第15話:キュウギタイカイ
★前回のあらすじ
友達ができました。
「それじゃあ、再来週の球技大会のメンバーはこれで決定とする。」
「球技大会とかだるぅ。ねー優衣。…優衣?」
「…み、みのりちゃん…ど、どどど、どうしよう…。」
「あー…優衣、運動神経ダメダメだもんね。」
「卓球とかの個人技ならまだ自己責任で何とかなるし、バスケも端っこにいればみんなの邪魔にならないから、まだマシなのに…。」
「…よりにもよって。」
女子バレー:鈴川・佐藤・宮乃・原・小林・海晴
「バレーとはねぇ…。」
「うぅ……。」
「まぁまぁ、ただの行事だし気楽にいこうよ。」
「で、でも宮乃さんとか、小林さんって…ほら。」
「あー、確かこういうことに結構ガチな感じだったっけ?」
「そうなんだよ…もー、どうしたらいいのかな…。」
「んー…なら特訓、とか?」
「特訓?」
「そ。丁度いい教師もいることだしね。」
「?」
ーー放課後 体育館にて
「…えいっ!」
"スカッ"
"ッポス"
「………。」
「………。」
「……ふ、ふふ…あはははは!」
「おいっ、笑うなよ!」
「…ふふ、…だってさっ…っく、サーブだよ?そりゃあ初心者だから、上手く飛ばないとかは良くあることだけどさ、ふふ、まさか手に当たりもしないなんて…あはは。」
「そういうことだってあるんだよ、多分!海晴大丈夫だ。練習すればきっとできるようになるさ。」
「サーブをスカすくらい気にすんな。むしろ失敗から人は成長するんだ、うん!」
「やめて…諸星くん…逆に居た堪れない気持ちになるから…。」
「うぇ!?な、なんで!?」
「あははははは!」
「はーおなか痛い。これで明日筋肉痛になったら海晴さんのせいだから。」
「そっち勝手に笑ったんでしょ。それを私のせいにしないでよ。」
「製造者責任ってあると思うんだよね。」
「あるわけないでしょ。」
「おーい、お待たせ。」
「おかえり、諸星くん。」
「何とってきたの?」
「バレーボール。さっきのスポンジ型と違って硬いやつな。重さもさっきのよりあるし、もしかしたらこっちの方が当て易いんじゃないかと思って。」
「打ちやすいじゃなくて、当て易いってところに、諦めと妥協が見えるよね。」
「っう!」
「み、海晴?大丈夫だ、人には向き不向きがあるからな。そんな気に病むことじゃないさ。」
「お願い…諸星くん、もう喋らないで。」
「なんで!?」
「あはは。…それよりもこの学校、普段部活動生以外は17時以降の居残り禁止だけど、大丈夫なの?」
「ん、あぁ。球技大会とか、そういう行事があるときは、その2週間前に限り、特別に部活動生以外も居残っていいってなってるんだ。」
「ふーん。」
「勿論、行事に関係あることでならって、条件付きでな。」
「よしっ。休憩が終わったら、またサーブ練から始めようぜ。」
「う、うん!」
「それじゃあ俺、ネット張ってくるな。目安があった方がわかりやすいだろ?」
「あ、私手伝うよ。」
「大丈夫。海晴は今のうちに休んで体力温存しとけよ。」
「わ、わかった。でも手伝いが必要だったらいつでも言ってね?」
「おう!」
「……ねぇ、ずっと思ってたんだけど、なんで空木くんがここにいるの。」
「え、酷くない?そもそも、最初に海晴さんの友達から、君のコーチをしてほしいって頼まれたのは僕だからね。」
「それを君のためを思って、君の彼氏である諸星君に役目を譲ってあげたんじゃないか。」
「…そんなこと言って、面倒くさかっただけでしょ?」
「うん。」
「…私のこと、嫌いなんでしょ。」
「うん。」
「…だったら帰ればいいのに。というか帰って。」
「えぇー。確かに君のことは嫌いだし、面倒くさいから帰りたいけど、僕も頼まれた立場としては、最後まで行く末を見届けないと。」
「…本音は?」
「君が無様を晒す姿が面白くて仕方がない。」
「帰って、今すぐに。」
「お断りしまーす。」
「うつ…」
「おーい!そろそろ始めようぜ!」
「ほら、呼んでるよ。」
「…っもう!」
「…ねぇ、空木くん。」
「なに?」
「…あの事、知ってんだよね。」
「えぇー、どのことかなぁ?」
「とぼけないで。」
「…うん。知ってるよ。全部じゃないけどね。」
「…言わないの?」
「誰に?」
「…諸星くん。」
「…なんで僕が言う必要あるのさ。」
「だって…。」
「自分のことくらい、自分で話なよ。僕には関係ない。」
「…そう。」
「…空木くん。…ありがとう。」
「……。」
「馬鹿じゃないの。」
「ボールは高すぎず、真上じゃなくて、身体の少し前に上げる感じで。」
「こ、こう?」
「そう!そんな感じ!それじゃあ腕を上げて、肘を引いて…そう。そのポーズ。で、そのまま足を前に出して身体ごと回転させる感じで…。」
「わ、わっ…えっと…こ、こう?」
「おう!バッチリ!っし、じゃあ早速つなげてやってみるか。」
「う、うん。」
"チョンッ"
"…ットン"
「も、諸星くん…。」
「飛んだ、飛んだよ!ボールが前に飛んだよ!」
「おう!やったな海晴!」
「よーし!この調子でガンガン行こうぜ!」
「うん!」
…俺、今めちゃくちゃ青春してないか?
