↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日から俺は君のカノジョ  作者: もち大福


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/35

第26話:リソウ

★前回のあらすじ

間違いだった。

「おはようございますぅ〜、優衣ち。」


「おはよう、琴葉ちゃん。」


「……あ、おはよー琴葉!」


「おはようございますぅ〜。」


「……それじゃあ私行くね。」


「あ…はい。また。」


ーーそれから、私と琴葉ちゃんは友達同士に戻った。


挨拶もするし話もする。一緒にごはんも食べるし遊んだりもする。


……けど、元通りとは行かなかった。


それに……。


「……ねぇ、琴葉大丈夫?」


「無理してない?」


「あの子に何かされたらすぐに言ってよ。」


……私は、あれらの一件以来、周囲からの信頼を失った。


誰もがみんな私を腫れ物のような目で見るようになった。


私の噂は広くまで伝わってしまっているようで…どこにも私の居場所は存在しなかった。










「ただいま。」


私は家に帰るとバタリとソファへと横たわる。


あれから……どこにいても私を責めるような視線を感じる。


学校も家も、誰も彼も私を冷めた目で見ているような気がする。


被害妄想かもしれない。けれど一度ついてしまった感覚はどうしても抜けない。


「……家の方が落ち着く日が来るなんて。」


……今日を過ぎればまた学校。


みんなのところに行かなくちゃいけない。


「……行きたく、ないな…。」


あと一年。…ううん大体の人はそのまま進学するから…。


「4年、か……。」


それまでずっと耐えなきゃいけない。


「…そんなの、ムリだよ……。」


「……逃げたい。」


逃げて、誰も私を知らない場所まで行きたい。












「…え?高校は別のところに行きたい?」


「うん。ここ…なんだけど…。」


後日、私は別の高校へ進学したい旨をお母さんに打ち明けていた。


「……扇ヶ丘学園ね…。」


案の定、お母さんは渋い顔をして、私が差し出したパンフレットをめくる。


「どうしてここがいいの?今後のことを考えたら桜旧代の方が絶対いいじゃない。勉強のレベルだってこっちよりも全然高いし、将来就職にだって有利だし。」


「私…デザイナーになりたいの。」


「だから高校ではそういう服飾に関係することも経験したくて。」


「扇ヶ丘って海外交流とか、文化交流とか、勉強以外にも力入れてるみたいだし。」


「生徒の希望によって、外部教師を招いたりしてくれるみたいなの。」


「桜旧代だったらそんな経験絶対にできない。」


「ねぇ?いいでしょ?」


……お母さんに、学校でのことは言いたくなかった。


でも、これは嘘じゃない。これだって一つの本心だ。


「……デザイナー…ね。」


「私は反対。」


「……え。」


「不安定な仕事だし、そもそも本当に成功するかどうかもわからないじゃない。」


「でも…」


「ねぇ、優衣が服を作るのが好きなのは知ってるわ。」


「でもそれってお仕事にしなくちゃダメなの?」


「服作りならいつでも出来る。もっと安定した職について、趣味の範囲でやっていくって言うのでもいいんじゃないの?」


「趣味……。」


「……もう少し冷静に将来を見据えて考えなさい。」


「それじゃ私また会社に戻らないといけ」


「嘘つき。」


「え?」


「応援するって言ったのに。」


「やっぱりお母さんは嘘つきだ。」


「やっぱりお母さんは私のことなんて好きじゃないんだ。」


「いっつもそう。全部全部勝手に決めて、私の話なんてちっとも聞いてくれない。」


「子どもだと思って軽く見てるんでしょ?はいはいって適当に肯定して、都合が悪くなったら正論並べて自分の良い方に持っていこうとして。」


「ちょっと優衣?あなたどうしちゃったの?」


「触らないで。」


「…っ。」


「私のことはどうでもいいんでしょ?家にだってほとんど帰ってこないし、顔だって会わせないもんね。」


「ねぇ、早く大好きな会社に行ってきたら?」


「優衣いい加減にしなさい。」


「………。」


「優衣!」


"プルルルルル、プルルルルル"


「…っあぁもう!」


「……帰ってきたらまた話しましょう。」


「話すことなんてないよ。」


「優衣!」


"ガチャリ"











結局、先に折れたのはお母さんの方だった。


あまりにも頑なな私の態度に根負けしたのか、勉強もしっかりこなすのならという条件付きで、私は扇ヶ丘学園への進学を許された。


「ねぇ優衣。私はね優衣のことちゃんと大切な子どもだってそう思ってる。」


「それだけは信じてちょうだい。」


嘘つき。


「……うん。わかってるよ。お母さん。」


「ごめんね、私もカッとなって言い過ぎちゃった。」


でもいいよ。


だって…お母さんがお母さんでいる間は、私から離れたりしないから。











それから先、中学でのことはよく覚えていない。


琴葉ちゃんとは相変わらず友達だった。


というより、琴葉ちゃん以外とはほとんど関わらなかった。


イベント行事も、行っても気まずいだけだしと思って、風邪だと偽って全て休んだ。


……学校に行かなかった時間は全部服作りに費やした。


気持ち的にもその方が楽だったし、何より服だけは私を裏切らない。


どれだけ好きを向けても拒絶されない。好きを向けた分だけ形を成してくれる。


私が好きでいる限り、それは終わらない。


そうだ。それでいいんだ。


もう、誰も好きにならなくていい。


そうすれば誰も傷つかなくて済む。


別に好きじゃなくたって一緒にいられる。


独りぼっちにはならない。


だからそれでいいの。


それで……良かったの。


……それ、なのに。


『それの何がカッコ悪いんだよ。』


『頑張ること、マジになることの何がカッコ悪いんだよ。』


『絶対に俺が何とかしてやるから、任せとけ!』


『お前は自身はどうなんだよ。』


『お前はさ、もうちょっと周りを頼れよ。言い出しっぺだから遠慮してんだろうけどさ。』


『絶対に俺が何とかしてやるから、任せとけ!』





私は彼を好きになってしまった。


ううん。それだけならまだ良かった。


奥底に押さえ込むことができた。


ねぇ、それなのにどうして?








『やめないよ。好きだから。』










どうして君は私を好きになっちゃったの?


そんなの、諦められるわけがない。


手放せるわけがない。


でもどうしたらいいんだろう?


……ずっと一緒にいてほしい。好きでいてほしい。


けどそれっていつまで続くの?


本当に彼は私を好きでいてくれるの?


彼の好きって言葉は本当なの?


私はそれを信じられるの?


「……ほしい。」


証明が、ほしい。


私を確実に好きだという証明がほしい。


でも言葉じゃだめ。


だからといって芝崎くんや琴葉ちゃんみたいなことはもうごめん。


だったら……どうすれば……。


「……あぁ。そうだ。」


ある。一つだけ。


目に見えてわかる形で私に好きを示してくれて、それでいて二人にしたみたいにならない、とっておきの方法が。
















ごめんね、諸星くん。


私ね、知ってるよ。


諸星くんが私の"彼氏"でいたいことも。


カッコつけたいことも、男らしくありたいことも。


かわいい格好よりもカッコいい格好がいいことも。


女装なんて、本当は心底嫌なことも。


でも……。


「我慢してくれてるんだよね。」


私のことが好きだから。


ねぇ、これは証明なんだよ。


私のことが好きな証明。


君が一つ嫌を我慢する度に、私は君からの好きが確かなものだと確信できる。


大丈夫だと、そう思えるの。


だからお願い。









今はまだ、私のカノジョでいて。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。