17 マイスターとアイスメロン酒(その1)
<ラララ~、ラララ~、ラララ~・・・>
突然、音楽が鳴り響いた
やられた!
そう思い、グラスを拭いていた手を止めて、空けた右手で頭を抱えました
「はあっ」
おもわずため息が出た
そして酒場にいる面々を見渡すと皆驚いた顔をしていました
やっぱりの反応です
あー、驚かせてすみません
ご迷惑をおかけします
この店の扉の呼び鈴は
<カランカラン(普通の客)>
か
<ブー(招かれざる客)>
ですから、いきなり音楽が鳴り響くと驚きますよね
こうなった原因については心当たりがありまくりです
って、こんなことできる人間は一人しかいません
<ギイッ・・・>
ポケットが一杯ある上着とズボンを身に付けた男が入ってきました
予想通りの人物です
「マイスター、勘弁して下さいよ、遊びすぎですってば・・・」
文句を言うと
「すみません、すみません!てっきり喜ぶと思ってました、あああっ~~~~~」
とテンパリ始めました
ほんと、予想通りの反応です
この人、腕はいいんですよ、腕だけは
この酒場の作製とメンテナンスをしっかりキッカリやってくれてますから
この酒場が上空100mから落ちた後、海に放り出されても、雪山に飛ばされても、棚のグラスが揺れてカチャカチャ音がするだけで割れないってのはスゴイです
異世界に転移するたびに、どうやったらこんなの作れるんだろうって感心しています
ただ、腕に反比例して人間としてのイロイロが危ないです
自己評価が低すぎる
テンパルと人の話を聞かない
人の事情を思いやることができない
酒場のメンテナンスを丸投げすると魔改造する
etc,etc・・・
付き合っているだけでHPがガンガン減っていきます(涙)
一通りアワアワ言うと上着の内ポケットから端末を取り出しました
そしてその場で立ったままなにやら打ち込み始めました
「・・・よろこばれない・・・何が悪かったのか・・・、普通?・・定義は・・」
ブツブツ言ってます
おいっ、ここは魔改造を治すとことだろっ
思わず突っ込みましたがガン無視されました
ほんとゴーイングマイウエイ
一般常識がからっきしです
しばらく一人反省会をした後
「すみません、すみません、いつものお願いします・・・」
そういってカウンターに座ってきました
いつのまにか呼び鈴の件は、なかったことになっていました
がっくし
あなたの周りにいる人達は、毎日フルマラソンしてるくらい疲れてない?
なんか被害が目に見えるようです
魔王を討伐する際に身に付けたセルフコントロールでなんとかテンションをアゲアゲしました
この人が一般常識を身につける日がくるのか?
結構心配です
再起動した後、冷蔵庫で冷やしておいた緑色の酒をビンからグラスに注いで出しました
「アイスメロン酒です」
そういってカウンターに座ったマイスターの前にコースターと一緒にグラスを置きます
ちなみに『いつもの』とは『他では飲めない貴重なお酒』です
珍しいものを飲んだり食べたりするとインスピレーションが湧いて創作活動がはかどるんだとか
コレ以上ぶっとんでどうするだ、って毎回心の中で突っ込みたくなります
「とある世界の地球帝国の版図の外で最近、発見されたロストプラネットにあるアイスメロンを使ったお酒です。アイスメロンは氷河期の植物であるため、雪山の高い所にしかはえません。また、発酵も昔と同じ雪山で数年かけて行う手法をとっていることから、味に深みが増しており・・・」
お酒の解説をすると、またしてもなにやらブツブツとつぶやきます
「おおっ・・・ロストプラネット?・・未開でのサバイバル・・フフフ・・防護服?・・フヒャッ?・・いや生体機能を調整・・強化する・・へへへ~っ・・・アイデアが出てくる・・・ヒャハヒャ」
呟きながら携帯端末に打ち込んでいます
なんかキモイです
あ~、そこは小粋な会話をするところでは?
話しかけられたら返事くらいしようか?
・・・反応が酷すぎて、この人がまともになる日がくるのか心配になってきました
ブツブツと呟いて端末に打ち込んいるので、グラスの中の氷が少しとけて<カラン>と音を立てました
あああ~~~っ、酒が薄まっていく~~~~っ
殴っていいかな?
いいよね?
思わず殴りそうになる右手に力を込めて自制しました




