↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
孔明さんの不本意ありまくりの出廬が近づいてます。
PR
76/428

もう少し、優しいお話にしたいですが無理そうです。※

 孔明(こうめい)は、琉璃(りゅうり)の首に残されていた傷に薬を塗り、包帯を巻く。

 そして、頬の傷の手当てをし、抱き締める。


「しばらくは痛いけれど、我慢してね? 琉璃」

「だ、旦那様……喬(きょう)ちゃんは……」


 琉璃は夫に問いかける。


「味方に、江東(こうとう)に連れていって貰ったよ。ここは危険だから……貴方にだけは、私たちの可愛い息子を近づけたくなくてね!! 」


 後ろにいつの間にか来ていた男たちの姿に、琉璃が蒼白になる。


「あ……あっ!! 」

「大丈夫、琉璃の事は私が守るから……ね? 」


 怯える妻をあやし、振り返った孔明はにぃっと笑いかける。


「初めてお目にかかります。劉皇叔(りゅうこうしゅく)。諸葛孔明(しょかつこうめい)と申します……と言っても、ご存じですよね? 藪の中でこそこそと覗いてたそうじゃないですか。私にそんなに会いたかったのでしたら、正々堂々目の前で仕えるように言って戴けませんかねぇ? こんなまどろっこしい、周囲を巻き込む傍迷惑なことをして戴ける程、買い被って戴けるとは……」

「感謝しているかな? この歓迎に」


 にたりと笑う玄徳(げんとく)に、孔明は満面の笑みを浮かべると、即、妻の耳を両手で塞ぐ。


「そうですねぇ……隣の季常(きじょう)と二人、早々にあの世に送り込んで差し上げようかと考える程、感謝していますよ? あぁ、楽しみです。季常の死に様を見るのを、とてもとても楽しみにしていたので、それがもう一人増えるなんて……季常同様、無様な死に様を見せて下さいね? 『皇叔(こうしゅく)』」

「なっ!! こ、孔明兄上でも、言っていいことと悪いことが!! 」


 憤然(ふんぜん)と食って掛かる幼常(ようじょう)に、憐れみを込めた目で告げる。


「幼常には本当に悪いけれど、死が見えるようになったよ、君の。兄に追随(ついずい)し、自分で自分の意見を言えぬまま、選択もせぬまま、自らの将来を選ばなかった罰だ……可哀想に……」

「なっ!! 誰が可哀想……」


 どもる幼常に、孔明は繰り返す。


「幼常が、可哀想なんだよ?自分の意志を口にせぬまま、季常の言葉が自分の意見だと思い込む、憐れな傀儡(かいらい)にしかなれなかった幼常が、ね?そして、そういう風に仕向け、自分の弟しか自分の傀儡として動かせない可哀想な傀儡使いもね……季常位人付き合いが下手すぎて、軍を率いるのも無理な男もいないのに、軍に入れた皇叔の目もとうの昔に腐っていたのでしょうね。曹孟徳(そうもうとく)に負けて中原(ちゅうげん)を逃げ出しただけはありますね」


 ハハハ……


 楽しげに笑う孔明に、みるみる表情を青黒く醜く歪ませ……、


「貴様!! 」


 振り上げた腕を、後ろ手に捕らえられる。


「……兄(あに)ぃ。わりいが、もぐら……じゃねぇ、孔明は琉璃……俺の部下である趙子竜(ちょうしりゅう)の亭主だ。まだ出仕(しゅっし)をすると了承を得ていねぇだろ? そんな男に暴力を振るえば、皇叔である兄ぃの名声が地に落ちる。今は曹孟徳の野郎の動きも怪しいんだ。味方が欲しいだろ!? そこの口先兄弟より役に立つのが」


 益徳の言葉に、手を振り払う。


「……では、益徳! こいつに出仕迄に、主に対する言葉遣いを叩き込んでおけ!! それと主に対する敬意もな!! 」

「ハイハイ、じゃぁその代わり、兄ぃ。悪いが、家に勝手に侵入し、客人を誘拐しようとした上、俺の嫁に息子、部下を殺そうとした親子がいるんだが、連れて帰ってくれねぇか? そいつ凶暴でさぁ? この孔明が両腕をねじり折るまで嫁は殴り飛ばして蹴るわ、息子は壁に叩きつけるわ、部下の首を絞め殺しかけてなぁ……」


