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破鏡の世に……  作者: 刹那玻璃
孔明さんの不本意ありまくりの出廬が近づいてます。
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星の読める孔明さんでも、運命を読み取ることは出来ませんでした……。※

 きょうを養子に迎えてから2年が経った。


 その間に琉璃りゅうりは15になり、益々美しさが増し体つきも柔らかく女性らしくなってきた。

 喬も体が弱い方だと聞いていたが、時々知恵熱が出る程度で寝込んだりすることもなく、5才になって日々家の回りを遊び回っている。

 そして男の子らしく、月英げつえいきんの作るものに興味を持ったり、孔明こうめいが読む書簡に興味を持ったりするようになった。

 今現在は琉璃の愛馬、光華こうかの子供の世話をしたり、孔明や琉璃に馬の乗り方を習い始めていた。


「喬は馬の事を良く解るんだねぇ? 」

「お母さんが、上手なの。ねー? お母さん」


 喬は大好きな義母を見上げる。


「喬ちゃんが、雪花せっかと仲良しだからよ。雪花は大好きって言ってるわ? 」


 雪花は、喬に与えられた喬の子馬である。

 光華は、何頭か子馬を生んだ。

 そのほとんどは、孔明の兄弟の家か琉璃の実家で育てられている。


 孔明も一頭育てており、月花げっかと名付けている。

 他の兄弟とは違い、月花は名前に反して気性が激しく琉璃も手に負えない馬だった。

 しかし、孔明だけは根気よく面倒を見、懐くようになった。


「本当? うれしい」

「そう言えば、今日はどうするのかな? 喬と琉璃は? お父さんは塾の仕事と、書簡を書き写したから、届けにいくんだけど、二人とも一緒に行くかな? 」


 妻と息子に問いかける。


「行く!! 僕ね、月英伯父さんのお家の赤ちゃん、見たいんだもん!! 」


 喬はキラキラと目を輝かせると、両親を見る。


「ねぇ、お父さん、お母さん。僕も兄弟欲しいな!! 伯父さんの所は男の子でしょ? だからね、僕は妹が欲しいんだ!! お父さん、お母さん。いつになったら僕に妹が生まれるの? 」


 息子の無邪気な問いかけに、琉璃は目を丸くする。


「えっ! 」

「そうだねぇ……琉璃に似た可愛い女の子がいいねぇ……? どう? 琉璃」


 孔明はにっこりと笑って妻を見る。


「喬も5才だし、いいお兄ちゃんになれるんじゃないかなぁ? 」

「あ、あの、あの……」


 ぼぼぼっと、琉璃の抜けるように白い頬が赤く染まる。

 その様子を嬉しそうに見ていた孔明は、息子を見る。


「喬の提案はまた後で話そうね。琉璃。じゃぁ、喬はお父さんとお出掛けしよう。琉璃はどうするのかな? 」

「あ、あの……あの、晶瑩しょうえいお姉さまにお手伝いを頼まれているので、後でお出掛けします。喬ちゃんをお願いします。旦那様」


 真っ赤な顔で答える妻を抱き締める。


「じゃぁ、行ってくるね? でも、気を付けるんだよ? 最近、この辺りは物騒だし、月英の家族や均たちも、子供がある程度になるまではって、街にいて、ここには私たちしかいないんだから、危険だと思ったらすぐに逃げる。そして、一番近い実家に逃げる。いいね? 」

「はい。解っています。旦那様。注意しておきますし、もし何かあったら光華に乗って逃げます」

「そう。そうしてね? じゃぁ、喬。お母さんに行ってきますは? 」


 妻から離れ、息子を抱き上げた孔明に、喬は、


「お母さん。行ってきます」

「喬ちゃん。気を付けていってらっしゃい。月英伯父様と碧樹へきじゅ伯母様によろしくね? 」

「はい。お母さん」


 二人は手を振り、家を出ていく。




 孔明はこの日、どうして一緒に出掛けなかったのか、生涯後悔し続けた。

 同じ街の、塾のすぐ近くにある姉の嫁ぎ先に送り届けることなど、出来た筈なのにどうして別々に行動してしまったのか……悔やみ唇を噛んだのだった。

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