第18話:キミ
★前回のあらすじ
回想編その1。
ーー高校1年生。7月。
新たな出会いを経て、ある程度の人間関係が築かれつつある頃。
俺は、俺たちは、学生にとっての一大イベントを迎えていた。
学園祭。
生徒が主体となり多種多様なパフォーマンスやコンテンツを展示・発表する学校行事の一つであり、クラスメイトの意外な側面や特技などが垣間見えたり、普段関わりのない人物との交流が生まれるなど、コミュニティ内の結束を強めるための儀式でもある。
故に本来であれば皆が一丸となって目標に突き進むのが望ましいのだが…。
「はぁ、衣装班とかだるぅ。」
「てか俺裁縫とかできねーよ。」
「それなー。」
そう上手くは行かないらしい。
この扇ヶ丘学園の学園祭では、主に展示班・神輿班・衣装班の三つの班に別れ活動することとなっている。
…それ以外にも演劇部監修の劇等といった部活動生による展示や出し物、個人で立候補する音楽ライブやダンスパフォーマンス、実行委員が取り仕切るコンテスト等などがあるのだが…これについては今は一旦置いておくとしよう。
展示班はカフェやお化け焼き、屋台といった、出店に対する企画運営に携わる班で、一番人気があり立候補者の多い班だ。
次に神輿班。我が扇ヶ丘学園では初日に開祭式の催しとして、生徒全員が衣装を纏い、神輿を担ぎ街を練り歩くパレードが存在する。
そのため各クラス毎にテーマを決め、衣装と神輿を作成することが義務付けられており、神輿班はそのうちの神輿造りを担当する。
こちらは男子や創作系に熱を上げる女子に人気のある班で、場合によっては一番やる気のある生徒が集まる班でもある。
そして最後に衣装班。文字通り衣装と神輿のうち、衣装作りを担当する班なのだが…。
「んじゃあ、何か100均で良さげなの見繕うか?後は皆で服でも持ち寄って組み合わせればそれっぽいのできんだろ。」
この通り、他と比べやる気のない生徒が集まりがちなのだ。
できない人間が多い。派手さがなくて地味。作業がだるいetc…とやる気になれない理由は様々なあるのだが、やはり一番の理由は
「つーか、もうちょっと賞品どうにかならんもんかねー。」
「一人につき、飲み物1本だろ?他2つとの差よ。」
「5000円分のギフトカードとQUOカードでしょ?」
「何で衣装だけ現物なんだよ。金くれ金。」
そう。扇ヶ丘学園の学園祭では展示・神輿・衣装…それぞれに審査が設けられており、無事学園1位に輝いたクラスには豪華景品が贈られることとなっている。
展示で1位になれば5000円分のギフトカードが。
神輿で1位になれば5000円分のQUOカードが。
衣装で1位になれば好きな飲料水1本が。
…正直俺もこの差はどうかと思う。他になかったのかと教職員に小一時間ほど問い詰めたいところだ。
…が。
「というかもう今井くんの案で良くない?」
「さんせー。」
もう少しやる気を出してもいいんじゃなかろうか。
そりゃあ大変だし見返りは他と比べれば少ないけど…。
「じゃあ方針も決まったことだし、今日は解散ということで。」
「OK。明美帰ろ。」
「うん。」
「い、いやいやいや!ちょっと待った!」
「ん?何だよ諸星。」
「何だよもなにも、そもそもまだ全員集まってないだろ。」
「あー海晴さんのこと?」
「あ、じゃあ私、優衣に連絡しとくね。」
「お、サンキュー。」
「いや、そうじゃなくて!ちゃんと全員の意見を聞かないと。」
「えー、別によくね?」
「ねー。」
「よくないだろ、普通に。」
"ガラッ"
「ごめんね、遅くなっちゃって。今どんな感じかな?」
「あ、優衣。おつー。」
「海晴さん。」
「今丁度方針が決まったて解散するとこ。」
「えっ!?もう決まったの?」