 眉を寄せる玄徳は、義弟を見る。


「……誰だ、その馬鹿は!? 」

「あれ、その馬鹿親子」


 示した益徳の指をたどった玄徳は、愕然(がくぜん)とする。

 縄を打たれ、うちひしがれた態度の男は、玄徳の最も良く知った人物……。


「雲長(うんちょう)!! おい!? 益徳!! お前は義兄弟の契りを結んだ雲長に何を!! 」

「義兄弟の契りを破ったのはこいつだよ。俺は悪くねぇ!! ついでにねじり折られた腕の治療だけはやってやったんだ。逆に感謝して貰いてぇよ。なぁ? 漢寿亭侯(かんじゅていこう)様? 」


 せせら笑う益徳。


「なぁ? 兄ぃ? 知ってたか? こいつ、彩霞(さいか)姉貴を妾(めかけ)に貶(おとし)めて、持ち物全て奪った上に離れに監禁してたんだよ。その上、兄ぃが娶れと言った韋家(いけ)の嫁は、彩霞姉貴の食事に毒盛ってたんだと。で、侍女の格好で、逃げ出した彩霞姉貴が家に逃げてきた。俺は姉貴を助けたんだ。なのに、こいつばらされたら困るって人ん家の人間に暴力振るって、連れ戻しに来やがった」


 義弟の行為に言葉を失う玄徳に、益徳は、


「彩霞姉貴はもう戻るつもりはない。家屋敷、装飾、あらゆるものは姉貴が買い揃えたものだから、全て返して貰うって宣言して期日を決めた。が、それまでに出ていかなくて、今日商人二組に来て貰って、交渉してたとこに、こいつがまたしても、そこの妾(めかけ)の子連れてやって来たんだよなぁ? こいつ、俺のこと見下してるし、もういい加減、堪忍袋の緒が切れた! 俺はこいつの義弟をやめる。義兄である兄ぃが説教なり、孔明の代わりに殴り飛ばすなりしろよ。頼むわ、俺。嫁と息子に着いててやりたいんだ? 」


 にっこりと、髭面だがやんちゃそうに笑う益徳に、苦虫を噛み潰した顔で、


「……解った。こちらで処分する」

「じゃぁ、屋敷の売り主はもう決まってるから、追い出すのも頼む。こっちは彩霞姉貴を送り出すから」

「えっ!?」


 玄徳と雲長、驪珠(りしゅ)は顔を上げる。


「さ、彩霞を何処にやるんだ!! 」


 食って掛かる雲長に、冷たい目で言い放つ。


「てめぇら親子が、全うに……いや、それよりもてめぇが彩霞姉貴を妾に貶めたんだろ? そのてめぇが言えた義理かよ!! その上、家にまで侵入し、家族や使用人たちにまで暴力振るっただろうが!! それに、心を痛めて、姉貴はここを出ていくって言ったんだ!! 何度も止めたさ、姉貴は俺の姉貴同然なんだしな!! 人に何か言えるのか!? 最初から、てめぇが悪いんじゃねぇか!! 口挟むなよ、髭!! 」

「益徳、落ち着け……」

「兄ぃ、今まで何も言わなかったが、兄ぃが言うことには素直に従ってきたが、言わせて貰うぜ!! 」


 指を雲長に突きつける。


「こいつと一緒に戦うのは御免だ!! 信用できねぇ!! 長年連れ添った嫁を簡単に捨てるんだぜ!? もし同じ敵に向かって戦う時になってみろよ!! こいつ、戦況が怪しくなると逃げ出すとも限らねぇ!! そんな奴と組みたくねぇ!! もし組めと言うなら、俺は軍を動かさねぇ。絶対だ!! 兄ぃ。俺は言ったぜ? 馬鹿な俺だが、絶対に忘れねぇ!! 兄ぃも覚えておいてくれ!! 良いよな? 」


 益徳の迫力に頷いた玄徳。


「じゃぁ、頼むわ。兄ぃ。家は忙しいんだ、ゴタゴタしている所に兄ぃをもてなせないんだ、すまねぇが……」

「解った。では、雲長たちを連れていく。屋敷の方は……」

「買い取った商人に頼んだ。ついでに、姉貴の事もな」

「商人に? 」


訝しげな玄徳に、爆弾を投下する。


「襄陽(じょうよう)の黄承彦(こうしょうげん)どのだ。で、黄承彦どのが商売であちこち行くらしいから、その旅に着いていって、姉貴が気に入った街に屋敷を建ててくれるそうだ。兄ぃ。黄承彦どのなら安心だろう? 」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。