いや元々青春してたけど。またこう…違った感じっつーか。
何というか…誰かに何かを教えるって、いいな。
というか俺、向いてるんじゃないか?天職なんじゃないか?
うん。俺将来教師になるわ。俺、ご◯せん好きだし。
"キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン"
「…あ。」
「時間か。今日はこの辺にしとこうぜ。」
「うん。」
「明日はどうする?」
俺としては是非とも一緒に…
「明日はクラスの子と練習があるからやめとくね。」
「そっか。」
そっか…。うん、チームメイトと交流を深めるのも必要だからな。…非常に残念でならないが。
「頑張れよ。大丈夫、自信もてよ。最初と比べてすげー成長してるから。」
「最初が低すぎるだけだと思うけどね。」
「う、つ、ぎー?」
「あはは。」
「諸星くん。今日はありがとう。私、頑張るよ!」
「あぁ。」
「海晴さん。真面目にやってる?」
「や、やってるよ。」
「ならもう少し積極的に拾いにいってくれないかな?」
「で、でも私下手だから上手く上げられないし…。」
「それと拾いにいかないのは違くない?」
「…そ、の…。」
「ちょ、ちょっと、真尋。優衣ちゃんは運動苦手なんだから仕方ないって。」
「そうそう、うちらがその分頑張ればいいんだからさ。」
「…ねぇ、海晴さん。」
「あなたは迷惑をかけないようにとか考えてるんだろうけど、それ、独り善がりな考えだってわかってる?」
「……!」
「出来ないのは別にいいよ。でもやろうともしないっていうのはどうなの?」
「真尋、あんた言い過ぎだよ。」
「…ごめん。練習再開しよ。」
「…うん。…優衣ちゃん、気にしなくていいからね?真尋、勝負事になるとつい熱くなっちゃうから…。」
「…わ、私…っお手洗いに行ってくる!」
「優衣ちゃん!?」
「…私の考えって、独り善がりなのかな。」
「今更気づいたの?」
「っ!?う、空木くん!?なんでっ?」
「なんでってここ、卓球場の前だよ。ほら、僕卓球に出ることになってるからさ、その練習。」
「空木くん、練習とかするんだ。」
「練習も面倒くさいけど、全く参加意志を見せないのも、それはそれで色々言われて面倒くさいしね。」
「で、君が独り善がりかって?そんなの元からじゃん。今更何気にしてるんだか。」
「大方、下手だからせめて迷惑かけないように、隅っこにいよーとか考えてたんでしょ?」
「…空木くん…。」
「…ちょっとこっちのことを把握しすぎてて、気持ち悪い。」
「君が!わかりやすすぎるの!」
「…はぁ、それじゃあ僕もう行くから。暇じゃないんだよこっちも。」
「…私、どうしたらいいのかな。」
「知らないよそんなの。自分で考えたら?」
「……。」
「…言っとくけどさ。」
「相手が何も言わないで自分を理解してくれるっていうなら、自意識過剰も甚だしいよ。」
「……。」
「そもそもバレーはチーム競技でしょ?君はチームメイトのことをちゃんと理解しているわけ?」
「理解もしない、受け入れもしない。お互いにそれじゃあ、協力なんて夢のまた夢だね。」
「…わかってる。わかってるよ、そんなこと。」
「じゃあやりなよ。」
「それとも、諸星君に言ってた頑張るって言葉は、ただの体裁だったのかな?」
「……私…。」
「…もう一度、みんなと話してくる。」
「そう。」
「…空木くん。…卓球、頑張って。」
「…めんどくさ。」
「…あ、優衣ちゃん!」
「…海晴さん。」
「…あ、あの…。」
…怖い。もしかしたら…受け入れてもらえないかもしれない。
『相手が何も言わないで自分を理解してくれるっていうなら、自意識過剰も甚だしいよ。』
…でも。
『それとも、諸星君に言ってた頑張るって言葉は、ただの体裁だったのかな?』
「ごめんなさい!」
ちゃんと、自分の言葉で伝えるんだ。
「…私、みんなに迷惑かけるのが嫌で…ううん、失敗して、責められたり、呆れられたりするのが怖くて…。」
「なら、始めからやらないほうがいいんじゃないかって。サーブだけできれば、大丈夫なんじゃないかって。」
「そう、考えてたの。」
「今は?」
「…え?」
「考えてたってことは、今は違うんでしょ?」
「…うん。」
「…今も、失敗するのが怖い。責められたりしたらどうしようって考えてる。…でも。」
『頑張れよ。大丈夫、自信もてよ。最初と比べてすげー成長してるから。』
『諸星くん。今日はありがとう。私、頑張るよ!』
