表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
孔明さんの不本意ありまくりの出廬が近づいてます。
74/428

黒ひげ危機一髪……ではなく怒り爆発!!のようです。※

 激怒した益徳えきとくは、美玲みれい元直げんちょくと共に、彩霞さいかの元々の屋敷をすぐさま売り払う準備を始めた。


 元直の助言で売り払う先……買い取って貰う先を、現在の雲長うんちょうの嫁の実家と、襄陽じょうようの豪商、黄承彦こうしょうげんに限定したのである。

 そして、現れたのは数年前、夜中黄承彦の屋敷を訪れた際に追い払った、警備の長を装っていた小柄ではあるが、落ち着き払った……しかし威厳と迫力をもった男と、その横に並んだのは明るい稲穂色の髪と瞳の美貌の細身の青年。

 続いてやってきたのは、娘を漢寿亭侯かんじゅていこうの嫁にやり孫をもうけた上に、前妻を追い出させて満足げな小者。


 しかも、黄承彦たち親子が立ち待っているというのに、だらしない格好で座り、美貌だが異国情緒あふれる青年をけがらわしそうに見つめている。

 その様子を元直と共に物陰で見ていた益徳は、ちらっと元直を見、姿を現す。


「遅れて本当に申し訳ない。実は縁があって預かっている、二人の女人が体調を崩し、医者を呼んでいたものでな」

「女ごときと、商談を天秤てんびんにかけるとは!! 商売を何たるものと……」


 言いかけた新谷しんやの豪商と言うには小者の韋家いけの当主に、


「黙れ!! お前ごときに謝ろうとしてねぇ!! お、私は、こちら……黄承彦殿に挨拶をしようとしたのだ!! 」


と、戦場に向いていると良く言われる怒声を浴びせる。


「しかも、お前……誰が席につけと、命じたか!? 名を名乗らず席に着けるのは、この新谷ではあにぃ……劉皇叔りゅうこうしゅくのみ、お前は自分が劉皇叔と思い上がっているのか!! 立て!! てめぇの娘が、俺の元の義兄の嫁だと言っても、お前ごときに頭を下げるいわれはねぇ!! 」

「ひ、ひぃぃ……!! 」


 飛び上がるように立ち上がった男をさげすむように見ると、益徳と元直は黄承彦親子に頭を下げる。


「わざわざ襄陽から来て戴いたと言うのに、立たせたまま長時間も待たせてしまい、本当に申し訳ない。改めまして、初めてお目にかかります。私は張益徳ちょうえきとくと申します。本来ならそちらに直々に伺い、お願いするのが筋ではありましたが、預かっている実の弟のように可愛がって戴いた女人と、その方が娘のように可愛がる娘が体調を崩し……それだけならまだしも、元の義兄が警備の者や侍女に乱暴を働いた上に、乱入し、怯えた令嬢が恐怖のあまりに髪飾りで喉を突こうとしたのです……」


 今までは……特に黄承彦は、前回会った時の散々な印象でしか見れなかったのだが、益徳の言葉に、彼の誠実さを感じ取り見直す。


「本当は今回のこの話は、元々私の元の義兄、漢寿亭侯の関雲長かんうんちょうどのの正妻だった姉が、めかけに落とされた事に始まります。側室を娶り嫡子を生んだ為、娘しか生まなかった姉をおとしめたのです。しかし、家は元々姉が購入したもので、調度、侍女等の働き手も全て姉が手配したものです。しかし身を落とされた姉は、その立場に置かれるのが当然耐えられず、自分の家であるその屋敷を売り、金を作り、妾と言う身分から逃れたいと、これ以上のはずかしめは受けたくないと、私の元に助けて欲しいと来てくれたのです。全てを売る為に、前の夫である漢寿亭侯殿を追い出そうとしたのですが、期限の昨晩迄に出ませんでしたので、姉に頼まれ、急ではありますが、即座に売るのと、元夫を追い出すのをお願いすることに……」

