第3話:クラスメイト
★前回のあらすじ
女装デビューしました。
人は誰しも一度は思ったことがあるだろう。
大勢から注目されたい。
輪の中の中心にいたい。
幼い頃、夢見るアイドルや野球選手、YouTuberになりたいと願うのだって、そんな思いが大元にあったからに違いない。
斯く言う俺も、小さい頃はやれ野球選手になるだの、やれサッカー選手になるだの、よく高らかに宣言したものだ。
…まぁ、どれも長続きせず、すぐにやめてしまったが。
ところで、少年時代の俺よ。
「ねぇ、この写真に写ってるのって諸星くんだよね?」
「諸星お前、昨日海晴さんと一緒に歩いてたよな?…女装で。」
「お前らも見た?やっぱ見間違えじゃなかったんだな。」
…抱いた願いは叶えられたよ。
とても不本意なカタチで。
「えっと…それは…その…。」
まじでどうしよう。
正直に言うか?海晴のカノジョになったので、彼女の手作り制服を着て一緒に帰りましたって。
いや、改めて聞いても意味がわからん。
そもそもカノジョってどういうこと?なんて問われたら終わる。
だって未だに俺も意味わかんないから。
誰かっ、誰でもいい!この状況を何とかしてくれ!
「…あ!優衣、おはよー!」
キター!!神様仏様救世主様我が愛しのマイプレシャス!
頼む、昨日のことについて皆に説明してやってくれ!
そして俺にもわかるように説明してくれ!
「ねぇ、優衣。これ…どういうこと?隣にいるの諸星くんだよね?女装してる。」
おい、女装のところで毎回苦々しい顔になるんじゃない。
かわいいだろ。服は。
「わ、写真撮られてたんだ。恥ずかしいな…。」
うん。俺も恥ずかしい。穴があったら入りたい。
いや、そもそも穴を掘った結果こうなったんだけど。
「もしかして、諸星くんの変な趣味につき合わされてる…とかじゃないよね?」
「ほら、優衣手芸得意だから、無理矢理…。」
失礼な。俺をなんだと思っているんだ。
好きな子に不埒な手を働く程、俺は堕ちちゃいない。俺が堕とされたのはハートと社会的地位だけだ。
「えぇ!?そ、そんなんじゃないよ!」
「その…昨日、諸星くんにこ、告白したの。それで諸星くんもいいよって言ってくれて…。」
「服、頑張って作ったから…諸星くんに着てほしくて。」
…ん?待て、待ってほしい。いや事実なんだが。何か大切な部分が抜けてないか?
「そっか…優衣、服作るの好きだもんね。」
「えぇー!言ってくれれば私が着てあげたのに。」
「じゃあもしかして、モデルになってあげてたってこと?イイトコあんじゃん、諸星!」
「漢だな…お前。」
先程の疑心混じりの…どこか冷めたような、引いたような視線から一転。
送られる視線はどこか生温かくむず痒い。
おい、今ので納得するんじゃないお前たち。
肝心な部分が何一つとして判明していないんだが?
それでいいのか?
「あ、てか付き合ったんだ。おめでとー!」
「おめでとう!優衣!お祝いにチョコあげる。」
「ありがとう!」
しかし悲しいかな。プレゼンターはすでに祝賀会に参加してしまったようで、こちらの質問には答えてはくれないらしい。
「…あ、そうだ。」
「おはよう諸星くん。あの…昨日は送ってくれてありがとう。今日は部活があるから難しいけど…また明日一緒に帰ってもいいかな?」
「おはよう、海晴。勿論。俺もちょうど誘おうと思ってたところだから嬉しい。」
「ホント?じゃあまた明日、約束だよ!」
「あぁ。」
前言撤回。流石はプレゼンターだ。いつだって俺が一番に望むものをくれる。
俺は今日わくわくとドキドキで眠れないかもしれない。
"ピコーン"
ん、通知?誰から…。
『これは一体どういうことだ?少し話がしたい。』
『今日の昼休み。4階の空き教室に来てくれ。』
メッセージとともに添付されていた写真には、今さっきクラスメイトにも見せられた、女装姿の俺と海晴が並んで歩いている姿が写っている。
「…まじかぁ…。」
前言撤回。今すぐ夢の世界に旅立ちたい。