「頑張りたい。チームのために。私を応援してくれた人のために。なにより私自身のために。」
「…だから、みんなにはこれからたくさん迷惑かけると思う。」
「…ごめんなさい。」
「…はぁ、急に何を言い出すかと思えば。」
「……。」
「あのね、失敗するのなんて当たり前だから。」
「そして、それを誰かがフォローするのも当たり前。」
「私はチーム競技は常に連帯責任だと思ってる。誰かの失敗はみんなの失敗。誰かの成功はみんなが繋いだ結果。」
「最初からやりもしないのは、その責任を他に押し付けるのと同義なの。わかる?」
「…うん。」
「誰かが少しでもボールに触れてくれれば、その分誰かがボールに届くかもしれない。」
「その可能性をあなたは最初から諦めたの。」
「うん。ごめんなさい。」
「…いいよ。」
「宮乃さん?」
「だから、それがわかってるなら、もう気にする必要ないって言ってるの。」
「…私も、ごめん。さっきは言い過ぎた。」
「ううん、あれは私が悪かったから…。」
「いや私も…」
「はーい、なんか収集つかなくなりそうだからそこでストップねー。」
「ほら、真尋、優衣ちゃんも。みんなー、そろそろ休憩終わりー。」
「…海晴さん。」
「?」
「球技大会、絶対勝とう。」
「…!うん!」
ーー球技大会当日。体育館にて。
"キュッ"
"バシッ"
「前々!」
「っく!ごめん真尋!」
「由奈ナイス!花梨、ラストお願い!」
「OK。」
"バシッ"
"ピッ"
"ワアアアアア"
「花梨ナイスキー!」
「真尋もナイストス。由奈もナイスレシーブ。」
「ブイ!」
「試合、勝ってるみたいだね。」
「お、空木お疲れ。どうだった?」
「3回戦で負けてきたよ。」
「負けてきたってお前なぁ…絶対めんどくさくなったんだろ。」
「あはは。それもあるけど、4回戦までいくと、バスケの試合の時間と被るんだよね。」
「バスケ?お前バスケに興味あんの?」
「バスケ自体にっていうより、友達の応援にね。」
「友達?」
「そ、隣のクラスの暁月燐君。」
「え!?燐!?」
「あぁ、そういえば仲いいんだっけ?君たち。」
「まぁな。幼馴染だし、昔からの付き合いみたいなもんだな。」
「え?ズルくない?」
「なにが!?」
"ピッ"
「あ、次海晴さんがサーブみたいだよ。」
「っ!頑張れ!海晴!」
「…すーーはーー。」
…腕を上げて、肘を引いて、足を後ろに。
ボールは高すぎず、真上じゃなくて、身体の少し前に上げる。
視線は真っ直ぐコートに。
そして打つときは身体ごと回転させて…。
"パシンッ"
″ポスッ"
「…!前々、入ってるよ!」
「…っ、ごめん短い!」
「まか、せて!」
"バツッ"
「…っ!」
「ナイスキー…」
まだ…。
『誰かが少しでもボールに触れてくれれば、その分誰かがボールに届くかもしれない。』
…っ落ちてない!
"ボッ"
届いた!でも…っ。
"パシッ"
宮乃さん…!
「ボール返ってくるよ!」
「…もっかいお願い!」
"キュッ"
"バシッ"
「っ!」
「ナイスレシーブ、サトちゃん。…真尋!」
"キュッ"
"バシィッ"
"ピッ ピーーーー"
「…勝った、の?」
「花梨!うちら勝ったよ!」
「まだ1回戦突破しただけでしょ?」
「そうだけど、嬉しいものは嬉しいじゃん!」
「まぁね。」
…勝った?本当に…?
…手が、震えてる。はは、力抜けちゃって立てないや。
「海晴さん。」
「宮乃さん…。」
「…ナイスファイト!」
「っ!ありがとう。そっちも、ナイスプレー!」
「海晴!」
「諸星くん。」
「やったな!」
「うん!」
…結局、あの後2回戦で私たちは負けた。
たくさん失敗した。でも誰も私を責めなかった。
後悔はある。あの時こう動いていれば、あのボールを拾えていればって何度も考える。
完全にやり切れたとは思わない。
でも…。
『お疲れー!残念な結果だったけど、みんなとプレイできて楽しかったー。またみんなでやろうね!』
『せっかくだし、今度みんなで集まろうよ。チームで打ち上げとかしたいし。』
『さんせー。』
『どこいく?』
『ミスト』
『いっつもそこじゃん。海晴さんは?行きたいところとかある?』
『こことかどうかな?パンケーキがおいしいんだよ。』
『いいね!パンケーキ、私食べたい!』
『ヤバい、写真見てたらお腹空いてきた。メシテロじゃん』
「…海晴?帰らないのか?」
「…ううん。今行く!」
少しだけ、私も変われたのかな。
そうだといいな。