「うん。皆で良さげなの持ち寄って、必要な部分は100均で買い足すってことで話まとまったから。優衣もそれっぽいのあったら持ってきてね。」
海晴優衣。あまり話す機会もないし、関わりも薄いため、正直彼女のことはよく知らない。
ただこういった場に置いて、あまり積極的に意見を押し出しているのを見たことがないので、さして代わり映えもしないまま、このまま解散に…
「…それって、あり合わせの既製品で見繕うってこと?」
「え?まぁそういうことになるのかな…?」
「服を作らずに?」
「だって俺裁縫なんてできねーし。」
「服なんて作ったことないしな。」
「めんどくさそうだよね。」
「全員分用意しなきゃでしょ?いや無理すぎる。」
「っそんな!勿体ないよ!せっかくの機会なんだしさ、皆で頑張って1からやってみよう?私、服飾のことなら自信あるし。」
「確かに最初は大変だろうけど、慣れてくればきっと楽しいよ!」
「それに手ずから作った方が達成感も生まれると思うし。」
「皆で1位目指してやってみよう?」
…なんというか、意外だな。
いつも話し合いの場では一歩引いた立場から、皆の意見に賛同しているだけだったし。
確か海晴って手芸部なんだっけ?
あれか?好きなことになると人が変わったようになるっていうやつか?
「…まぁ海晴もこう言ってることだしさ、もう一度皆で話し合って…」
「えー、手作りとかめんど。」
「つーか海晴さんガチじゃん、ウケる。」
「え、で、でも…皆で協力すればいいのが絶対…」
「意外。優衣ってこういうのマジでやるタイプ?」
「なんかいつものイメージと違うよね。」
「ねー。」
「おいお前ら…海晴の一旦話を…」
「てかそんなマジにやる必要なくね?」
「賞品もぱっとしないしなー。」
「1位なんて絶対無理だし。本気でやるだけ無駄だよな。」
「ていうかダサくね?なんか必死なヤツみたいじゃん。」
「こういうのにマジになるのってなんか恥ずいしねー。」
「カッコつかないよな。頑張ったって負けることなんか目に見えてるし。」
…無駄?ダサい?恥ずかしい?カッコ悪い?
必死になることが?
本気でやることが?
頑張ることが?
一体…
「それの何がカッコ悪いんだよ。」
「は?」
「頑張ること、マジになることの何がカッコ悪いんだよ。」
「えっと…諸星くん?」
「…っいいじゃねーか!やろうぜ!1から服作り!」
「はぁ!?お前まで急に何言ってんだよ?」
「いいじゃんいいじゃん。人生挑戦することも大事だろ。」
「だからってな…。」
「別に今井なんて、準備にそんな時間かかんねーだろ?予算だって、あんま使うわけじゃないし。」
「だったら、ギリギリまで頑張ってみようぜ!」
「無理なら、その時点で切り替えればいいんだしさ!」
「…まぁ、そういうことなら…。」
「げー…マジかよ…。」
「やるだけやってみっか…。」
「優衣もそれでいい?」
「う、うん!」
「それじゃあ、予算とデザインについて話し合うか。」
「おう。」
"くいっ"
「…ん?どうした?海晴?」
「その…諸星くん。」
「さっきはありがとう。私のこと、気遣ってくれたん、だよね?」
「あー。まぁそれもあるけど…。」
「…やっぱ最初から諦めるのはねーよなって。」
「え?」
「なんでもねーよ。」
「優衣ー、布なんだけどさー。」
「あ、うん!この感じだったらここは…」
ーーその後。
デザインや役割分担等、方針をまとめた俺たち衣装班は、経験者である海晴の采配の元、慣れない作業に手間取りながらも、それなりに順調に事を進行させていた。
しかし。
物事には総じてトラブルが付き纏うものだ。
それは勿論。
「優衣!」
「…?どうしたの?」
「あのね、大変なの。実は…」
「…え…?」
俺たちも例外ではない。
次回更新は9月17(木) になります。




