14 試しの塔
さて、今回のメンバーは……。
パーティーメンバー:ステラ ブルー グリーン ブラック
控え:レッド ピンク
「……試しの塔か」
よくギルドの試験や特訓に利用されるダンジョンなのだが。
私は一度も入ったことがない。
賢者さまの推薦で入ったので、試験は全てパスできたのだ。
「ブルー。そういうわけなんだ」
「ええ。事前の情報がないわけですね。慎重に行かないとなりませんね」
魔法使いはいろんなことができるので、想定外の事態にも対処しやすい。
ブルーの性格自体もしっかりしてるので、存分に頼りにさせてもらおう。
「ステラー。頑張ろうねー」
「……ん……」
「グリーンとブラックもよろしくね」
私たちは町を出て数時間ほど歩き、石造りの塔までやってきた。
入口付近にギルドの職員が立っている。
「お待ちしておりました。パーティー名『エレメンタルクラウン』様ですね。こちらに記入をお願いします」
「はい。サラサラっと」
「本来は三階層にいるゴブリンを倒せば、クリアなのですが。今回はギルドマスターの要望により、高難度の試験を受けてもらいます」
「イヤです」
「ダメです! 試験内容は、『二〇階層のBOSSヘビィメイジの討伐』。強力な魔法の使い手ですが、子分のリトルメイジを倒すと、一部の魔法が弱体化します。積極的に狙って行きましょう」
ボスは魔法使いか。
これはレッドを連れて来なくて正解だったな。
「一つ聞いていいですか。この塔って全部で何階あるんですか?」
「20階です」
「つまり、頂上まで登れと」
「そうですが、十人が登って七人は戻ってこれる。その程度のレベルです」
「残りの三人はどこに行ったんですか?」
「さあ。どこに行ったんでしょうね」
「イヤです」
「ダメです! 早く行ってください。日が暮れますよ」
私は扉を開き、塔の中へ入る。
一階は幾つかの広間を細めの通路で結ぶという単純な造りになっていた。
近くを見回すが、モンスターの気配はない。
私が辺りを散策していると、ブルーが苦言を呈した。
「ステラさん。ここはまだ1階。これから20階まで行くのですから、いちいち魔物を探していたら本当に日が暮れてしまいます」
「じゃあ、どうするの?」
「階段だけを探して、最短距離で進みます。途中でモンスターがいても全て逃げましょう」
ブルーの言う通りだ。
目的はボスだけなのだから、さっさと進むべきだ。
「グリーン」
「わかってるよー。今、やってるー」
彼女は目を閉じ、額に指を当てる。
それから、ムムムっと力を入れた。
感知って人によって、やり方が違う。
私はよく耳をすませるんだけど、彼女は変わったやり方をしている。
「階段はあっちだよー」
一分程度で見つけてくれた。
だが、同時にモンスターも現れる。
「ゲギャゲギャ」
ゴブリンか。面倒だ。
「私に任せてください。《シーキャノン≫!」
ブルーが呪文を唱えると、床がせり上がる。
そこから、奇妙な砲台が姿を現した。
≪シーキャノン≫
難度 ★★★★
属性 水
使用回数 30/30
成功率 100%
説明 水属性の砲台。近づくものを自動で攻撃してくれる。
ガシュッ! 砲台が水の塊を撃ちだし、ゴブリンを蹴散らす。
二匹目がやってきた。ガシュッ! それもすぐに吹き飛ばす。
「威力は低いですが、雑魚散らしには便利です」
大きな音を聞きつけて、またゴブリンが集まってきた。
「雑魚は≪シーキャノン≫に任せて、先に進みましょう」
私たちは階段を発見。二階へと進む。
そこから、同じこと繰り返した。
グリーンの感知で階段を探し、強引に次の階へと進んでいく。
2階……3階……5階……15階……。
16階まで来たところで、私たちは立ち止まった。
今までの階層では見たことがないモンスターに遭遇したからだ。
それは子供のようなサイズをしている。
黒いローブを纏い、顔から大きな二つの目がのぞいている。
「キュキュキュー!」
こちらに気づくと、私たちに明らかな敵意を向けた。
手に持った杖を突き付ける。
――ボウッ!
