第28話:イブ
★前回のあらすじ
冬休み突入。
12月24日。俺は空木に誘われるがまま、雲山家へと訪れていた。
……いたのだが…。
……相変わらずデカすぎる。というよりも住む次元がもはや違うのではないだろうか。
あの時は燐がいたが、なんでも所用があるとかで少し遅れてくるらしく、今の俺には頼れる味方がいない。
つまり俺がこの家のインターフォンを押さなきゃいけないわけで……。
いや、まぁ一度来たことはあるし、一回目の時のような緊張はそれほどない。
……にしてもだ。もし仮に雲山が出てきたらそれはそれで今の俺にとってはある意味気まずい。
……えぇいままよ!
"ピンポーン"
………。
「あれ?」
"ピンポーン"
………。
「誰もいないのか?」
時間をおいてもう一度インターフォンを押してみるが、変わらず反応はない。
「……しゃあねぇ。一回空木に連絡して…。」
"プルルルルル、プルルルルル"
「ん、着信?誰からだ?」
「……って雲山?」
"ピッ"
「もしもし、雲山か?」
『もしもしぃ〜諸星さん。今お時間大丈夫ですかぁ〜?』
「大丈夫だけど…珍しいな。雲山から電話なんて。」
『ふふ、ちょ〜っと諸星さんに聞きたいことがあったものですからぁ〜。』
「聞きたいこと?」
『はい。……諸星さんは、優衣ちのこと好きですか?』
「好きだよ。……って聞きたいことってまさかそれか?」
「ん〜それもありますけどぉ〜。」
『……この前星見祭りに行った際、芝崎裕大という人に会いましたよね?』
「あ、あぁ。会ったけど…何で知ってんだ?」
『本人がそう話してたので。』
「本人って……。」
『芝崎さんですよ彼が海晴の彼氏に会ったと、そう校内で話しているのを聞いたものですから。』
「な、なるほどな。でそれがどうかしたのか?」
『……聞きました?』
「え?」
『彼、何か言ってました?』
「何か…って。」
……アレのこと、だよな…。
言ってもいいのか……?
でも隠したってしょうがないだろうし…。
「……えっと…。俺が聞いたのは、海晴が中学時代にその……。ストーカーしてたってって…。」
通話越しに、雲山が息を呑む音が聞こえ、俺は咄嗟に慌てて言葉を続けるか。
「鵜呑みにしてるわけじゃねーけどさ。その話が出てから海晴の様子が変っつーか……全然顔も合わせてくれなって。」
「……心配なんだ。」
『………諸星さん。』
「おう。」
『前に私と初めて会った喫茶店を覚えてますか?』
「駅前のあそこだろ?そりゃあ覚えてるけど。」
『今すぐそこに来てください。』
「い、今!?でも俺用事が……。」
『紫鶴と暁月さんには許可を取っています。何より。』
『優衣ちのことが好きなんですよね?』
「……おう。」
「そこにいけば、海晴のためになるんだな。」
『……わかりません。』
『……ですが。』
『これが私にできる、優衣ちと諸星さんへの精一杯です。』
「そんだけ聞ければ十分だ。」
「雲山。」
『はい。』
「ありがとよ。」
『……はい。』
通話を切ると同時、俺は走り出す。
雲山の言う通り、これが良いのか悪いのか、そんなのわからない。
わかりっこない。
でも。
上辺だけ見て、知った気になって。
それでいいって諦めて、逃げ出して。
そんな生き方はもうごめんだ。
「このまま、なんて…ぜってー許さねーからな!」
「……琴葉ちゃん、まだかな。」
私はアールグレイティを片手にスマホを操作する。
開いたメッセージアプリは特に更新はなく、『ごめんなさい少し遅れます。』のメッセージとそれに了承するスタンプでやりとりは止まっている。
「今頃、諸星くんはクリスマスパーティーか…。」
もし諸星くんの誘いを了承していれば自分も今頃諸星くんと一緒に過ごせていたのだろうか。
でもそうなれば私はあの件を話さなければならなくなる。
諸星くんと…離れなければならなくなる。
「……いや。そんなの嫌。」
わかってる。このまま避け続けていたところでそれは結局のところ、問題の引き延ばしにしかならない。
いつかは打ち明けなければならない時が来る。
そんなのわかってるけど。
「相席いいか?」
「……ぇ、ぁ…すみません連れが来るの……で…。」
「……なんで、ここに……。」
「よぉ、久しぶりだな、海晴。」
「諸星、くん……。」




