撃つと狼煙ノロシに、下に撃つと煙幕になる。


 ボフッと剣の切っ先から煙が出てきた。

 レッドの周りが煙に包まれる。


「まだ、足りないよ。もっと出して」

「おうっ! 狼煙断!」


 彼女は使用回数が底を尽きるまで、スキルを連発しまくった。

 煙はモクモクと広がっていき、私たちの周辺は灰色でいっぱいになる。


「どうだ? これでいいか?」

「上出来。お疲れ様」


 これで、煙幕を張ることができた。

 私は耳を澄まして、彼らの声を拾ってみる。


「なんだこれは。下がまったく見えんぞ」

「あいつらはどこだ!?」


 動揺してるな。

 予想どおり、彼らからは私たちが見えていない。


「あたしたちにも見えないが」

「その点は問題なし。こっちにはグリーンの感知があるから」


 敵の位置は、かなり正確なところまで分かる。


「向こう側もボカスカ撃てなくなったでしょ。積み荷を危険に晒すことになるからね」

「よしっ。じゃあ、あとは特攻して、奴らをぶった切ればいいんだな」

「いやあ。わりと賊の数は多いよ。レッドだけで倒せる?」


 この位置から攻撃して、少しでも人数を減らしておきたいところだ。


「セイントスピア!」


 光の槍はまっすぐ飛んでいくが、敵に当たる前に消えてしまった。


「届いてねーぞ」

「だよね。届かないんだよ」


 これが問題。あの高台への遠距離攻撃は難しいのだ。


「ここから、彼らに攻撃すればいいんですか?」


 ロイドさんだ。

 意外なところから、声がかかったな。


「届くんですか?」

「ええ。こう見えて、国内でもトップテンに入る腕前なんです」


 そう言って、クロスボウを構えると、斜め上に狙いを定めた。


「えいっ!」


 矢を放つと、ヒュルヒュルと飛んでいく。

 そして……。


「ぐああああっ」


 男の悲鳴が響いた。


「当たってんぞ」

「ロイドさん。本当に凄いですよ」

「命中したのは偶然です。ここからなら、ギリギリ届きますけど」


 それで十分だ。

 では、私たちも煙幕が晴れないうちに、飛び込むことにしよう。


「≪ステルス≫」


 念のためだ。これで、非常に気づかれにくくなる。


「私とレッドが行くから。他の人は、馬車のそばで待機ね」


 そんなわけで、レッドと一緒に走る。

 数百メートルを移動し、高台の裏から回り込む。


「……」

「なんだ。どうしたんだ」


 裏に仕掛けでもあるのかと思ったけど、何もない。

 まあ、いいか。大砲の運搬手段については、ひとまず置いておこう。


 階段状になっているので、そこを昇っていく。


 頂上付近まできた。

 顔を覗かせて、彼らの様子をうかがう。


 賊たちは、まるで私たちの存在に気づいていない。

 まだ、煙幕の中にいると思っているようだ。


「……奴らの背後を取れそうだな」

「……うん。でも、少し我慢してね」


 首を横に動かして、彼らの数を確認する。

 全部で、二十三人か。やっぱり、けっこういるな。


 いきなり突っ込めば、面倒なことになるだろう。


 ならば、狙うは頭。今回なら、リーダー代理の角刈り。

 そうすれば、指示系統が混乱するはずだ。


「……あいつじゃねーか」

「うん。私が角刈りをやるから、そしたらあとは好きに暴れて」

「任せとけ」


 他の男たちにばれないように、ささっと移動。

 角刈りの背後に、忍び寄る。


 そろーりそろーり。

 剣を構えて、柄の部分で思いっきり殴る。


「……ふんっ」

「ごああっ……」


 ドサっと、角刈りが倒れた。

 一丁上がりだ。ステルスも切れそうなので、手早く終わらせよう。


「だあああっ」

「……なっ。こいつら、いつの間に」


 焦っているところを一気に倒す。


「炎月斬り! 炎月斬り!」

「ぎゃあああああっ!」


 私とレッドで、一人ずつ倒していき……。


「……これで、二十三人目っと」

「どはあっ」


 うん。ばっちり。


「……おい。下を見ろ」

「え? 何?」


 もう煙幕は晴れている。

 高台から馬車を見下ろしてみると、その付近には数人の男たちが。


 ここに全員がいたわけじゃなかったのか。

 急いで馬車まで戻らないと。


「きゃああああっ」

「お姉さま……そんな……イヤ」


 なに? ピンクに何かあったの?

 ヤバいな。本当に急がなきゃ。



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