第13話:モンダイジ
★前回のあらすじ
編入生が来ました。
人生とは得てして予想だにしない出来事が起こるものだ。
それは時に人を成長させ、時に新しい関係を紡ぎ上げる。
逆もまた然り。
そう、人生とは常に移ろい行くものなのである。
だからこそ、こんなことも時には起こり得るのかもしれない。
「編入生の空木 紫鶴です。今日からクラスメイトとして、皆さんと良き学校生活を送って行きたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。」
以前出会った青年と、運命的な出会いを果たす。とかな。
ーー1年2組 教室にて
「空木お前っ、編入ってうちのことかよ!」
「うん、そうだよ。」
「言ってくれれば良かったのに。」
「あはは、ごめんごめん。」
「まぁ、いいけどよ。」
「何々?諸星、空木君と知り合いなの?」
「えーウソ!なら紹介してよ!」
「あ、ずるーい。私にも教えてー。」
「いや、俺も一回会って話しただけだから、対して話せることねーよ。」
「なんだ、つまんないのー。」
「ねぇねぇ!空木くんは前、どこの学校通ってたの?」
「なんでうちに来たの?」
「部活とかやってた?」
「お、おい!そんないっぺんに聞いたら…」
「…ごめんね。前の学校のことはあまり話したくないんだ…色々あってね。」
「…あ、ごめん…聞いちゃまずかった…?」
「気にしないで。確かにあまり愉快な話ではないけど、今はこうして良いクラスメイトに巡り会えた訳だからね。そう考えると、ある意味あれは天啓だったのかも。」
「あはは、空木くんって見かけ通り、結構キザなタイプだね。」
「そう?こういうタイプは嫌?」
「ううん!むしろちょータイプ!」
「ありがとう。」
「…羨ましい。イケメン爆発しろ。」
「諸星!行け!あの空間に突っ込め!そして俺たちの宿願を果たしてくれ!」
「えぇ…やだよ普通に。」
「っく!裏切り者ぉ!」
「…まぁ掴みどころのない奴だけどさ、悪い奴では…」
「ねぇ、空木くんってどういう子がタイプ?」
「そうだな…ああいう感じの子かな?」
「ああいうって…海晴?」
「空木、ちょっと俺と話し合いをしないか、今すぐに。」
「うん、いいよ。あ、ついでに校内を案内してよ。まだ編入したてでよくわからないんだよね。」
「…へ?あ、あぁ。」
「えー、空木くん行っちゃうのー?」
「まだお話したいのに。」
「あはは、ごめんね。また今度ゆっくり話そう?」
「うん、またね!」
「行ってらー。」
「それで話しって何かな?」
「いや…その…お前、海晴のことタイプって言ってたけど…ぶっちゃけ恋愛対象として見たりとか…。」
「…あぁ。あれは方便みたいなものだよ。あの子たちの中から選ぶのも、適当なタイプを挙げて勘違いされるのも、どっちも面倒だからね。」
「その点ああいう子は僕に興味持たないだろうし。」
「そ、そっか!いやでもそれはそれで利用されたみたいで、なんか腹立つな…。」
「あはは、もしかして好きなの?彼女のこと。」
「おう。というか付き合ってるから、恋人同士だから、あんまちょっかいかけんなよ。」
「へぇ、そうなんだ。それじゃあ、あんまり勘違いさせるような発言は控えないとね。」
「それにしても、諸星君は彼女のどういうところが好きなの?」
「そんなの色々あるからな…かわいいし、気遣いできるし、かわいいし…あ、でもやっぱ一番は…」
「好きなことに一生懸命なところかな。」
「…そう。」
「素敵な関係だね。」
「そ、そうか?」
「うん。」
すごく素敵な関係だと思うよ。
歪なくらい。
「…っと、一先ず校内はこんなところかな。」
「ありがとう。大体わかったよ。」
「なぁ、空木はなんか部活とか考えてんのか?」
「うーん、今のところは考えてないかな。」
「え?美術部とか入らねーの?」
「別に部活じゃなくたって絵は描けるしね。」
「そういうもんか?」
「僕にとってはね。」
「ふーん…。」
「あ、諸星くん、良かったここにいたんだ。」
「海晴。どうしたんだ?」
「諸星くん、今日日直でしょ?先生が実験に使う物品を運んでほしいって。」
「げ、まじかぁ…。わかった。伝えてくれてありがとな。」
「うん。お仕事頑張ってね!」
「おう!」
「ごめんね、まだお話の途中…だったよね?」
「ううん。ちょうど校内案内も区切りがついたところだったし、大丈夫だよ。」
「なら良かった。…えっと…空木くん、だよね?」
「そう紹介した筈だけど?」
「ご、ごめんね!…あの、私の記憶違いじゃなければ空木くんって琴葉ちゃんの…」
「海晴さん。」
「…?」
「もうすぐ休み時間も終わることだし、その話の続きは放課後にしようか。」
「…琴葉のことについて、少し話したいこともあるしね。」
「…!」
「それじゃあ、待ってるから。」
「……。」
…さて、君は逃げずにちゃんと来るのかな?
