表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/107

27 観光へ行こう



「……勇者らしくない?」


 ミリアにそう言われて、私は思わず聞き返した。

 

「はい。ステラさん。あなたは勇者らしくないです」


 前の竹林ダンジョンの一件で、彼女としても思うところがあったらしい。

 ちゃんと訓練を受けてくれるようになった。


 剣はレッドに、魔法はブルーに、弓はグリーンに、盾はブラックに。

 それぞれ教わるようになったのだけど。


 何故だか、私にだけは当たりが厳しいのだ。

 他の人には、普通に接してるのに。


「具体的に言うと、ダサいです。服装も髪型もかっこよくないです。それに、オーラがないんです。もっと、イケてるオーラが欲しいです。こうバシッとした感じで」


 なるほど。イケてる感じか。


「俺の魔法がおかしいって、弱すぎるって意味だよな(キリッ)」

「ふざけてますか?」

「私はマジメだよ」


 そういえば、彼女は伝説の勇者に憧れてるとか言ってたな。

 そんな英雄と比べれば、私なんかダサいモブ女だろうけど。


 ちょっと理想が高すぎるんじゃないだろうか。


「あなたに教わることはないです」

「きっぱり言うね」

「事実です。剣も魔法も他の方に教えてもらいます。それで問題ありません」


 ミリアは私にそっぽを向けると、家に戻っていった。


「うーん。勇者らしくないか」


 私は賢者さまに才能を認められて、幼いころより修行を受けてきた。

 そして、実力的に勇者のレベルに達したから、勇者という職業を選び、今に至っている。


 正直なところ、勇者に思い入れはない。嫌いじゃないけど、好きでもない。

 だから、『勇者らしく』と言われても困ってしまう。


「勇者らしい人か。そんな人になれば、ミリアも私のことを認めてくれるのかな」


 少し考えてみよう。


 勇者らしく、かっこよく、イケてるオーラで……。


 ☆


 今日のメンバーは……。


 メインメンバー:レッド ブルー グリーン ブラック (ミリア)

  控え    :ステラ ピンク


「今日は私が控えか……」


 まあ、ローテーションというやつだ。

 ブルーがいれば、戦闘の方は問題ないし、私は家のお手伝い。


 家事当番は、控えメンバーがやる決まりになっている。

 たとえ、リーダーといえども例外ではない。


「お掃除しなくちゃね」


 私はボロボロの服に着替えた。

 この服なら、汚れても捨てればいいので問題はない。


 それから、モップやバケツ、各種掃除用具を準備。

 みんなが出払ってるうちに、しっかりキレイにしておかないとね。


「まずは、どこから掃除しようかなー」


 ゆらゆらと廊下を歩く。

 そして、通路の奥にある部屋の前に立った。


 ドアには『ミリアの部屋』という札が下がっている。

 最近、彼女にあてがわれた部屋だ。


「うん。ここからだな。この部屋から掃除しよう」


 今はダンジョンに出かけているので、中に人はいない。

 なので、ノックをする必要はない。


「仕方ないよね。入らないと、掃除できないからね」


 ドアノブを捻ってみる。

 ガチャガチャ! ガチャガチャ!


「あれ? 鍵がかかってる?」


 なんだと。他の部屋は鍵なんてかかってなかったぞ。


「ふむふむ。ディスクシリンダー錠ね。余裕だね」


 私はスキルを発動した。


「≪アンロック≫!」 


  ≪アンロック≫

 難度  ★

 属性  無

 使用回数 20/20

 成功率 ??%

 説明 開錠スキル。技量によって、成功率が変わる。


 カチッ! 錠前はあっさり外れた。

 私は地味に技量が高いのだ。この程度の錠前では、難易度が低すぎる。


 他人を入れたくないなら、魔法の錠前でも用意するんだったな。

 ダンジョンの扉や宝箱に使われてるようなヤツ。


「では、中に入ろうかな」


 もちろん、掃除するためだ。

 ミリアの部屋の中を漁りたいわけじゃないぞ。


 さて、中は……。

 綺麗だな。わざわざ掃除するまでもなく、きちんと整理されている。


 カーペットが敷いてあり、コロコロするものが置いてある。

 あれで落ちてる髪の毛を取ったりするんだよね。知ってる。


 クローゼットは……いつも着ているような服ばかりだ。


 本棚がある。置いてあるのは、『ザ・ボウケン』。

 ああ、冒険者の専門誌か。私もこの雑誌、読んだことある。


 他は、『勇者戦線①』。小説のシリーズものか。何のジャンルだ? 戦記もの?


