第11話:ウツギ シヅル
★前回のあらすじ
京都で迷子。
「へぇ、16ってことは俺と同い年か。どこ校?」
「彩京高校。」
「え!?マジ?めっちゃ頭いいとこじゃん。お前顔だけじゃなくて頭もいいのかよ…。」
天は二物を与えず…とか言うが改めて断言しよう。絶対嘘だ。
「あはは、ありがとう。でもこの前退学になったんだけどね。」
「退学!?何で!?」
見た目だけならアンニュイな好青年って感じだけど、実は結構な不良だったりするのだろうか。
「うーん、僕が入学式以降一度も出席しなかったからかな。」
「…何かあったのか?」
「何かって言うよりも、元々親に言われて嫌々入っただけだからね。さして学校生活とか勉強とか興味なかったし。」
「だから授業サボって放浪してたら、ついに出席日数が足りなくなって留年勧告されちゃった。」
「されちゃったって…そんなあっさり…。」
「あはは、僕にとってはそれほど問題にすることでもないからね。親は知らないけど。」
「あれ?でもそれならなんで退学になったんだ?」
「退学は退学でも、自主退学ってやつでね。親が留年なんて体裁が悪いってことで、進路変更を理由に、学校に申し出たってわけ。」
「それで僕は晴れて中退の身になったってこと。」
…なんというか…最初は真面目な印象受けたけど、思ったより奔放な奴だな…。
「まぁ、この件で親に相当詰められてね、僕としては勘当とかでも良かったんだけど、流石に世間体が悪いからダメだってさ。いい世の中だよね本当。」
「…それで?空木はこれからどうするんだ?」
「編入ってことで、別の学校に入ることになったよ。まぁ結構自由な校風らしいし、僕のやりたいこともそれなりにできるみたいだし、しばらくはそこで様子見かな。」
「やりたいこと?」
「うん。」
空木は鞄から何かを取り出すと俺に差し出して…
「って重!デカ!」
「あはは、落とさないでよ。あと汚したらそれなりの対価を払ってもらうから。」
「んな理不尽な。」
…ん?というかこれって…。
「キャンバスだよな?」
「そう、よく知ってるね。」
「…バカにしてんだろ。」
「うん。」
「うん。じゃねーよ!」
こいつ、奔放なだけじゃなくて大分軽薄な奴だぞ…った、く…
……。
…………。
………………。
こんなにも何かに目を奪われたのは、人生で二度目かもしれない。
赤、青、黄色、紫、オレンジ…様々な色の点が混ざり合い、一つの空をつくり出している。
一つ一つはただの小さな点なのに、角度を、見方を変えればそれは雲になる、夕日になる、広い大きな空になる。
色も大きさも違う無数の点が、無数の景色として存在している。
「…すげぇ。」
「すげぇよ、空木。」
「俺、芸術のこととかなんも知らないけどさ、それでもこの絵がめちゃくちゃすげー絵だってことはわかる。」
「なぁ!他の絵はねーの?良かったら他のも見せてくれよ!つか見たい!」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいし、見せてあげたい気持ちは山々だけど…君、大丈夫?」
「?何が?」
「その制服、京都じゃ見かけないし、多分旅行生だよね?こんなところに一人で居て大丈夫?」
「……あ。」
「…うん。…うん。…悪かったってっ。…うん。わかった。待ってるよ。」
”ピ"
「どうだった?」
「思ったより近くにいたらしくてさ。迎えに行くからそこにいろって。」
「そう、良かったね。」
「ありがとな、携帯まで貸してもらって。」
「あはは、これに懲りたら、残量はしっかり確認しておくんだね。」
「っう!以後気をつけます…。」
「…ところでさ、君…」
「諸星くん!」
「海晴!」
「…はぁ、はぁ…よか、った…いた…。」
「わ、わるい。人混みに流されちゃってつい…。」
「もう!心配したんだからね!」
「本当ごめん!もうしないから!」
「全くもう…戻ったらみんなからお説教だからね。」
「…はい。」
「…それじゃあ僕もそろそろ行くよ。」
「あ、空木!色々ありがとな!」
「あはは、どういたしまして。…それじゃあ、またね。」
「おう!また!…ん?また?」
「諸星くん、今の人は?」
「あぁ、さっきちょっと一悶着あってな。助けてくれたんだ。あと携帯貸してくれた。」
「そうなんだ。」
「……。」
「海晴?」
「あ、ごめんね。行こっ、諸星くん。」
「おう。…あぁー、みんなからなんてどやされるかな…。」
「……。」
「…今の人…もしかして…。」
「…それじゃあしばらくはそっちで世話になるから。…あはは、そんな嫌そうにしないでよ。傷つくなぁ。」
「…うん。…うん。…それじゃあ。」
"ピ"
「……あの子、そういえば扇ヶ丘学園だっけ。」
「…うん、ちょっとは退屈しなさそうかな。」