「……。」
「…?暁月ー、何してんだよ。早く行こうぜ。」
「…あぁ。今行く。」
ーー放課後。1年2組教室にて。
『もうすぐ休み時間も終わることだし、その話の続きは放課後にしようか。』
『…琴葉のことについて、少し話したいこともあるしね。』
「諸星、じゃあな!」
「おう!また明日な!」
…私は…どうするべきなんだろう。
行かなきゃ行けない…よね。
でも、空木くんの話したいことってきっと…。
「…晴?海晴?」
「…っ!あれ?諸星くん?どうかしたの?」
「いや、なんか上の空だったからさ。大丈夫か?」
「あ…ごめん大丈夫だよ。最近ちょっと製作活動が捗って寝不足気味だったからそのせいかな?」
「ったく、頑張り過ぎるのもいいけど、無理は禁物だからな。」
「ちゃんと自分の身体も大切にしろよ?」
「うん。気をつけるね。」
「おう!…あ、そうだ。海晴、今日確か部活休みだったよな?良かったら一緒に帰ろうぜ。」
「私は…」
『それじゃあ、待ってるから。』
「……。」
「海晴?」
「…ごめんね、諸星くん。私今日ちょっと用事があるから、先に帰ってて。」
「そっか。それじゃあまたの機会にってことで!」
「うん、また明日。」
「おう!」
……。
…………。
………………。
"ガラッ"
「…やぁ。」
「良かった、ちゃんと居てくれて。」
「……あの、それで話って、なにかな?」
「ん?」
「その、琴葉ちゃんのことで話があるって…。」
「…あぁ、そうだったね。」
「うん。琴葉のことで君に聞きたいことがあってさ。」
「…聞きたいこと?」
「ねぇ、海晴さん。」
「君はいつまで琴葉と友達ごっこをしているつもりなのかな?」
「…え。」
『私は優衣ちの味方ですから。』
『はい、勿論好きですよ。』
『ねぇ、私たち、ちゃんと友達だよね?』
「わた、し、と…琴葉ちゃん、は…ごっこなんかじゃ…。」
「え?あれでしっかりと友達のつもりだったの?冗談きついって。だって君…」
「琴葉のこと、まるで信用してないでしょ?」
「…っ!…ち、違うっ!私はちゃんと琴葉ちゃんのことっ…!」
「その割には随分と壁を作っているように見えるけど?」
「そ、それは…琴葉ちゃんに、迷惑をかけないようにって…。」
「だからさぁ、それが信用してないって言ってるの。わかる?」
「そんな、こと…っ。」
「ないって言い切れる?」
「……。」
「ねぇ、そんなに怖い?」
「また、愛想つかされるのがさ。」
「わた…私は…。」
『…ごめんなさい。』
「私…は…。」
「君ってさ卑怯だよね。」
「…え…?」
「自分の頑張りは認めてもらいたいと欲するくせにさ。」
「他人の頑張りは知らん顔して逃げて、見て見ぬ振りをして。」
「信用できませんって、まるで自分が被害者であるかのような振る舞いをして。」
「それで引く興味は嬉しい?それでされる心配は安心する?」
「……。」
「僕さ、嫌いなんだよね。」
「求めてるものが手の届く場所にあるくせに、それを見ようともしないで勝手に傷ついて、誰かが手を伸ばしてくれるのを待ってるだけ。」
「…本当、反吐が出るよ。」
「…んで…。」
「ん?」
「っなんで、あなたにそんなこと言われなきゃいけないのっ!?」
「あなたにはなにも関係ないでしょう!?」
「うん。まぁ直接的な関係はないよね。」
「でもさ。自分の気持ちを伝えるのに何か理由が必要?」
