神の力を使って森を生き抜く 10
「「我らを貴方様の配下にさせて頂けないでしょうか」」
「え?」
なんでそうなるんだ?
「なんで?」
「兄は脳筋なので私から説明させていただきます」
どうやら女の魔族が説明してくれるらしい。
男はやっぱり脳筋なのか。
「はい。私達はこの200年間ずっと仕える王を探しておりました」
ふむふむ
「それでたまたまこの森に来たら、人間がいたので少しだけ力を試してみたくなったのです」
「それで俺にボコボコにされて配下になろうと?」
「さすが貴方様です。その戦闘力で聡明であるとは……」
なんか勝手に歓喜に震えている。
そんぐらいは少しアホっぽい伽耶でも理解できると思うけどな。
もしかして俺ってそんなに強くなったの?
「なんで仕える王なんか探してたわけ?」
「私の一族は代々仕える王を決めるのです。そして私達はその一族の生き残りでございます」
へぇ、なんか大変そうだな。
俺はこいつらを配下にした時のメリットとデメリットを考える。
パッと思いつく限りのメリットは俺の弱点を補えること、世間や地理について聞けること、まぁ家事をさせることができるくらいか。
デメリットは邪魔なこと、裏切るかもしれないことぐらいだな。
裏切られても大丈夫なようにしておこう。
まぁこれだけなら断る理由もないな。
「わかった。いいよ」
「「ほ、本当ですか?」」
「あぁ本当だよ」
「「やったぁああああ」」
なんかものすごく喜んでる。
伽耶は今の状況についていけてないためにポカンと口を開けている。
こりゃ話についていけてないな。
「これでやっと一族の………」
「ありがとうございます……えっと……」
「◯ルドラースだ。ミルドと呼んでくれ」
「わかりました。ミルド様」
結局俺の配下になったってことでいいんだよな?
「少しいいか?」
「はい! なんでも命令してください」
「俺の眷属になってほしい」
「ミ、ミルド様の眷属でございますか!?」
「そうだけど、何か問題ある?」
「いいえ! 是非なりたいです!」
二人ともかなり嬉しそうだ。
そういえば名前はなんていうんだろう。
「名前ってあんの?」
「私達に名前はございません。もしよかったら……」
ここは主人として名前をつけるべきだろう。
俺は【命姫】を取り出して、まずは男に向かって言った。
「お前の名前をフリードにする」
即興で考えた名前だが、魔族の男を見る限りすごく嬉しそうなので安心した。
そして、俺は【命姫】でフリードの指を少しだけ斬る。
次に
「お前の名前はアイリスにする」
フリードと同じ様に嬉しそうにした。
俺はアイリスの指をフリードと同じように斬った。
【命姫】で斬った理由は二つある。
一つ、俺の眷属にして裏切るような行動をできなくすること。
俺が行ったのは完全に眷属にするのではなく、半眷属と言ったところだろう。
俺の命令は絶対ではないし、自分の意思で行動する。
けど、裏切る行動をしたら死ぬようにしてあるだけだ。
二つ、収納を可能にすること。
これから人里に行くことになるため、こんなわかりやすい魔族が居たら絶対敵だと認識されるからだ。
「「ありがとうございます!」」
そして、俺の配下にフリードとアイリスが増えた。
★
魔族。
元々は魔物が進化したもので、種族によっては人間と友好関係にある種族もあるらしい。
例えば精霊族だ。
精霊族は人族と友好関係にあり、精霊魔法などの力を与えているとこのことだ。
特にエルフ族と仲が良いらしい。
そして、フリードとアイリスはソルド族と言われる種族だ。
当然のように人族とは敵対していて、人族の間では絶滅したとされている。
その生き残りが兄のフリードと妹のアイリスってわけだな。
アイリスに聞いたところ、この森は魔族領とは反対の西側にあるらしい。
人間の街に行ったことはないそうなので名前とかは知らないんだとか。
あと、尻尾やら翼やらはしまえるから普通に人の街に入ってもバレないらしい。
疑うまでもなく忠誠心はすごいし、なんのために眷属にしたのか分からなくなってきたけど問題ないだろう。
「そういえばアイリスの使ってたのって魔族特有の魔法か?」
なんか俺にはさっぱり聞き取れない詠唱をしていた。
詠唱をしたとしても何種類も同時に魔法を発動するなんて普通じゃ出来ることでない。
「私は悪神タローマティの人悪神で“呪文”を自由に使い魔法を発動することができます」
なんと人悪神を配下にしてしまった……。
これって下手したら俺が魔王とかになったりしないよな?
