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今日から俺は君のカノジョ  作者: もち大福


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17/35

第17話:ウソツキ

★前回のあらすじ

よろしい。ならば特訓だ!

俺は、昔から好奇心旺盛な奴だったように思う。


友達がサッカーの試合で得点を決めれば、あんな風にカッコよくシュートをしたいとサッカーを始め、TVで野球選手が活躍すれば、野球がやりたいと言い出す。


自分もあんな風にカッコよくなりたい、注目されたい。


そんな漠然とした思いをいつも抱えていた。


でも俺は










そのための努力が何より嫌いだった。








ーー14年前。


「母ちゃん!俺、プロゲーマーになりたい!知ってる?プロゲーマーってめっちゃお金貰えるんだぜ。ゲームしてるだけでお金も貰えるなんて、最強じゃね!?」


「…はぁ。蒼也、あなた前はサッカー選手になるって言ってたじゃない。アレはどうしたのよ?」


「やめた。なんか思ってたのと違うし、つまんねーし。別に友達がやってたから興味があっただけで、そもそも俺、元々サッカーそんな好きじゃなかったし。」


「蒼也、あなたね…」


「でも俺ゲームは好きだし!だから今度は絶対…」


「そう言って、いつも長続きしないじゃない。」


「それは…そりゃあ好きじゃないことなんて、続かなくて当然じゃん!次は、次は絶対大丈夫だから!」


「いい加減にしなさい。」


「…っ!」


「蒼也、あなたはいつもそう。失敗や周りとの差をそうやって言い訳ばかりして、知らん顔して、すぐ諦める。」


「言っとくけどね。」


「言い訳重ねて、自分から逃げてばかりいるような人間は、この先何をやったって上手くなんていかないわよ。」


「…何だよ、それ…。」


「…っ!もういいよ!母ちゃんのケチ!わからず屋!べーっだ!」


「あ、こらっ蒼也!どこ行くの!?」








ーー4年前。暁月家にて。


「…母ちゃんのバカ。何だよなんだよ、えらっそうに!」


「だが、沙代おばさんの言っていることは正しいと思う。」


「っ燐まで母ちゃんの味方すんのかよ!」


「オレは自分の意見を述べただけだ。」


「ちぇ。どいつもこいつも上から目線で説教しやがって。お前はいいよなぁ、才能があって。あーあ、俺もお前みたいに才能があればなぁ。」


「蒼也…」


「燐。」


「お祖父様。」


「そろそろ稽古を再開する。」


「はい。…すまない蒼也。」


「ん?あぁ。じゃあな。」


「あぁ、また明日学校で。」


才能があれば。


この頃の俺はそればかり考えていた。


才能があれば、もっと上手くなれるのに。


才能があれば、もっと活躍できるのに。


才能があれば、こんな思いしなくていいのに。


才能があれば、失敗なんてしなくてすむのに。


才能があれば、俺も










燐みたいな、特別な人間になれるのに。












ーー3年前。中学校入学式後、帰り道にて。


「んーー、やっと終わったぁ。こういう式ってだるいよなあ。」


「そうか?」


「お前は代表挨拶があったからアレかもしんねーけど、その他大勢はただ話聞いてるだけだからそうなの。」


「そういうものなのか。」


「そうそう。…あ、そういや燐、お前部活どうすんの?やっぱ剣道部?」


「あぁ。」


「だよなー。…俺も剣道部入ろっかな。」


「興味があるのか。」


「まぁ、そこそこ。今鬼滅◯刃にハマっててさ、あぁいうのやってみてーよな。」


「読んだことがないからわからない。」


「え!?燐、鬼滅読んだことねーの?勿体ねー。今度うち来いよ、漫画貸してやるからさ。あ、どうせならアニメも観ようぜ。ネトフリに入ってた気がするし。」


「あぁ、ありがとう。楽しみにしてる。」





ーー3年前。8月にて。


"コンコン"


「蒼也、入るぞ。」


『おう。』


"ガチャリ"


「失礼する。」


「おー、今手が離せねーから適当に…」


「蒼也。最近部活に顔を出していないようだが何故だ。」


"カチャッ"


"♪テッテッテ テテテテテテテレレーン"


