25 竹林ダンジョン➁
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ レッド ブルー グリーン ブラック ピンク
控え :なし
只今、私たちは竹林のダンジョンを散策中。
目指すは、タケノコが密集しているエリアである。
「……ちっ」
先頭を歩くレッドが舌打ちをした。
前方には竹が密集し、壁のように立ちはだかっている。
「おい。また行き止まりだぜ」
「地図通りに、道が繋がってませんね。引き返しましょう」
「これ何度目だよ」
森や竹林のような植物ダンジョンはこういうことが多い。
植物が生えてきて、道を塞いでしまうのだ。
レッドは剣を抜いた。
「面倒だから、壁を壊そーぜ」
「植物に炎系の技を使うと、辺りに燃え移ってしまうかもしれません」
「なあにぃっ!」
レッドは剣を収めると、手を振り回した。
「じゃあ、どうしろっていうんだよっ!」
「いえ。ですから、ここは大人しく引き返して……」
「ああー。みんなー。ちょっと待ってー……ムムー! ムムー!」
グリーンが壁に手を触れて、唸る。
なにか感知したのか、明後日の方向を指し示した。
「来るよー」
私たちの背後から、ぞろぞろとモンスターが迫ってくる。
数は二十ほど。だいたい猫ほどの大きさで、黒ずんだ緑色をしている。
シャキーン! シャキーン!
両手の鎌を擦り合わせ、口をもごもごさせている。
「グランマンティス。カマキリ型のモンスターですね」
「うぅ。私、ちょっと苦手かも」
ピンクが私の背中に隠れた。
うん。たしかに、カマキリって、イメージ的に気持ち悪い。
「あたしがやる。歩いてばかりで、飽きてきたところだったんだ」
しかし、いきなり二十は多すぎである。
普通に考えれば、近くにモンスターの巣でもあるのかもしれない。
この位置では、私たちに逃げ場がないので、それも不安要素だ。
念のため、戦う場所を変えておくことにする。
ブルーが地面に手を付いて、呪文を唱えた。
「ダイダルウェーブ!」
地面から、大きな波が発生し、カマキリたちに襲い掛かった。
数が多く、一本道であったので、魔物たちには逃げ場がない。
波は彼らを呑み込み、一気に奥まで流れていった。
「追いかけましょう。レッドさんは追撃をお願いします」
「おう」
私たちはカマキリたちが流れていった奥まで向かう。
念のため、グリーンには感知をしてもらい、慎重に進んでいく。
カマキリたちが、道の端に転がっている。
ピクピクッと体を動かすが、起き上がることはできない。
「やりすぎましたね」
ブルーの魔法は強いからな。レッドの追撃は不要だったようだ。
「また、来るよー」
みんなが、グリーンの指す方向に注目する。
奥の道から、何かが走ってくる。
あれは……。
「ミリア!?」
血にまみれた右手をもう片方の手でかばっており、服もボロボロだ。
彼女は何度も竹の根につまずきながらも、必死の形相で逃げている。
後ろから、脅威が迫っているからだ。
それは、ブゥウウン! と羽音を響かせ、巨大な鎌を縦横無尽に振りかざしている。
グランマンティス。
しかし、その大きさは先ほど見たものの比ではなく、その威圧感から竹林ダンジョンのボス格かと思われる。
とにかく、ミリアが危険だ。まずは彼女をモンスターから引き離さないと。
「影縫いー!」
キリリリリ……シュッ! シュッ!
影に矢が刺さると、グランマンティスの動きがピタリと止まった。
今のうちに助けに行こう。ピンクにスピードアップをかけてもらい、私は前に飛び出した。
ミシミシと強引に剥がそうとしているが、その程度の力では『影縫い』のスキルは破れない。
崩れそうになっているミリアの身体を抱きとめると、彼女に声をかけた。
「大丈夫? しっかりして」
「……」
必死に走ったせいか声が出せなくなってるけど、意識はある。
早く治療してあげよう。回復魔法のヒールを使って。
「……ん! んん!」
「こら。暴れないでよ。治療できないでしょ」
手足をバタバタさせるから、上手に魔法が使えない。
「後ろに何かあるの?」
「んん!」
振り向いてみると、グランマンティスが威嚇するような声を上げた。
「シャアアアアッ!」
そして、右手の鎌を横なぎに払おうとしている。
彼女が暴れてた理由もよく分かる。
このままいくと私たちは鎌によって身体を切断されていた。
しかし、グランマンティスは影縫いで動けなかったはず。
どうして、動けてるんだ?
見ると、小さなカマキリたちが足元でうごめいている。
その数は三十匹近く。
そうか。奴らが影の矢を引き抜いたんだな。
カキィン!
盾を構えたブラックが、鎌を受け止めた。
そして、その後ろでは、レッドが剣を構えている。
「よし! 防御はおまえ。攻撃はあたしだ」
「……ん……」
カキィン! カキィン!
鎌の二連撃を捌いた。そのタイミングで、レッドが動く。
ブラックの肩を踏み台にして、モンスターの頭上まで飛び上がる。
「炎月斬り!」
炎を纏った刃が伸びていく。
ドサッと、鎌が地面に転がった。敵の右腕を根本から切断したのだ。
「シャアアアアッ!」
痛がっているのか、悲鳴の混じった声を上げる。
だが、すぐに切り替え、左の鎌で攻撃をしかける。
空中にいるレッドを狙うつもりなのだろう。
「……ん……」
ブラックは『挑発』を使って敵の攻撃を引き付けた。
狙いを自分に変更させることに、成功する。
カキィン!
そして、盾であっさりと捌く。
「たりゃああっ」
すかさず、レッドが敵の背中を切りつける。
というか、息ぴったりだな。私が指示しなくても、しっかり連携できてるぞ。
隠れて、予行練習でもしていたのか?
「アローレイン!」
足元にいる小さなカマキリたちは、グリーンが撃ち落としていく。雨のように降らせるだけの大味な技だけど、多数を倒したいときには便利だ。
その際は、ピンクの『パワーアップ』をかけてもらい、威力を上げてもらっている。
ブラックには『ガードアップ』、レッドには『スピードアップ』と『パワーアップ』を。
さすがに、六人が全員揃っていれば、攻守において隙がないな。
というより、私が戦う必要もない。
グランマンティスは満身創痍だ。
もうあと一、二発の攻撃で倒れてしまうだろう。
その間に、私は自分の仕事をしないと。
とりあえず、敵の攻撃が届かない脇まで移動して。
「……はあ……はあ」
ミリアの息が乱れて、体中が熱を帯びている。
この腕のケガが原因か。
たぶん私たちが来る前にやられたんだろうけど、出血が酷いな。
魔法で傷口を塞がないといけない。
私の『ヒール』なら、治せるはずだ。
もともと、回復魔法は光属性だから、勇者である私の得意な魔法。
たぶん、この魔法だけなら、ブルーよりも得意なはずだ。
「待っててね。今、治すから」
私は彼女の腕に手をかざし、呪文を唱えた。
「ヒール!」
すると、ミリアの腕が光に包まれ……。
「……うっ、あああああっ!」
突然、もがき苦しみだした。
胸を押さえて、発作のように体を丸めている。
「どういうこと?」
今のは、回復魔法だ。
人間にダメージを与えるような効果はないはず。
「……いや、違う」
そうじゃない。このときになって、私は忘れていた。
ギルドマスターから聞かされたミリアの秘密。
魔物活性化体質。
彼女の持つ体質が、なんらかの作用を及ぼしたんだ。
「……まさか」
嫌な予感がして、私は顔を上げた。
その先では、グランマンティスが、金色に輝いていた。




