第8話:トイ
★前回のあらすじ
初デート達成。
ーー問3 この時の彼女の心情を答えなさい。
『ふふ。…私にはそういう子いないから。羨ましい。』
『琴葉ちゃん?…うん。琴葉ちゃんはとってもいい子だよ。』
『いつだって、私のこと心配して、気にかけてくれる優しい子。』
海晴は、どうしてあんなこと言ったんだろう。
雲山はすっげー友達思いだ。間違いなく。
じゃなきゃ、俺にあんなこと言わない。
お互いを思いすぎて逆に気を遣うとか…?
…でも雲山は言うときはばっさり言う奴だと思うんだよなぁ。
海晴だって、あれでいて結構押しが強いタイプだし。
「うーん…わっかんねー!」
「何がわからないんだ?」
「っうわっ!!!???」
「…てなんだよ燐か。驚かせやがって。」
「すまない。一応何度かノックはしたんだが、返事がなかったものでな。勝手ながらあがらせてもらった。」
「いや、いいよ。気づかなかった俺も悪いし。で、どうしたんだ?」
「沙代おばさんから、蒼也にケーキを持って行ってくれと頼まれてな。」
「お、サンキュー。つーか、今日なんか約束してたっけ?」
「いや。祖母から土産物を渡すよう言付かった故、急だが訪ねさせてもらった。」
「ふーん。まぁゆっくりしてけよ。」
「あぁ。…ところで何か悩んでいたようだが。」
「…あー、まぁちょっととある問題に躓いててな。」
「そうか。必要なら手を貸すが。」
「うーん…いや、いいわ。俺がどうこう言うのもなんか違う感じするし。」
「わかった。だがもし協力が必要になったら、その時は言ってくれ。」
「おう!…あ、じゃあ一個頼んでいいか?」
「なんだ?」
「課題のさ、ここのところがわかんねーんだけど…。」
「あぁ、そこは…。」
「あ、なるどそういうことか。わりぃ、助かった。」
「構わない…が、蒼也。お前そんな調子でテストは大丈夫なのか?」
「…ん?テスト?」
「再来週、中間考査だろう。」
「……あ。」
「…まさか蒼也、お前…。」
「わ…」
「忘れてたあぁぁぁぁぁ!!!!」
ーー休日。図書館にて。
「今日はよろしくね。諸星くん、暁月くん。」
…全く、ピンチはチャンスだとはよく言ったものだ。
先日は衝撃の真実に危うく俺の心がブレイクダウンするところだったが、賢い俺はある一つの答えに辿り着いたのだ。
勉強会。
単に学力の向上だけでなく、長時間同じ目標や課題に向き合うことによって、ある種のシンパシーを生み出し、互いの好感度を引き上げることができるという優れものだ。
つまり俺は、海晴と親密な関係を築きながら、さらに成績まで手に入れることができるということだ。
まさに一石二鳥、一挙両得。完璧な解だ。
…しかし。
「暁月燐だ、よろしく頼む。海晴。それから…」
「桜旧代附属高校の雲山琴葉ですぅ〜。学校は違いますけど、私のところもテストが近いので是非にと思いましてぇ〜。」
「今日はよろしくお願いしますねぇ〜。諸星さん、暁月さん。」
…まさかこの四人で行うことになるとは。
「…あぁ、ここは一度分けて考えて…の公式を入れて…」
「…そっか!それじゃあ、あとはこれとこれを代入して…」
…あれ?なんだろう。お前らなんか良い感じじゃないか?
「羨ましい。ずるいぞ燐!」
「知るか。真面目にやれ。」
「はい。」
「ふふふ、怒られちゃいましたねぇ〜。」
「うるせえ、そういうお前はどうなんだよ。」
「私ですかぁ〜?誰かさんと違ってちゃ〜んとやってますよぉ〜。」
「…うわっ、ホントだ。もう全部解いてやがる。…お前頭良かったんだな。」
「やることやっておかないとぉ〜、色々言われちゃいますからねぇ〜。」
「なんか大変なんだなお前も。」
「今一番大変な立場なのは諸星くんですけどねぇ〜。」
「っぐ!お、俺だって!理数系はダメだけど、古文とか英語とか…語学系は結構得意なんだぜ!」
「え?諸星くん、英語得意なの?」
「お、おう。」
「あの…もし良かったら私に英語教えてくれないかな?」
「っ!勿論、いつでも頼ってくれ。」
「優衣ち、英語だけはダメですもんねぇ〜。」
「だ、だって、本当にわけわかんないんだもん。もー!日本人なら日本語ができればそれでいいじゃん。」
「英語ができない人の言う典型的なソレですねぇ〜。」
「うぅ…。いいもんいいもん、次の考査では琴葉ちゃんがびっくりするような点数、とってみせるから!」
「悪い方でですかぁ〜?」
「良い方で!」
…こうして聞いてみても普通に仲良い…よな?
ぎくしゃくしてる感じもないし…。
単純に俺の気にし過ぎか?
「そういえば雲山って桜旧代附属って言ってたけど、中学からそうなのか?」
「そうですよぉ〜。」
「へぇ、なんか小学生のうちから受験勉強、なんて想像できねーな。」
「ふふふ、でもぉ〜、諸星さんはともかく、暁月さんはそういうのしてそうですけどねぇ〜。」
「おい、俺はともかくってなんだ、俺はともかくって。」
「オレも一時期は受験を考えていた。が、取りやめた。」
「え?どうして?」
「色々あってな。あの頃は、進学の道が自分にとって、本当にそれが正しいことなのかと何度も問答した。結果他の選択肢を取ることになったが…。」
「はぁ〜、すごいですねぇ〜。なんだか洗練されていてカッコいいですぅ〜。」
「ありがとう。ところで二人は高校は違うがどういった経緯で知り合ったんだ?」
「あ、私と琴葉ちゃんは中学が一緒なの。」
「ですですぅ〜。」
「へぇ、でもなんで海晴はそのまま内部進学しなかったんだ?受験とかしない方が楽じゃね?」
まぁ、そのおかげで俺は海晴と出会うことができたので、その頃の海晴には特大の花丸をあげたい所存だが。
「あ、えっと…その…。」
「……。」
…あれ?なんだこの空気…。
…もしかして、俺…、なんかしくった?