「あー!チクショウ当たったー!最初からやり直しかよ…。」


「蒼也。」


「…んだよ。」


「最近部活に顔を出していないようだが何故だと聞いている。」


「…別に、飽きたんだよ。」


「飽きた?」


「そう。練習も地味だし。カッコいい技とかあるわけでもないし。」


「それに、燐みたいな才能があるわけじゃないし。」


「つーかいいだろ?俺は燐と違って大会に出るわけじゃないし、俺一人が練習に参加しないぐらい、何の影響もねーだろ。」


「俺は今新作のゲームをクリアするのに忙しいの。」


「蒼也は、剣道への興味は失ったのか。」


「…元々漫画に影響されただけで、大して好きでもなかったよ。」


「そうか。」


「話はそんだけか?だったら今日はもう…」


「それでは次にそのゲームに対する興味を失うのか。」


「…はぁ?」


「先程のはゲームオーバー音というものだろう。」


「そうだけど、それがどう関係あるっていうんだよ。」


「ゲームオーバーとはつまり課された課題を失敗したということだろう。」


「だ、か、ら、それがどう関係あるかって聞いてんだよ。」


「お前はいつもそうだ。」


「失敗したものや力量差を感じるものからすぐ目を逸らす。」


「事実を受け止めようとせず、逃げ道を探す。」


「本気じゃなかった。好きじゃないから、興味がないからやる気が出なかった。元々やめようと思っていた。自分に向いていない。才能がない。」


「出来ない自分を認めず、興味関心を失ったことを理由に他に縋る。」


「いいか、蒼也。それではいつまでも…」


"ガシッ!"


「何だよ、お前さ。結局説教しにきたわけ?」


「…だったら帰れよ。今すぐに。」


「俺が何をどうしようが俺の勝手だろ。上から目線で口出してくんじゃねーよ。」


"ゴツンッ"


「っいっっったぁぁぁぁ!おまっ、はぁ!?この状況で頭突きする奴があるかぁ!?」


「オレが何をしようがオレの勝手だ。」


「それ俺の台詞!」


「いいか、蒼也。」


「無視かよ!」


「オレはお前を説教しに来たんじゃない。」


「今までの言動や行動、そして先の発言。」


「オレはお前に対し非常に憤慨している。」


「何が飽きただ、何が才能だ。対して努力もしていないくせに、一丁前に悟った風を気取り、結局は逃げているだけじゃないか、この軟弱者!」


「はぁ!?っざけんなよ!」


「巫山戯てなどいない。至極真面目に意見を述べている。」


「そういうこったねーんだよ!あーもう!お前らはいっつもそうだ!自分たちが正しいですみたいな顔しやがって!ちょっとは相手の立場になって考えたことがあんのかよ!?」


「努力が足りない、頑張りが足りない、もっと頑張れだの、努力すれば、諦めなければきっとできるだの!」


「そんなのはな!元から才能がある奴だけなんだよ!やってできる奴は最初からそういう下地がある奴だけなんだよ!」


「お前はいいよな才能があって!あいにくと俺はお前と違って凡人何でね。お前みたいに何やったって成功する奴とは訳が違うんだよ!」


"ガシッ!"


「っ!」


「巫山戯るな、はこちらの台詞だ、蒼也。」


「才能がある?何をやったって成功する?」


「蒼也。お前は腰抜けなだけではなく、相当な節穴らしいな。」


「確かに人には得意不得意がある。どうしたって埋められない差だって存在する。それを才能と呼ぶのであれば、そうなのだろう。」


「だがな。」


「失敗しない人間も、必ず成功する人間も決して存在しない。」


「いいか蒼也。」


「オレはな、1の成功を得るため100の失敗を乗り越えている。」


「お前が1の失敗を経験している間に、オレは1000の失敗を経験している。」


「お前と違う…?当たり前だ。」


「オレはお前と違い、幾度となく失敗を繰り返し、その度に立ち向かい、経験を、努力を重ねてきた。」


「ただの一度足りとも、それを行わぬお前とでは、積み重ねてきた重みに、天と地ほどの差があるのは当然の帰結。」


「その積み重ねを見ようともせず、結果だけを見て才能の差だと宣っているのなら笑止千万。」


「誰も言わぬのならオレが言ってやろう。」


「お前はただ、言い訳を重ね、失敗を怖がっているだけの…」


「負け犬だ。」


初めてだった。いや、出会った当初は俺が気にしていなかっただけで、こんな目を向けられたこともあったのかもしれない。


でも、ソレをしっかりと認識したのは、この時が初めてだった。


苛立ち、不満、失望…そして












傷心し、悲嘆に暮れた眼差し。


「…ぁ…。」


俺は、一番大切な友達を傷つけた。


他でもない…俺自身の弱さで。


「燐、その…」


「蒼也。」


「練習にはお前が来たいと思った時に来ればいい。」


「…燐。」


「だが」


「来週の大会。それだけは来てくれないか?」


「…え…?」


「ダメだろうか?」


「…いや、いい、けど…そうじゃなくてっ!」


「ありがとう。…蒼也。」


「また明日。」


"ガチャリ"


