26 竹林ダンジョン③
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ レッド ブルー グリーン ブラック ピンク
控え :なし
金色に輝き始めたグランマンティスを見て、私は頭を抱えた。
「……しまった」
思いっきり、地雷を踏んでしまった。
ギルドマスターに『気を付けろ』と言われていたのに。
「と、とにかく、ミリアの出血を……そうだ。ブラックにポーションをもらったんだ。これで、止血を……」
袖をまくって、ポーションを腕に塗る。
たくさん塗ったことで、血を止めることはできた。
彼女は気を失ってしまったので、このまま寝かせておくとして。
モンスターの様子が気になる。
みんなのところへ行こう。
「……」
黙り込んでいる。
輝いているモンスターに手を出すのは危険という判断だろう。
魔物活性化体質だったか。
たしか、モンスターをレベルアップさせるとか。
ここから、どうなるんだろう。
固唾を呑んで見守っていると……。
ニョキッ!と、腕が生えてきた。
さらに、ニョキッ! と、もう二本。
次から次に生えてきて、腕が五本に。
最後に右腕、レッドが切り落とした箇所から、ニョキっと鎌がとび出して。
「シャアアアッ!」
全部で六本腕。六つの巨大な鎌を持ったカマキリが誕生した。
「なんだ。腕が増えただけじゃねーか」
「本当に、それだけだと思いますか?」
うん。そうは思えないな。
グランマンティスは上体を起こすと、下段にある二本の鎌を打ち付けた。
シャキーンと、金属の擦れる音がする。
「来ますよ」
「……ん……」
盾なら自分の出番とばかりに、ブラックが前に出る。
念のため、『挑発』をかけ、私たちに攻撃が及ばないようにする。
あとはピンクから『ガードアップ』を。
先ほどはこれできっちりと抑えられていたが……。
「シャアアアアッ!」
凄まじい速度で、振り下ろされる腕に、ブラックが反応。盾で捌く。
しかし、それで終わりではない。今度は別方向から、盾への攻撃を繰り出す。
ガガガガガッ!
気づけば、一分間に何十発もの連撃を繰り出し、ブラックはどんどん押されていく。
鎌の数が増えたことで、先ほどよりも攻撃的になっている。
そして、六本の腕は三対に分かれていて、それぞれ動かし方が違う。
つまり、攻撃のパターンは単純に考えて三パターン。
実際はコンビネーションも交えてくるから、そこから更にパターンが増える。
ブラックは本当によくやっていると思う。
鎌による攻撃は、私たちのところへは一度も届いていない。
「シャアアアアッ!」
痺れを切らしたのか、カマキリは後ろにさがった。
六本の腕を後ろに逸らすと、息を吸い込んだ。
身体が僅かに膨らみ、カマキリの複眼が光る。
何かを溜めている?
このタイミングから考えて……。
「みんなっ! 伏せてっ!」
私が言うと、ほとんど同時。
後ろに逸らしていた腕が、前にでてきた。
そして、白い霧のような斬撃が飛んできた。
間違いない。これはスキルだ。
≪四天魔斬≫
難度 ★★★
属性 無
使用回数 5/5
成功率 90%
説明 四本の鎌から、斬撃を飛ばす。相手は大ダメージ。
私たちは全員が地面に伏せた。
耳の中で風が吹くような音がすると、山なりの形状をしたものが、頭上を通り過ぎていった。
その瞬間、後ろで竹がバサバサと音を立て、斬れて行く。
うん。けっこう威力がありそうだ。避けて正解だった。
「今のスキルじゃねーか。なんで、あのカマキリが」
「魔物でもレベルが高いものは、スキルを持ってることがあります」
強さをクラスで分けると、B級上位のモンスターなら持ってることが多い。
本来のグランマンティスなら、持っていないはずだったが。
おそらく、レベルが上がったおかげで、急に使えるようになったのだろう。
「しかも、『四天魔斬』ってなんだよ。かっこいいじゃねーか。あたしも使ってみてえ」
「それは私も思ったけど、無理でしょ。腕が二本しかないし」
とにかく、グランマンティスは強くなっていおり、スキルまで取得している。
対策を考えなくては。
「正面突破!」
「レッド。それじゃあ、死んじゃうよ」
「ここは昔からある対策法でいいんじゃないでしょうか」
「そうだね。それで行こう」
敵がスキルを使ってきたとき。
古来より、二つの対策法がある。
対策法その一『スキルの使用回数を削る』。
今回だと、五回。さっき使った分を引いて、あと四回分を空撃ちさせる。
対策法その二『スキルの使用条件を満たさなくさせる』
今回だと、四本の鎌というところがポイントだ。
「鎌の数を減らす、という作戦で行こう」
「つまり、どういうことだ?」
「鎌を三本まで減らせば、相手はスキルを撃てない。さらに、攻撃の手数も減らせるってこと」
「なるほど。分かりやすい」
よし。理解してもらえたな。
「レッドは右手。私は左手を狙う。両側面から狙えば、対処がしづらい」
グリーンに影縫いも使ってもらおう。
数秒程度でも動きを止めてもらえば、だいぶ助かる。
「では、私はブラックさんの援護に回ります」
「え? ブルーは防御魔法は使えるの?」
「これで十分です……≪シーキャノン≫」
地面がせり上がって、固定砲台が現れた。
「ピンクさん」
「ガードアップ! ガードアップ!」
砲台が桃色の光を帯びた。
ガシュッ! 水の砲弾が撃ちだされた。
さらに、ガシュッ! グランマンティスの足に当たった。
「シャアアアアッ!」
カマキリは怒っている。
まったく効いてないようだけど、相手の気を引くことには成功しているようだ。
羽音を立てながら、砲台の前まで飛んでくると。
ガガガガガッ!
