第2話:ジョシセイフク
★前回のあらすじ
彼女ができて、カノジョになりました。
第2話
人生というものには挫折と後悔がつきものだ。
しかし、それら出来事から学びを得て、人は成長するのだ。
ところで神様。
「わぁ!イイ感じ!やっぱり紺が似合うと思ったんだ。」
この出来事から俺は一体何を学べばいいのでしょうか?
「赤のチェックとも迷ったけど、髪が少し明るめだから、逆に落ち着いた色のほうがコントラストが映えるね!」
なぁ、教えてくれ。
「カーディガンはライトベージュだから、変に髪色だけが明るくならずに、全体にメリハリが生まれてるし。」
「すごくかわいいよ!諸星くん!」
何故、俺は女子制服を着させられているんだ?
ーー数分前。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「あ、もう17時なんだ…。今日は部活もないし、残ってるのがバレたら先生に怒られちゃう。」
外はまだまだ明るく、部活動生の活気溢れる声が、グラウンドに響き渡っているが、その熱気のなかに俺たちはいない。
部外者は早々に立ち去るべきだろう。
「なら早いとこ帰らないとな。海晴、家どっち?送ってくよ。」
彼氏…もといカノジョとして、彼女の身の安全保障は義務だからな。
「あ、ありがとう。でも、その…。」
「もしかして、何か用事でもあった?それか迎えが来るとか?」
「ううん。そうじゃなくて。」
「諸星くんにお願いがあって。」
「お願い?」
「うん。いい、かな?」
…正直に言ってさっきの今だ。
またトンデモナイ変化球を投球される恐れはなきにしもあらず。
しかしだ。
「勿論。俺にできることなら。」
可愛いは正義。愛する彼女の頼みを断るなど、漢どころか人の風上にも置けぬ所業だ。
故に俺は打席に立つ。
そして一発逆転サヨナラホームランを決めるのだ。
そう思っていた時期が俺にもありました。
「あの…海晴さん、正直勢いのまま着てしまいましたが、これは一体?」
「え?女子制服?」
「さいですか。」
「後は首元だね。やっぱりリボンタイの方がいいよね。先はちょっと長めにして…。ごめんね諸星くん。少しの間動かないでいてね。」
「あ、はい。」
そう言って彼女は俺の首元にリボンを…って、近い近い近い近い!
ヤバい、緊張する。
に、臭いとか大丈夫だよな?鼻息とかかかったらどうしたら…はっ!?息を止めればいいのでは?
「…これでよし!…って、諸星くん大丈夫!?顔真っ青だよ!?」
「我が生涯に一片の悔いなし。」
「諸星くん?諸星くん!」
「…はっ!俺は一体何を…?」
「え、えっと…ホントに大丈夫?カーディガンはやっぱりこの時期だと暑かったよね。」
「いや、大丈夫。もう全然大丈夫だから。」
バッターはノックアウトされかけたが。
「そう?ならいいけど。」
「そ、それよりこの後はどうすんの?写真でも撮る?」
「それはもう撮ったから大丈夫!」
あ、いつの間に。
「なら、見回りの先生が来る前に、早く着替えちゃわないとな。」
「え?何言ってるの?このまま帰るんだよ?」
「Really?」
「あの、外、人、たくさん、OK?」
「?OK。というかなんでカタコト?」
「いやそこは今いいから!…え?俺、この格好で公衆の面前にでるの?マジで?」
「嫌?」
イヤです。
「やっぱりダメ、かな?」
ムリです。
「かわいい、のにな…。」
恥ずかしいです。
「頑張って作ったんだけど…無理強いは良くないもんね。」
…え?
「ちょっ、ちょっと待って?作った、って…もしかしてこれ、海晴の手作り?」
「う、うん。そうだよ?」
「……。…早いとこ帰ろうぜ、海晴。」
「え?でも着替えは?」
「そんなもんいらねーよ。それとも海晴は俺と帰るのいや?」
「い、いやじゃないよ!待ってね、カバンとってくる!」
…皆まで言うな。仕方ないだろう。手作りだぞ!手作り!
想い人の好意を無碍にできる男なんてどこにいる!?
これは、ほら、あれだ。彼女がくれる手編みのセーターやマフラーの制服verとでも思えば…うん。
…それに。
『…頑張ったのにな。』
『やめないよ。好きだから。』
「……。」
「お待たせ!…どうかしたの?」
「いや。なんでもないよ。それじゃあ行こっか。」
「うん!」
前途多難のカノジョ生活1日目。
俺はきっと、何度だって学び直す。
海晴 優衣が好きであると。