「…燐…。」


俺は、どうすればいいのかわからなかった。


ただ、友達を傷つけてしまったという事実だけが、深く、深く突き刺さった。



ー3年前。剣道大会当日。諸星家にて。


「蒼也ー。今日大会の日じゃなかったの?」


「うん。」


「燐君、大会に出るんでしょう?いいの?応援に行かなくて。」


「……。」


「何があったかは知らないけどね、そうやって悩んで縮こまるくらいなら、まず行動してみなさい。あなた考えるよりも身体動かす方が得意でしょう?」


「母さん、こっちは真剣に悩んでんだけど。」


「そう。で?その悩みとやらはそうしていたら解決するのかしら?」


「…それは…。」


「ほら、掃除の邪魔だからどいたどいた。」


「……。」



『何が飽きただ、何が才能だ。対して努力もしていないくせに、一丁前に悟った風を気取り、結局は逃げているだけじゃないか、この軟弱者!』


『お前はただ、言い訳を重ね、失敗を怖がっているだけの…』


『負け犬だ。』


『来週の大会。それだけは来てくれないか?』



「…母さん。俺ちょっと出かけてくる。」


「…そう。いってらっしゃい。…蒼也。」


「ん?」


「頑張ってね。」


「…おう。」



ー3年前。剣道大会会場にて。


"パンッ!"


「1本!」


「っくぅ、惜しい。」


「流石3年生…上手いところで引いてきますね。」


「せ、先輩!」


「諸星くん!?」


「お前、今日来れないって…」


「…はぁ…はぁ…す…すみ、ませ…ん。はぁ…はぁ…。」


「お、おう。取り敢えず話は後で聞くとして、ほら水。」


「あ、あり、がと…はぁ…ござ、ぃ…ます。」


「…ふー…。あ、あの!それで試合は!?どうなってますか!?」


「お、落ち着けって…。…先鋒で勝って、次鋒、中堅で負けてるから、次副将戦…燐が負けたらうちの負けが決定する。」


「でもって、今副将戦は相手が1本先取してるから、下手したら次の試合で勝負が決まるね。」


「…燐…。」


"パッ!"


「始め!」


俺は食い入るように試合を見ていた。


両者の間には鋭い緊張が走り、互いに間合いを牽制し合う。


一方が刃を振り下ろせば、もう一方がそれを受け流し、反撃の一手を繰り出す。


どちらも互角。互いに譲らず、一歩も引かず、前へ出る。


…もし。


もし俺が、あの場にいたのなら。


俺は、彼らのような動きが出来ただろうか。


否。俺はあの場に立っていない。


それが答えだ。


俺は何故、あの場に立てないのだろう。


才能がないから?努力が足りないから?


きっとどれも当てはまるのだろう。


いくら俺に才能があったところで、俺はあそこには立てない。


いくら俺が努力をしたところで、俺はあそこには立てない。


だって、彼らは才能のあるなしであそこには立っていない。


だって、俺が努力を重ねている間も、彼らは努力を惜しまない。


「…あぁ、そういうことか。」


ようやく気づいた。


俺が何故、言い訳を重ね続けてきたのか。


俺が何故、逃げてばかりいたのか。


俺が何故、あんなことを言ったのか。


お前の言うとおりだよ、燐。


俺は怖かったんだ。


頑張っても、それでも届かない場所があると知ることが。


頑張っても、それが全部無意味であると知ることが。


俺は…


自分の無力さを痛感することが怖かったんだんだ。


「…はは…。」


「カッコわりぃ。」


それでお前のことを傷つけてちゃ、世話ないのにな。


「…っ!」


「頑張れ!燐!」


「……!」


「ちょっ、諸星くん!?剣道は声援禁止だから!」


「す、すみません…。」


なぁ、燐。


俺、お前に言いたいことがたくさんあるんだ。


"パンッ!"