「な、何だと!? あの屋敷は、うちの娘の嫁ぎ先!! 妾が勝手に売るとは、何様だ!! 」

「てめぇには、話してねぇ……」


 益徳は、低い声で脅しつけるように言い放つと、思い出したように席を示す。


「申し訳ない。話に夢中になって、失礼なことを……お座り戴けませんか? 少々長い話となります」

「解りました。月英……」

「失礼致します」


 二人は腰を下ろす。


「私の席は……」

「そこに座れや」


 益徳は、空いている場所を顎で示す。


「な、何で、この私が、こんな混血と並んで……」

「なら黙って立ってろよ」


 冷たく言い放つと、黄承彦とその息子月英に向き直る。


「お願いしたいのは、姉の住まいに居座る、漢寿亭侯の家族を追い出すのと、家に仕えていた使用人の全員解雇。そして、女性物の装飾品は、全て姉の物です。姉は……」

「あんな女!! 董仲穎とうちゅうえい呂奉先りょほうせんの間を裂き、自分の体を用いて戦乱を招いた悪女……下賤げせんな女ではないか!! 」

「ほぉ? で、曹孟徳そうもうとくのところから逃げる時に、見栄はって曹孟徳から貰った金を全て置いて、貧乏暮らしになりそうだった兄貴の為に、屋敷と最低限どころか、金遣いの荒い亭主に馬鹿な娘の為に、やりくりをし長年嫁として陰ながら支えた姉貴に言う言葉か!? お前の娘が今身に付けてるのは、姉貴が揃えた装飾一式!! てめぇの娘は姉貴の金で身を飾ってんだよ!! 」

「……な……」


 絶句する韋家の当主に、益徳は、


「だからな? お前の娘の嫁ぎ先は、元々家計は火の車。それを長年支えてきたのはお前が見下す姉貴だ!! その姉貴が愛想つかしたんだよ!! そりゃぁそうだよな? 亭主は屋敷を追い出し、あそこの東屋あずまやを少し広くした離れに追い払い、装飾品は全て取り上げ、監視をつけ、侍女もつけねぇ。亭主だった男の新しい嫁って言う、お前の娘は毎日毎日姉貴の食事に毒を入れ、姉貴の装飾一式をこれ見よがしにつけて見せては、離れに息子を抱いて会いに言ってたそうじゃねぇか? 『夫の愛情が薄れると言うのは辛いですわね……私はその点、尽くすつもりですわ。ご安心下さいませ』ってな。尽くすなら、金とかも出すんだろうなぁ……頑張れや? 見て解るとおり、あの人はキラキラ派手な格好を好むんだ。金かかるぜぇ? 」


 青ざめる韋家の当主に、


「あぁ、安心しろ。お前の娘の嫁ぎ先は安泰だ。金遣いの荒い婿と娘が、ほぼ無一文でそっちに転がり込むしかねぇ。そして、姉貴が雇っていたのにその恩を忘れた、お前の娘に忠実な侍女たちもそっちに行くな~? 解雇するなよ? そんなことしてみろ、お前の娘が何をしでかしたのか周囲にばれるぜ? 」


 あはははは……


 嘲笑ちょうしょうする益徳に、韋家の当主は椅子を降り、這うようにして近づく。


「張将軍!! お、お願いします、何とか!! 何とか!! 」

「出来るか、ボケ。てめぇの婿と嫁の仕出かしたことを、どうして俺が何とかしてやらねぇといけねぇんだ!? てめぇと娘夫婦の問題だろうが。そっちでやれ!! 」

「あ、貴方様は、雲長様の……」

「ん? あぁ、昔な? 俺は、基本的に姉貴の味方なんだ。それに、長年苦しくても辛くても笑顔でずっと支えてきた姉貴を、妾に貶め、殺そうとまでする嫁を放置した……そういう奴に会いたくもねぇし、義弟とも呼ばれたくねぇな」


 はっ、


吐き捨てる。


「と言う訳だ、遣いには言っておいただろう? あの金で、あの屋敷売ってやる。可愛い娘に孫の為にも買うよな~? ご当主どの」

「そ、それは……」

「買う気がねぇなら、来るな!! てめぇ、俺をただの田舎の馬鹿と思うなよ!! これでも、一応はそこそこ名のある肉屋のガキだ!! 読み書き計算、ある程度やってんだよ。元々体動かす方が好きだから、家飛び出したけどな!! でも、常識的に解るだろ? 長年連れ添った嫁を、妾に落とした? それが長年尽くした嫁に対するやり方か!? 俺は認めねぇ……ついでに元直を騙し琉璃りゅうりを追い詰め、『臥竜がりゅう』『鳳雛ほうすう』を得ようと進言する『白眉はくび』なんて許さねぇ!! 」


 机を叩き、怒鳴る。


「韋家の……てめぇ、今すぐ自分の娘夫婦を連れて帰れよ。家の中身はそのままにしてだ。何をしてる、早くしやがれ!! 」

「ひ、ひぃぃぃ……」


 韋家の当主は飛び上がり部屋を出ていく。

 その様子を、4人はただ冷たく見送ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