13 パーティー名を決める
「『エレメンタルクラウン』というのは、どうでしょう」
突然、何を言い出すんだ。
というか、この店員さん、馴れ馴れしすぎる。
私は頼んでいた装備を受け取りにきただけなのに。
「やだなあ。パーティーの名前ですよ。まだ決まっていないんですよね? 『エレメンタルクラウン』。かっこいいと思うんです」
「でも、それアクセサリーの名前ですよね」
見た目は、小さな王冠の形をしている。
全部で6種類あり、地・水・火・風・光・闇の属性をそれぞれ付加できる。
私はパーティーのみんなに、このアクセサリーをプレゼントしたかった。
でも、一つ足りなかったので、必要な素材をダンジョンまで取りに行っていた。
というのが、先日までの話だ。
「構いませんよ。むしろ、当店の商品を名前として使ってもらえるなら、私としては誇らしい限りです!」
うーん。助かると言えば、助かる。
私も最初に少し考えていたけど、良い案が浮かばなくて、ずっと放置していたのだ。
どのみち名前は必要になってくるので、決めるなら早い方が良い。
それに正直な話、かなり気に入っていたのだ。
『エレメンタルクラウン』。この名前の響き、けっこう好き。
「わかりました。仲間とも相談したうえで、前向きに検討させてもらいます」
「はい。ぜひぜひ使ってみてください。ステラさんのこと応援してますよ」
それから、ギルドに戻ってきた。
恒例のミーティングをするためだ。
「みんな。パーティー名について、相談があるんだけど」
と、先ほどの話をみんなにしてみた結果。
「いいぜ」「いいですよ」「いいよー」「……ん……」「いいよ」
五人とも、ほとんど即答だった。
「みんな良いの? パーティーの名前だよ? 私たちの今後の未来を決める重大事項だよ?」
「なんでもいいよー。早くダンジョン行こうー」
「というか、こういうことにこだわるのはお前だけだよ」
言われてみれば、たしかに。
でも、名前って、これからずっとついて回るんだよ。
こんな適当に決めてしまっていいのか?
「……まあ、いいか」
エレメンタルクラウン。かっこいいしね。
気を取り直して、プレゼントタイム。
先ほどショップで受け取ってきたアクセサリーを五人に渡していく。
属性は6種類。それをメンバーで分けていかないと。
レッド:火 ブルー:水 グリーン:風
この辺りは順当かな。
彼女たちの色と一致するし、性格にも合ってる気がする。
そして、残りは、地・光・闇。
これを、ブラック・ピンク・私に分配しなければいけない。
「やっぱり、ここはピンクが光か。イメージ的に合ってる」
「ステラちゃんじゃない? 光は勇者だと思う」
「でも、その場合は、ピンクが地か闇。どちらもイメージと合わないよ」
とはいえ、勇者が闇だと闇堕ちしたみたいだし、地でも違う感じがする。
二人では決められない。
ブラックに決めてもらおう。
「ブラック。よろしく」
「……ん……」
机に並べられた三つのアクセサリー。そこから選んだのは、褐色の王冠。
まずは地属性から選ぶつもりか。
私たち三人のうちのいったい誰を。
「……ん……」
「え? 私?」
ピンクが地か。
母なる大地という言葉もあるし、そういう母性的なイメージを……苦しいな。
「……ん……」
「私が光? やっぱり、勇者だから?」
「……ん……」
ブラックは勇者の一般的なイメージを大事にしているようだ。
そして、ブラックは闇属性。まあ、色的に合ってはいるけど。
「あっ、そうだ。ブラック。はい。あなたにプレゼント」
ショップの店員さんにもらった『ゼロ・イマジン』をプレゼント。
本当は三百万しないそうだが、それでも十分に高価なものだ。
大事に使って欲しい。
「……ん……」
おお、喜んでる!
これでブラックの中での私の株は上がったかな。
「よおおおおっすっ!」
馬鹿でかい声だ。
それに見合った大きな男が、私たちの席までやってきた。
グリーンが立ち上がって、応える。
「よっすー!」
すると、男は陽気に笑い出した。
「はははっ! 元気だなっ!」
「うん。私、元気だよー。おじさんも元気だねー」
「はははっ! そうだっ! 俺も元気だっ! はははっ!」
男がポンポンと頭をたたくと、グリーンがパンパンと背中を叩いた。
男が肩を小突くと、グリーンがお返しにお腹を蹴った。
「おうっ! やるなっ!」
「そっちこそー」
楽しそうに笑い合う二人を見て、私は顔を青くした。
「なんだ、このおっさん。いきなり話しかけてきて馴れ馴れしい野郎だな」
「……あ、あわわ」
「ステラ。どうした? 真っ青だぞ」
「こ、こ、この、この人は、は、は」
「落ち着け。何言ってるか分かんねーぞ」
呼吸を整えて、話す。
「この人はギルドマスターなんだよ」
「ギルド? マスター?」
レッドはダメだ。
「ブルー。お願い」
「ギルドマスターはギルドで一番偉い人。まあ、簡単に言えば、ステラさんの上司にあたる人です」
ブルーの説明で合点が行ったのか、レッドも状況を理解した。
「それ、やばくないか? 今、グリーンの奴、おっさんの顔を殴り飛ばしてたぞ」
「……お願い。誰かあのバカな子を止めて」
☆
「はははっ! 元気があっていいっ!」
よかった。怒ってない。
みんなには退席してもらった。周りにいるとなかなか話が進まないから。
「それでっ! 話というのはっ!」
「……すみません。もっと声のトーンを落としてください。退席させた意味ないです」
「ああ。すまん。ついクセでな」
ギルマスは、ゴホンと咳き込んだ。
「聞いたぞ。新しいパーティーを組んだって」
「はい。仲間が集まったので」
「名前は?」
「エレメンタルクラウンです」
「そうか。よし」
ここから、本題のようだ。
「実は今、ギルドは深刻な人手不足でな」
「そんな風には見えませんけど」
「表向きはな。だが、人員、特に実力者が不足しているんだ。そこでおまえには、パーティーランクを上げて、難易度の高いクエストに挑んでもらいたい。頼めるか?」
パーティーランクか。
たしか、最初は誰でも一番下のFランクから始めないといけない。
地道に上げようと思えば、かなり大変だ。
「私が一人じゃダメですか? それなら、すぐ済むんですが。Sランクなんで」
「ダメだ! 求められているのは、パーティー」
「分かりました。でも……」
「なんだ」
「まだ、パーティーを登録してないです」
というか、名前をさっき決めたばかりなんだけど。
「そうか。じゃあ、俺が取り計らっておく。明日、試験を受けてくれ。場所は『試しの塔』だな」
『試しの塔』か。入ったことないな。
さっそく、みんなに相談してみよう。