「1本!」


「…っし、これで両者1本ずつ!」


「…暁月くん…!」


…頑張れ。燐…!


"パッ!"


「始め!」









"ジャーッ!"


"キュッ"


「…来てくれたんだな。蒼也。」


「あ、あぁ。」


「…その、残念、だったな。で、でもすげーじゃねぇか。対戦相手3年生だったんだろ?」


…あれ?俺何言ってんだ?


「それなのに互角に渡り合って、挙句の果て、1本とるなんて」


違う。俺が言いたかったのはこんなことじゃなくて…


「やっぱり燐は…」


「…燐、は…」


「才能がある。か?」


「…っ、ちが、そうじゃ…」


「うん。」


「…!…そうじゃないんだ。」


「…俺、燐のことずっと特別な存在なんだって、思ってたんだ。」


「…うん。」


「頭も良くて、運動もできて、みんなにも信頼されてて、いつだって真っ直ぐで。」


「正しい人間なんだって。…そう、思ってたんだ。」


「うん。」


「俺は、そんなお前が羨ましくて、眩しくて…」


「燐にできるのに、何で俺にできないんだろうって、比べて、嫉妬して。」


「うん。」


「…俺はずっと諦めたふりをして、逃げてたんだ。」


「自分が」


「誰かに比べて劣った人間であるって認めることが怖かった。」


「自分も」


「特別な人間なんだって思いたかった。」


「うん。」


「でも、結局…何も変わらなかった。」


「むしろ、自分がずっと惨めな存在に思えてきたよ。」


「…俺が、今までやってきたことって…なんだったんだろうな…。」


「蒼也…。」


「…燐。」


「ごめん。」


「俺は、お前のこと何も見てなかった。」


「こうだって自分の価値観の中で押し決めて、お前の積み上げてきたものを否定した。」


「本当にごめん。」


「………。」


「蒼也。」


「…っ!」


「…顔を、上げてくれないか。」


「……。」


「…蒼也、オレはな、嬉しかったんだ。お前が剣道をやりたいと言ってくれたことが。」


「…ぇ…。」


「漫画も、ゲームも、サッカーも…いつだってお前の好奇心の先に、オレの世界は入っていなかった。」


「…だから、自分の好きなものに興味を抱いてくれてことが嬉しかったんだ。」


「…結局、長くは続かなかったがな。」


「っう…ご、ごめん…。」


「謝る必要などないさ。オレが勝手に期待し舞い上がっていただけだ。」


「ただ、オレの今までをなかったかのようにされるのは、流石に堪えた。」


「……。」


「なぁ、蒼也。」


「……?」


「今日の結果を見て、お前はオレの努力は無意味だったと思うか?」


「……わかんねぇ。」


「だってお前、俺が見たときには強かったし。」


「……。」


「…だから、次。…次もっ、見に来っから!」


「そん時にさ…見せてくれよ。」


「努力の成果ってやつ。」


「あぁ、それは構わないが…対戦相手は引退している故、今回と比較するという意味合いであればそれは難しいと…」


「そういうこっちゃねーんだよ!ホントそういうとこだぞお前!」


「…はぁ、もう何か色々悩んでたこっちがバカらしくなってくる…。」


「蒼也。」


「あ?なんだよ?」


「先日はすまなかった。」


「…いいよ。つーかあれは俺が悪いみたいところあるし。」


「だとしてもだ。」


「だとするのかよ。」


「言葉が過ぎた。」


「…はぁ、んじゃ、お互いに悪いところがありましたってことで。」


「蒼也。」


「っ。まだ何かあんのかよ。」


「お前がやってきたことへの意味付けは、これからの行動次第だ。」


「……。」


「だが少なくともオレは」


「先の喧嘩も、今の会話も、無駄で無意味なものとは到底思えない。」


「お前とこうして話せて良かった。」


「…っホント…」


「そういうとこだよなぁ…。」


「…なぁ、燐。」


「なんだ。」


「俺、決めた。」


「もしまた、好きと呼べるものに出会えたなら。」


「そん時は、絶対諦めねー!」


「何があっても逃げずに向き合う。」


「だからちゃんと見とけよ!俺の勇姿を!」


「あぁ。楽しみにしてる。」












ーーそして、新たな決意を胸にかがけてからはや三年後。


俺は君に出会ったんだ。


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