「カーテンとシーツの色は、桃色か……」

 

 というより、部屋全体が桃色で統一されている。

 やはり、ピンクがお姉さまだからか。それで、色を合わせていると。どうでもいいな。


 ベッドは良い匂いがする。香水でも使ってるんだろう。


「あとは……なにこれ? 縫いぐるみ?」


 細長い棒のような縫いぐるみが置いてある。

 ベッドの上にあるから、これを抱いて寝てるんだろうか。想像すると、かわいいな。


「あっ、裏に刺繍してある……えっと、『せいけん』」


 そうか。この棒は聖剣なのか。

 これを振って、勇者気分に浸ってるんだろうか。


「……あんまり、ネタになるようなものがないな。どうしよう……ああ、掃除に来たんだっけ」


 まあ、適当にやるけど。どうせ、最初からキレイだし。


 机の上も見ておこうか。部屋に入ったときから、気になっていたのだ。

 あそこにあるもの、どう見ても日記だろう。


 意外とマメな性格なんだろう。

 ちなみに、私は日記なんて付けない。毎日を全力で生きているのだ。


「さあて、中には何が書いてあるのかな」


 日記を開いてみる。

 ガチャガチャ! ガチャガチャ!


「あれ? こっちにも鍵が」


 ふむ。南京錠か。

 いや、だからね。この程度の錠前、私には意味がないんだって。


「じゃあ、さっそく開けてみよう……アンロ……むぐっ」


 背後から、口を押えられた。

 これではスキルを発動できない。 

 いったい、何者!?


「ねー、ステラちゃん。勝手に他人の部屋に入り込んで、何をやってるの?」


 ピンクの声だ。私は振り返って、答えた。


「違うんだよ。これは勇者らしさを探ろうと」

「やってること、泥棒だよね」

「……うん。たしかに」

「ミリアちゃんは私たちを信頼してここに住んでるんだよ。ステラちゃんがやってることって、その信頼を裏切る最低の行為だよね」

「……うん。まったく、そのとおり。返す言葉もないよ」


 反省しました。

 もう、ミリアの部屋に勝手に入ったりしません!

 ……たぶん。


 というわけで、ピンクと一緒に夕食の支度。

 キッチンに向かい、フライパンに油を引いて、ひき肉や卵を用意してハンバーグを作る。


 それと同時進行でサラダも作る。お肉だけじゃなく、野菜もね。

 ハンバーグが焼けた頃に、スープを皿に分ける。それから、お店で買ってきたパンも皿に乗せる。


「ただいま~」


 みんな、帰ってきた。

 手洗い、うがいをしてもらってる間に、料理をテーブルに運ぶ。


 さて、料理を召し上がってもらおう。


「……はむっ。もぐもぐ」


 ミリアが一口、食べた。


「どう? ミリアちゃん?」

「とてもおいしいです。お姉さま、料理もお上手なんですね。憧れます」

「……えっと、そのハンバーグはステラちゃんが作ったんだよ」


 ミリアは目をそらした。


「へえ。まあ、いいんじゃないですか」


 なんだ、その露骨な態度の変化は。


「はむはむっ、うめえ。うめえ」


 レッドを見ろ。誰の料理を食べても、『うめえ』しか言わないんだぞ。

 この子、味とか分かってるのかな。


 ――クイクイ!


 誰かが、私の袖を引っ張っている。


「なに? ブラック、どうしたの?」


 紙とペンを用意すると、絵を描き始めた。

 え? それ、食事中にやることなのか?


「……ん……」


 何か細長い棒のような絵だが。

 ピンと来ないな。


 ブルーが答えた。


「ああ。聖剣祭のことですね」

「聖剣祭?」

「シグマの町で、毎年おこなわれているお祭りのことです。ちょうど、今の時期にやってるので、ブラックさんはそのことを言ってるのかと」


 レッドが食べるのを止めた。


「なんだ、聖剣祭ってことは、聖剣があんのか」

「そうですよ。あの町には勇者が使ったと言われる剣が保管されているんです」

「剣か。面白そうだな」


 レッドは敵を切る武器として、剣に興味があるようだ。


「……ん。聖剣って」


 たしか、ミリアの部屋で見たような……。


 私がミリアの方を向くと、彼女は口を抑えている。

 大きな声を出さないようにしてるのか、笑いをこらえてるのか。


 どちらにせよ、バレバレだ。

 表情筋が緩みまくっているし、目の輝きがさっきまでとまるで違う。

『聖剣』という単語を聞いただけで、嬉しくなっちゃったのか。


 隣にいたピンクが、私に耳打ちした。


「ステラちゃん。チャンスだよ」

「え? 何が?」

「ミリアちゃんと仲良くしたいんでしょ? 聖剣を見に連れてってあげれば、好感度アップ間違いなしだよ」


 言われてみれば。

『勇者らしさ』なんて難しいこと考えなくても、彼女の興味を引くことができる。


 良い案かもしれない。


「みんなで、聖剣祭に行こう!」

 

 さっそく、提案してみた。


「おう。あたしも行きたい!」

「いいんじゃないですか」

「わーい。おでかけー」

「……ん……」


 ……ふっ。余裕だぜ。

 というか、最近、ダンジョンばかりだったからな。

 たまには、こういうのもいいだろう。


 じゃあ、夕飯を食べたら、準備をしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