「それ、は…でも、だからってあなたに言われる筋合いは…」
「そうだよね。こんなこと言われたくないよね。」
「…は…?」
「だって君、悪く言われること嫌いだもんね。」
「そん、なの、誰だって…」
「だから逃げたんだもんね。前の居場所から。」
「……琴葉ちゃんに聞いたの?」
「どうだと思う?」
「……。」
「ほら、やっぱり。なにも信用してないじゃないか。」
「…私、わた、し…は…」
"ガラッ"
「おい、いつまで残っているつもりだ。」
「もう部活動生以外の下校時刻はとっくに過ぎているぞ。」
「暁月くん…。」
「…あはは、ごめんごめん。話が盛り上がっちゃって、つい話し込んじゃった。」
「帰ろっか、海晴さん。」
「…あ、私…」
「海晴。蒼也の家の場所はわかるか?」
「え?う、うん。わかるよ。」
「そうか、ならすまないがこのノートを蒼也の家に届けてくれないか?実験室に置き忘れていたみたいでな。」
「わ、わかった。任せて!」
「あぁ、頼んだ。」
「うん!またね暁月くん。…と空木くん。」
「また。」
「またね、海晴さん。」
……。
「さてと、僕も帰るとするかな。じゃあね。えっと…暁月君?だっけ。」
「1年1組の暁月燐だ。よろしく頼む。」
「僕は空木紫鶴。よろしくね。それじゃあ…」
「空木。」
「うん?」
「良かったら一緒に帰らないか?」
「うん????」
「…とまぁ、前の学校で色々あってさ、ここに編入してきたってわけ。」
「そうか。」
「……。…あー…そうだ!暁月君って部活やってるの?」
「やってる。」
「へぇ、何部?」
「剣道部。」
「昔からやってたの?それとも高校から?」
「小学生の時からだ。」
「へぇ。」
「……。」
「…えっと、暁月君はさ…」
「空木。」
「ん?」
「オレに何か聞きたいことがあるんじゃないか?」
「…もしかして、暁月君って急に爆弾発言するタイプ?」
「最近言われたな、その言葉。」
「あぁ、前科あるんだ…。」
「…君さ、さっきの話聞いてたでしょ?」
「あぁ。」
「え!?」
「?なんだ、お前が聞いてきたんだろう。」
「いやそうなんだけどさ…もっとこうない?」
「何がだ。」
「それは…はぁ、まぁいいや。」
「…暁月君はさ、海晴さんとはどういう関係?」
「友達だ。」
「そう。あ、だからかな?友達に酷いことを言った僕に説教がしたくて、一緒に帰ろうなんて言ったのかな?」
「でも悪いけどこれは当人たちの問題であって、君には…」
「何を言い出すかは知らないが…オレは別にお前に説教をする気は毛頭ない。」
「…余計意味わからないんだけど。」
「え?なに?もしかしてただのお友達希望交流会とかじゃないよね?」
「そんな変な交流会を希望した記憶はない。」
「でしょうね。」
「じゃあもう何が目的なのさ。」
「お前は何故。」
「うん?」
「海晴にあんなことを言ったんだ?」
「やっぱり説教じゃないか。」
「だから違うと言っている。」
「あーはいはい。そうですか。」
「…別に、気に食わなかっただけだよ。」
「被害者みたいな顔してるのも、独り善がりなところも、逃げてばっかなところも。」
「…欲しいものが手の届く場所にあるくせに、自分からは何も動こうとしないところも。」
「……。」
「お前は海晴優衣のことが…」
「うん。きら…」
「そんなに羨ましいのか?」
「……はい????」




