138 おぼっちゃまと蜂蜜酒(その17) ~元所長パレードをするの巻~
「ウイットに富んだ返事を探すためには相応の対価が必要です」
・・・洗脳はまだまだ続くようだ
でもここで等価交換がでてくるとは思わなかったな
もっとも最終話の手前あたりで嘘っぱちだと誰かが言っていたな
「ああ、丁度いいですね、共和国の隠れたエピソードがありますよ」
執事がニッコリ笑いながら言った
目の前の(というには結構遠くて店からは見えないが)壁があります
通称『バカの壁(笑)』
現地現物を見ながら話を聞くと結構憶えるものですよ
そうすれば書物で読むよりも頭に入るでしょう
だそうだ
・・・会社の教育であったよな
座学で教えるよりも、実際に仕事する場所にゾロゾロと連れて行き実際に身体を動かすOJT
この世界にないはずなのに実践している
執事
恐ろしい子
・・・有能な人間というのは教えられることなく自分でさっさと先に進んで行くんだな
コホン
話を戻そう、いや執事の話の続きを聞こう
「・・・が原因で魔導炉が爆発しました」
しまった最初の部分を聞き逃したぜ
「そして半年がたった頃のことです
驚いたことに魔導炉の建設所の所長が共和国中の街々でパレードをしていました」
「え?!・・・」
酒場中の人間が置いてけぼりになっていた
人的失敗で魔導炉を爆発させておきながら、その責任者が英雄扱い
これが理解できる人間がいるとは思えない
いや理解したら負けだと思うぞ
・・・いや理解しているっぽい共和国民がいるか
「馬車に乗った魔導炉建設所の所長が笑顔で手を振っていましたね」
「それを見た街中の人間が凄く喜んでいましたね」
「本当に何考えているのかわかりませんでしたね」
そう言う執事
・・・300年前のことを見てきたように言う執事の方が余計にわからないぞ?
もうかりまっせ!と騙し打ちで魔導炉を作った
安全対策はバッチリだ!と断言した
しかし実際にトラブルが発生すると安全対策は全然役に立たなかった
だって安全対策を実行するには遠くにいる七大氏族の承認が必要だったから
それも全員の承認を得るのにどう考えても1週間はかかるというもの
役に立たない対策のせいで見渡す限り、いやそれ以上の土地が汚染されて人が住めなくなった
当然怒りは責任者である所長と七大貴族に向けられた
国中の至る所でデモが起った
実際に七大氏族とその関係者に会える者は直接苦情を言った
しまいに七大貴族は
「名前を貸しただけですべては所長に責任がある」
と所長を人身御供に差し出して事態の収拾を図ろうとする始末
・・・権力者はどこの世界でも同じだ
権力者と書いて『最低の人間』と読む、だな
あるいは『犯罪者』か?
しかしこの世界の七大氏族は凄かった
「実はもっと酷い被害になるはずだった」
「それを防いだのは所長の決断があったらかだ」
「所長は現代の英雄だ」
等々を言った(らしい)
最初は誰も聞こうとはしなかった
半信半疑どころか
こいつら何言っているんだ?、との扱い
でも『ウソでも100回言うと真実になる』の永続魔法(?)が発動した
結果として、1か月後には共和国中の人間が見事に洗脳されていた
そうして英雄のなった所長は国中の街々でパレードをした
沿道には所長を一目見ようと人が溢れていた
その手には似顔絵や名前を書いた旗があった
宿の周りでは所長と握手をしようと人が集まっていた
・・・共和国の人間、チョロすぎね?
「とまあ、このような隠されたエピソードがあります
知る人は知っているというネタなので効果的に使うとよいですね
あ、あと自分は貢思うといったような感想、それも奇をてらわないものを添えると更に良いでしょう」
いい話だな~
芸人でいうところのオイシイネタ
貶すなりなんなりで酒宴はさぞ盛り上がることだろう
・・・でもイロイロ知っている執事の方が気になるのは異世界酒場店主だけか?