ちなみにフリードは人悪神ではなくて、普通の魔族で無詠唱で使ってた魔法も人族が使う魔法と変わりはない。
だが、フリードも無詠唱で2種類の魔法を使っていたので化け物に分類されるだろう。
「これからどうするの?」
それが今一番考えなければならないことだな。
「取り敢えず家で………あ」
そういえば家は無くなってたな。
フリードとアイリスは申し訳なさそうにしている。
「面倒いことはさっさと決めてしまおう。第1回作戦会議だ。今回はこれから行く街とそれぞれの役割についてだな」
これから人里に行くためには色々な設定を決めておかなければいけないだろう。
それを決めるための会議だ。
「「「はい!」」」
「まずはここ周辺で一番近い国はどこかわかるか?」
「はい。ここから東に100キロほどのところに大きな街があります」
そんなに離れてるってことはこの森どれだけ嫌われてるな。
「よし。今日のうちにそこに行くぞ。次は、フリードお前は戦闘以外で何ができる?」
「なにもできません」
……思ったりもずっと脳筋だった。
アイリスが物凄く申し訳なさそうにしている。
こいつを人間の街に入れさせたら酷いことになりそうだな。
ただでさえ絶世の美女が2人いるから絡まれるに決まっている。
「もし、俺に殴りかかってくる奴がいたらどうする?」
「殺します」
こいつもうだめだな。殺すこと以外何も考えていない。さっきからアイリスに説明を任せている理由がわかった気がする。
やっぱり眷属にしておいてよかった。こいつは緊急事態以外は収納しておこう。
「もうお前はいいや。アイリスお前は?」
「呪文と普通の魔法……あとは家事全般できます。それにミルド様なら夜のお相手も喜んで………」
最後のほうは聞かなかったことにしよう。
アイリスは呪文を使いこなす上に、普通の魔法も使えようだ。
だが家事全般できるということなので、アイリスの役割は決まったな。
「じゃあアイリスはメイドな」
「メ、メイドですか!? ミルド様のメイド……」
なんかすごく嬉しそうにしている。
フリードが俺はなんですか?と言っている。
フリードはどうしようか。
こいつを外に出しておくのは危険だ。
とは言っても……
「フリードは魔力察知とか得意か?」
「もちろん!戦闘に関わることならすべて問題ありません!」
「どのくらいの時間索敵し続けられる?」
「俺は今も常に索敵魔法を使っています。もちろん寝ている時も」
これなら少しだけ役割を与えらるかもしれない。
俺は最近収納の力の一つに気がついた。
俺の中に収納している植物はその植物の能力を使い続けられるというものだ。
例えば俺の中に【命姫】で眷属にしたゴリラがいるとする。そのゴリラには【筋肉増加】という筋肉が1.5倍大きくなるスキルがあったとして、そのゴリラは俺の中で自由に【筋肉増加】を使えるということだ。
これを利用すれば、フリードもかなり役立つようになるはずだ。
俺の弱点の一つに、索敵ができないというのがある。
近くにいれば気配などでわかるが、遠くにいる場合は本当に何もわからない。
俺の中にいる眷属に索敵させるのもいいけど、『グルルゥ』としか言わないから何処に敵がいるかさっぱりわからなかったのだ。
森の中ならば森がおしえてくれるが、その敵の細かな大きさや強さはわからないし、これから行くのは街の中なので植物に頼ることはあまりできなくなる。
そこでフリードだ。
こいつを収納し、永遠と索敵させる。
少し可哀想だが、脳筋にはちょうどいいだろう。
あとは、俺の護衛とでも言えば喜んでもらえそうだな。
「んじゃフリードは俺の護衛で」
「ご、護衛ですか!?」
お、やっぱり護衛という言葉に惹かれたな。
「そうだ。俺の中でずっと索敵してろ。そして、敵が現れたら俺に知らせて守ってくれ」
「おぉおおおおおおおお!」
フリードが叫けびだす。
うるさい
「私は何かやることある?」
「伽耶は……取り敢えず強くなろうか。まずは俺がいなくても自分の命ぐらいは守れるようにしなきゃな」
「わかった!おにーさんが教えてくれるの?」
拳だけで生きているようなフリードに剣術が教えられるとは思わない。
完全に自己流だが、俺が教えるしかないだろう。
「そうだな……剣術が俺、体術がフリード、魔法はアイリスにしようか」
体術は俺でも良いけど、フリードのやることが無くなるからフリードにした。さすがの脳筋でも教えることぐらいはできるはずだ。
魔法は最初の少しだけなら俺も教えられそうだが、それでも実際に使える人が教えたほうがずっと良いのでアイリスに任せることにした。
これで、伽耶は時間が経てば俺よりも強くなれること間違いないな。