火の玉を放ってきた。
「……ん……」
ブラックが前に出て、盾を構える。
そして、スキルを発動する。
≪マジックシールド≫
難度 ★★
属性 無
使用回数 10/10
成功率 100%
説明 魔法攻撃によるダメージを80%カット
「キュキュキュ―!」
モンスターが焦った声を上げる。
ブラックが盾を使って、火の玉をはじいたからだ。
もう一度、杖を突き付ける。
また、撃つつもりのようだが、そうはさせない。
その隙を狙って、私が剣を抜き、切りかかる。
「ブレイブブラッシュ!」
得意の剣術スキルを発動し、モンスターの首を切り落とした。
「今のモンスターが、リトルメイジのようですね。どうやら、この階層以降にエンカウントするようです。探してみましょう」
「グリーン!」
「はいはーい。さがしまーす」
グリーンが目を閉じて、ムムムっとする。
「この階にはいないねー。でも、次の階には反応あるよー」
次は17階か。この調子でテキパキやって行こう。
「キュキュー」
「ブレイブラッシュ!」
リトルメイジの体を切り落とした。
「今ので終わりー。おつかれー」
グリーンの感知によれば、リトルメイジはもういない。
いよいよ、次は20階。ボスのいる階層だ。
「子分のリトルメイジや、『ヘビィメイジ』という名前から、ボスの特徴は予想がつきますが。注意して進みましょう」
階段を上り、20階層までやってきた。
足を踏み入れたとたん、むわっとした熱気が飛び込んできた。
そのまま、前に進んでいくと、大広間に着いた。
すると、見えてきた。
「あれだよね」
「ええ。どう考えても、あれですね」
私たちの目の前には、ぶくぶくに太ったリトルメイジがいた。
体長は2メートルほどあり、着ているローブが破れそうになっている。
「ギュギュギュー」
杖を突き付けた。
この動作はリトルメイジと同じだが、杖の先端の光がリトルとは明らかに違う。
そして……。
――ドゴオゥッ!
撃ちだした火の玉は、壁に大きな穴を開けた。
「あれを正面から受けきるのは無理ですね」
そこで今回の作戦は決まった。
「受けられないなら、撃たせないようにしよう」
「どうやってー」
「グリーン。あなたがヘビィメイジから、杖を奪うの」
「そんなこと、できないよー」
「できるよ。あなたは盗賊。相手から物を奪うのは得意なの」
しかし、問題がある。
それはまず近づけないと言うことだ。
さすがの盗賊でも、近づけなければ、物を奪えない。
「そこで、ブラック。あなたの出番だ」
「……ん……」
「必殺技だよ。ここまで言ったら、分かるよね」
「……ん……」
では、準備はできた。
作戦開始だ。
「……ん……」
ブラックが走り出した。
盾を大きく構えると、彼女のスキル『挑発』を使用。
すると、ヘビィメイジの目線がブラックに引き寄せられた。
まるで、私たちのことなど忘れてしまったかのように、ヘビィメイジはブラックに対して怒りだした。
「ギュギュー!」
杖を突きだした。
ブラック。今だ!
――プシュウウウゥ!
ヘビィメイジの魔法が、煙を上げて消え始めた。
ブラックのアクセサリー『ゼロ・イマジン』は、一度だけ魔法を無効化してしまうのだ。
「グリーン!」
「いきまーす」
ヘビィメイジの懐に入り込むと、スキルを発動した。
「盗む――」
ササーッ! グリーンはメイジの杖を抜き取った。
「よーし! 取ったー」
杖を奪ったのを確認すると、今度は私が。
「ブレイブラッシュ!」
さらに、ブルーが畳みかける。
「ウオーターカッター」
流れるような連携プレーの前に、ついに『ヘビィメイジ』が力尽きた。




