第5話:チュウコク
★前回のあらすじ
友達にカノジョバレしました
ーー放課後。被服教室にて。
「そういえば優衣ちゃん、例の…諸星くんだっけ?と付き合うことになったって本当?」
黙々と手を動かす作業に飽きたのか、布へと向けていた視線を、今度は私の方へと向けてくる。
…できることなら作業に集中したいけど、こうなった以上、今日はもう諦めたほうがいいかもしれない。
「はい、おかげさまで。」
「わぁ!おめでとー!ねぇねぇ、どっちから告白したの?」
「私からです。それで諸星くんもいいよって言ってくれて。」
「おー!いいねいいね、青春だね!」
「なになに?何の話?」
興奮気味に話す先輩の声に釣られたのか、周りの人たちが次々に私たちを囲む。
「優衣ちゃんに彼氏ができたって話!」
「えぇ!マジ!?なになにどんな子?」
「ほら、知らない?2組の諸星くん。今年の学祭でウチの部に直談判来てた子!」
「あー!あの子か!ねぇ、優衣ちゃん、ちなみにその子のどんなところが好きなの?」
「え?えっと…。」
『頑張ること、マジになることの何がカッコ悪いんだよ。』
『絶対に俺が何とかしてやるから、任せとけ!』
「…私の好きを否定しないでいてくれるところとか、それどころか応援してるところとか…後は…。」
「私を好きでいてくれるところ…ですかね。」
「わかるー!やっぱり自分、愛されてるって実感ほしいよね。」
「あーあ、いいなぁ。ウチも愛されたい!」
「アンタ彼氏いなかった?」
「うーん…いるっちゃいるけどさ、なんかこう、お前が特別だぜ!感がないんだよね。」
「やれバイトだー、友達と出かけるだーとかでデートも断られるし。」
「常にこっちを優先しろとまでは言わないけどさ。なんだかなーって感じ。」
「…そういうの、不安になったりしないんですか?」
「ん?」
「あ、いや…なんというか…。そういう時、自分って本当に愛されてるのかなとか、この人私のこと好きなのかなとか…思ったりしないのかなー…なんて。」
「うーん…まぁ正直、思うことはあるけど、別にウチも彼氏が一番なわけじゃないしなー。」
「あれだよね、彼氏の危機と推しのライブだったら、推しのライブ優先させそう。」
「失礼な!流石に彼氏の危機優先だわ。誕生日とかだったら推し優先だけど。」
「彼氏くんかわいそ。」
「いやぁ、でもなー…あれ?優衣ちゃんどうしたの?」
「…すみません、ちょっと体調が優れなくって…。」
「え!?大丈夫?」
「無理せず帰んな帰んな。先生には言っておくから。」
「はい。すみませんありがとうございます。」
「お大事にねー。」
「また明後日ね!」
「はい。お疲れ様でした。」
「…はぁ。」
帰り道、誰もいないことを確認してそっとため息を吐く。
「一番じゃない、か…。」
私だったら、好きな人には、誰よりも好きでいてほしいけどな。
だって、そうじゃなきゃ…
"プルルルルル、プルルルルル"
…?誰からだろう?
「…琴葉ちゃん?」
「もしもし?琴葉ちゃん?」
『あ、やほやほ〜、優衣ち〜。』
『今、時間空いてますかぁ〜?』
「うん。大丈夫だよ。何かあった?」
『ん〜、何かっていうよりもぉ〜、優衣ちに一つお願いがありましてぇ〜。」
「お願い?…うん。…うん。…え!?」
「すみません。食事までご馳走になってしまい。」
「いいのよ。遠慮しないでどんどん食べてね。」
「はい、いただきます。…蒼也、食事中にテーブルに顔を伏せるな。行儀が悪いぞ。」
「どこぞの誰かさんのせいでメンタル的に疲労困憊なんですー!」
「そうか、それは大変だったな。」
「お、ま、えだよ!わかって言ってんだろ!」
「蒼也ー。ふざけてないで食べちゃいなさい。」
「なさーい。」
「言われてるぞ。」
「っうぐ!後で覚えてろよ…いただきます。」
「いたーだきます!」
「はーい。あ、よいちゃん、あんまりお口に詰め込んじゃダメよ?のど詰まっちゃうからね。」
「…。はーい!」
「ふふ、いいお返事ね。」
「あぁ。偉いぞ、夜一。」
「くそー、俺をおいて楽しそうにしやがって。いいもんいいもん、美味しいご飯が俺にはあるもん。」
「蒼也、からあげもうちょっと食べる?」
「食べる。」
「はーい。…あら?」
「蒼也ー。電話来てるみたいよ?」
「えー?誰からー?」
「えっと…海晴…」
「もしもし。俺だ、諸星だ。」
『あ、諸星くん?ごめんね、急に。ちょっと聞きたいことがあって…。』
「聞きたいこと?」
『うん。今週の土曜日なんだけど、空いてるかな?』
「空いてる。アタックもびっくりなくらい真っ白だ。」
『そ、そっか、ならよかった。えっとね、実は私の友達…琴葉ちゃんっていうんだけど。』
『その子がね、諸星くんに会ってみたいんだって。』
『もしよかったら、今週の土曜日に駅前の喫茶店で3人でお茶でもどうかな?』
「勿論いいよ。」
『ありがとう!それじゃあ土曜日によろしくね。後で喫茶店の位置情報送るね。』
「よろしくな。楽しみにしてる。」
『ふふ。それじゃあまた明日、学校で。』
「あぁ、また明日。」
…。
……。
こ、こここ、これはもしやデートなのでは?
いや、正確には海晴の友達もいるから違うんだろうけど。けどもだ!
海晴とどこかに出かけるなんて、初めてのことだし、これは実質初デートと言っても差し支えないんじゃないのか!?
それに友達に会ったあとは「じゃああとはお若い二人で…」、なんてあるかもしれないし…。
そうと決まれば…!
「燐!俺の勝負服を一緒に選んでくれ!」
「わかった。だが食事が先だ。」
「あ、はい。」
あぁ、土曜日が待ち遠しいぜ。
「単刀直入に言いますねぇ〜。」
「優衣ちと今すぐ別れてください。」
どうしてこうなった????