鎌による凄まじい攻撃を繰り出した。
ガキィッ! ガキィッ! ガキィッ!
砲台は潰れかけ、装甲は曲がってしまっているが……。
「シャアアアアッ!」
持ちこたえてるな。
「シーキャノンは正面からの攻撃には強いのです。他と比べて装甲が厚いので」
その代わりに側面は弱いってことか。
でも、モンスター相手に時間を稼ぐなら、十分だろう。
「あまり期待されても困りますよ。敵の攻撃は予想以上に高いです」
攻撃するのは、私とレッドの役目だ。
スキルを使われる前に処理しよう。
「ダイダルウェーブ!」
波が発生し、小さいカマキリたちが流れていく。
ついでに、グランマンティスの足元がぐらつき、バランスを崩した。
「レッド!」
「おう」
二人で側面から回り込む。
「シャアアアアッ!」
巨大な鎌を横なぎに払ってきた。
私は背を屈めて、攻撃を回避。走り込んで、相手の懐に入った。
カマキリが上体を起こし、私に鎌を向けた。
「……」
近くで見ると、禍々しい鎌だ。普通の武器と比べても、かなり鋭いと思う。
そのうえ、こいつは文字通り、この鎌を手足のように使いこなすことができるのだ。
ガガガガガッ!
四連撃か。たしかに、ここまで距離を詰めてしまえば、回避は難しい。
だが――。
「ブレイブラッシュ!」
ガキィン!
弾いてしまえば、どうということはないな。
「シャアアアッ!」
上体をこちらに向けた。
四連撃では足りない。それなら、六連撃で。
そう考えたんだろうけど、忘れてるのか?
敵は一人じゃないぞ。私には仲間がいるのだ。
「炎月斬りっ!」
ほとんど背後からの攻撃で不意打ちに近い。
「はあああああっ!」
グランマンティスは…………反応できない。
炎の刃は、右腕の一本を切り落とした。
ドサリと地面に落ちた腕は、ピクピクと動いている。
思ったより、あっさり落とせた。防御力は上がってないということか。
これで残り五本。
だが、腕がなくなれば、敵の対応も変わってくるだろう。
「シャアアアアッ!」
両手を振り回して、私たちを遠ざけると、羽根を開いた。
ブゥウウン! と音をさせて、宙に飛び上がる。
「おい! あいつ、飛びやがったぞ」
「まあ、羽根があるからね」
グリーンの弓は射程距離の関係で、空中の敵には届きにくい。
ここは私がセイントスピアを使って、羽根に穴を開けたいところだけど。
「……いや、待て」
腕を逸らして、息を吸い込んだ。
『四天魔斬』の準備をしているのか。
「どうすんだ」
これを回避できれば、ヤツには勝てる。
ここは確実に行きたいな。
「ブラック。よろしく」
「……ん……」
敵の復眼が光った。
「シャアアアアッ!」
来た。『四天魔斬』だ。
四つの斬撃が、こちらに飛んでくる。
「……ん……」
ブラックが前に出る。
そして、アクセサリーに付属したスキルを発動させた。
プシュウウウウウッ!
よし。『ゼロ・イマジン』。敵のスキルを無効化できた。
この隙に、私が魔法で……。
「セイントスピア!」
羽根に穴を開ける。それから、地面に降りてきたところを強襲だ。
「シャアアアッ!」
ガガガガガッ!
腕が五本になったことで、敵の攻撃力も落ちている。
右側の死角から、私は攻撃をしかけた。
「はあああああっ!」
ドサッ! これで二本目の腕だ。
残りの腕は四本。
最後は、私とレッドの同時攻撃で決めに行くとしよう。
「ブレイブラッシュ!」
「炎月斬り!」
私は左腕を、レッドの斬撃は敵の胴体を切り落とした。
「……シャ……シャア……」
グランマンティスは倒れた。




