11 ブラックとアクセサリー①
「……ここがアクセサリーショップか」
武器屋、防具屋、そして、その隣にアクセサリーショップ。
三つが横並びになっている。
私たちが『アクセサリー』と呼んでいるものは、冒険者の装備のことだ。
装備していると、付属の効果を発揮することができる。
「ステラちゃん。入ったことないの?」
「実はアクセサリーって使ったことないんだよ」
大抵のことは魔法やスキルでなんとかなってしまうものだ。
別に付属効果はいらない。
よくあるのが、状態異常の防止効果。
毒や麻痺などにかかりにくくなるという効果なんだけど。
もし、かけられても『リカバリー』という魔法で回復できる。
行動不能で回復できなくても、アイテムで補完が可能だ。
うん。やっぱり使いどころはない気がする。
「私はあんまり詳しくないから。今日はピンクよろしくね。それと、ブラックも」
「うん。がんばる」
「……ん……」
さっそく、お店に入ってみよう。
「いらっしゃいませー」
店員は若い女性だ。
内装も小奇麗で、オシャレな雰囲気。
武器屋や防具屋は鉄臭かったり、油臭かったりするんだけど。
このお店は若者向けでクリーンなイメージだ。
というか……。
「わあ。私これ欲しいー。買ってー」
「やれやれ。仕方ないな」
あそこで話してる男女、明らかに冒険者じゃない。
よく見ると、他にも冒険者っぽくない人がちらほら。
なぜだ。アクセサリーショップって、冒険者の店じゃないのか?
「当店では一般の方向けのアクセサリーも販売しているんです」
店員さんが答えてくれた。
彼女が言うには、最近ではほとんどの店が一般の方用のコーナーを設けてるんだとか。
アクセサリーは武器や防具と比べれば、必需品というわけではない。
私のように、魔法でいいと思っている人も多い。
普通に経営してるだけじゃ、利益を出せないんだろうな。
「冒険者の方のコーナーはあちらですね」
案内されたコーナーでは、ゴツい大男たちが装備について語り合っていた。
内容は『フルプレートとライトアーマー、どちらがより優れているか』。
「そうそう。これが冒険者の店だよね。こういう会話で盛り上がってるの。ドスの効いた声で大笑いしててさ……」
「ステラちゃん。アクセサリーを見ようよ」
ネックレス、腕輪、イヤリング。いろんなアクセサリーがガラスケースに展示されている。
照明に気を使っているのか、光に照らされてキラキラと輝いている。
「へー。こんなにいっぱい種類があったんだ」
デザインが凝ってる。ドクロや蛇のマークが入っているものや、カラフルな色合いのものもある。
眺めているだけで、時間が潰せそうだ。
さらに、付属効果もこれまたいっぱい。
『毒付与』、『チャンス〇』、『クリティカル率20%アップ』などなど。
「すごく迷いそうだな」
これは決断力が試されてるな。
気合を入れて選ばないと。
――クイクイッ!
誰かが私の袖を引っ張っている。
見ると、ブラックが遠くの方を指し示していた。
「何? 向こうに何かあるの?」
――クイクイッ!
やはり何かあるのか。
行ってみよう。
「これは……」
どうやら、店の中央にある棚を指しているらしい。
この棚はお店に入ってきた客が、一番に見るところだ。
「もしかして、これのことを言ってるの?」
「……ん……」
名前 :ゼロ・イマジン
付属効果 :全体・完全防御・1度(戦闘中に一度だけ、魔法、スキルによる攻撃を無効化する)
なるほど。外見はシルバーの指輪で、他のものと比べて地味だけど。
効果が凄いな。パーティー全体を防御できるようだし。
「そっか。ブラックは盾職だもんね。この能力で、みんなを守りたいんだね」
コクコクと頷いた。
あんまり喋らないけど、彼女なりにパーティーについて考えてくれているようだ。
ここはなんとしても、期待に応えたいところ。
「あれ? 値札が付いてないな」
店員さんに聞いてみよう。
「すみません。これおいくらですか?」
「3000000です」
「……すみません。よく聞こえなかったんですけど」
「3000000です」
今、3百万って言った?
桁が三つぐらい違わないか?
いや、でも、効果は凄いし。私はアクセサリーの相場をよく知らないし。
こういうものなのかもしれない。
「ごめん、ブラック。買えない。お金が足りないの」
「……ん……ん……」
あのブラックが興奮してる!
そうか。あの指輪に運命を感じちゃったか。
気持ちはよく分かる。ビビッと来てしまったんだろう。
でも、残念。お金がないのだ。買えないのだ。
「ほおら、こっちにも良いものあるよ。これなんかいいんじゃない?」
「……ん……ん……」
「ちょっ、痛い。暴力はダメだって」
仕方ない。ブラックからは距離を置こう。
ピンクのところに行ってみる。
「ピンク。何かいいの見つかった?」
「これなんかいいんじゃないかな」
名前 :エレメンタルクラウン
付属効果 :属性付加(自身の攻撃に属性を付加することができる)
「これ見て。小さな王冠の形をしてるの」
小さくてかわいい。
これを頭にくっ付けると。たしかに良いかもしれない。
「それにね。全部で6色。私たちの人数とちょうど同じなの」
属性付加だから、6つの基本属性。
つまり、地・水・火・風・光・闇で、ぴったり6つ。
本当だ。なんという偶然。
しかも、値段は1500G。
6人分でも9000G。10000Gで足りる。
完璧だ。完璧なアクセサリーだ。
生まれてきてくれて、ありがとう。
「ピンク。これ買おう!」
「うん。それじゃあ、地、水、火、風、光……」
「どうかしたの?」
「えっと、闇がないの」
たしかに、闇属性だけが売り場にない。
よし。店員さんに……。
「ただいま在庫切れでして」
「いつごろ入荷しますか?」
「それが……」
店員さんが、困ったように目を泳がせている。
「仕入れ先の関係で、素材の入手が困難になっていまして。このまま、販売停止にしようと」
それは困る。
6属性でお揃いのアクセサリーにしたいのだ。
一つでも欠けてしまったら、お揃いにならない。
「つまり、素材があれば、販売してもらえるんですよね?」
「はい。それなら数日もあれば、ご用意できます」
「素材の名前を教えてもらえますか?」
名前を教えてもらった。
知ってる素材だ。ここから、そう遠くない場所で入手できる。
「分かりました。では、私たちが素材を取りに行きます」
「そうしてもらえると助かりますが、あの素材は……」
「問題ありません。私には頼れる仲間たちがいるので」
「仲間たち?」
「はい。準備しておいてください。一日で入手してくるので」
次のダンジョンが決まった。
こうしちゃいられない。すぐにみんなを集めないと。




