137 おぼっちゃまと蜂蜜酒(その16)
「どう思います?」
蜂蜜酒を飲んでいた貴族弟に執事が質問した
「酷いな?」
貴族弟が返事をした
当たり障りがない回答ともいう
「ぼっちゃん、いい返事です」
執事が褒めた
いいんかいっ!
盗み聞きしていた酒場の他の人間の心が一つになった瞬間だった
え?
えっ?
貴族弟が周りの空気を読んで「なんか違ってないっ!?」って感じでキョドった
「常に自分の意見を言うという姿勢が大事なのです」
執事の褒めた理由を聞いて貴族弟は<ほっ>とした
「そこでウイットに富んだ返事だともっといいでしょう」
・・・結局はダメ出しをしているあたりこの執事はいい性格をしている
そういえば人に注意するにはまず褒めてから、ダメ出しをするってテクがあったな
執事、恐ろしい子(笑)
でもウイットに富んだ返事ってなんだよ!
またしても酒場の他の人間の心が一つになった
「貴族たるもの酒を飲みながら政治や経済の話をする嗜みは必須です」
執事が説明を続けた
いやそれよりもウイットに富んだ返事の模範解答を言ってみろ、と言いたい
いや言わないけどさ
だって聞き耳立てている立場だもの
盗み聞きはいいね
リリンの生んだ文化の極みだよ
どこかで誰かが言っていた(ような気がする)
「酒を嗜みながら
今後の領地のこと
馬の繁殖のこと
子供の結婚のこと
自国や他国の政治のこと
その時々に旬の話題について議論することが求められます
その時にきちんと意見を言えないとバカにされます
そしてそれは噂となり1日で貴族中に広まります
ですから無難なところで構わないので返事をすることが必要なのです」
酒場の『聞き耳たてている~ズ(笑)』の願いも虚しく執事が話を進めていく
「そこで話がつながるような返事ができればなお良いです」
・・・今判った、この執事、貴族弟を洗脳してる
穏やかに説明しているが実はどこかの軍曹なみにアブナイ奴かもしれん
「なお、目上の人との酒宴で会話を重ねるとウイットに富んだ返事というのが聞けるかもしれませんよ?」
・・・悪質だ!これで自分から進んで会話をしない訳が無い
それどころかウイットに富んだ返事が出てくるまで酒宴に出続けることだろ
執事
恐ろしい子!




