04 ダルドロの一座
「おや、ギャア坊。ようやく身を起こせるようになったのかァい?」
童女ベラの気安い言葉に、彼は「ああ」とぶっきらぼうに応じた。
「ところでよ、その珍妙な呼び方はどうにかならねえもんかな」
「おやおや。元気になったと思ったら、もうそんな文句をつけるのかァい? 自分の名前を『ギャ』までしか覚えてないのは、アンタの都合だろォ?」
そんな風に言われても、もはや彼はその言葉を発したという記憶も霞んでいた。
彼は自分がどういう人間であったのか、すべて綺麗に忘れ去ってしまったのだ。
そして彼は全身にあちこち火傷を負っており、左目と左腕を失っている。
全身が灰色の包帯に覆われて、見るも無残な姿であった。
しかしそれでも、痛みにうなされることはなくなった。今でも左目と左腕はずきずきと疼いているが、日中に与えられた薬が効いているのだろう。それよりも、今は床ずれを起こした背中のほうが不快であった。
「アンタを拾ってから、コレで七日目だったっけねェ。もういい加減に峠は越しただろうから、魂を返すことはないだろうさァ。不死身のダルドロも真っ青のしぶとさだねェ」
「ダルドロってのは、この一座の頭の名前だろう? そろそろ挨拶でもするべきなのかな」
この七日間、彼が顔をあわせたのはこの童女ベラのみである。それ以外にこの荷車にやってくる者はなく、彼はずっと童女ベラから薬と食事を与えられていたのだった。
(俺はこれまで出会ってきた人間のことも、すっかり忘れちまったけど……こいつはきっと、当たり前の人間じゃねえんだろうなぁ)
そんな感慨を胸に、彼は童女ベラの姿を見返した。
外見は十歳ていどの、美しい童女である。闇よりも黒い髪は腰のあたりまで垂れており、そのほっそりとした肢体は朱色の奇妙な装束に包まれていた。
切れ長の目は睫毛が長く、瞳は髪に負けないぐらい黒い。しみひとつない真っ白の肌は作り物のようになめらかで、その美しい面立ちと相まって生ける人形のごとき風情である。
しかし何より普通でないのは、その立ち居振る舞いであろう。
彼女はどう見ても童女であるのに、老婆のように風格があって世慣れているのだ。童女ベラと相対するとき、彼はいつでも自分の倍ぐらいは生きている年長者を相手取っているような心地であった。
「外の連中も、アンタに興味津々だからねェ。カラダがしんどくないようだったら、いよいよ一緒に晩餐でも囲んでみるかァい?」
今はとっぷりと日も暮れており、停止した荷車の外からは祝宴のような騒ぎが伝わってきている。彼は「そうだなぁ」と溜息をついた。
「正直に言って、何も思い出せない状態で誰と顔をあわせてもしかたねえ気がするんだが……いい加減、俺も人恋しくなってきちまったよ」
「おやおや。アタシひとりじゃご満足いただけないってわけだねェ」
「そういう意味じゃねえさ。あんたにばっかり世話をかけるのも気が引けるしよ」
「ふうン」と、童女ベラは妖艶に微笑んだ。
「ま、挨拶したいってんなら重畳さァ。おかしな連中ばかりだけど、なァんも気を張る必要はないからねェ」
「ああ。よろしく頼むよ」
寝具の上で半身を起こしていた彼は、そのまま起き上がろうとした。
しかし、途中で体勢を崩して、横合いの壁に頭をぶつけてしまう。彼が「いてえ」と声をあげると、童女ベラはくすくすと咽喉で笑った。
「カラダのほうは、アタマのほうほど元気じゃないみたいだねェ。もうちっとばかり養生したほうがいいんじゃないのかァい?」
「いや、なんていうか……身体が右側に引っ張られるような感覚なんだよ」
彼が壁にもたれた状態でそんな言葉を告げると、童女ベラは「あァ」と手を打った。
「そういえば、アンタは左腕が吹っ飛んじまったんだもんねェ。腕一本だってそれなりの重さなんだろうから、いきなりそいつがなくなったら均衡が取れなくなるのも当然さァ」
「そういうもんなのか。足腰には問題なさそうなんだけどなぁ」
「そんなカラダでひっくり返ってたら、治りかけた傷口が開いちまいそうだねェ。人を呼ぶから、ちょいと待ってなァ」
童女ベラは背後の扉を開くと、闇に向かって「おォい」と呼びかけた。
「誰か、こっちの旦那に手を貸してやりなァ。支えになって、そっちまで運んでやるんだよォ」
闇の向こうから喝采があげられた後、何者かが荷台に首を突っ込んできた。
その姿に、彼は思わず「おおう」と声をあげてしまう。その男はもしゃもしゃの茶色い髪のこめかみから、二本の巨大な角を生やしていたのだ。
「よりにもよって、アンタかァい。さては、座長のイタズラだねェ?」
「は、はい。ち、力仕事なら、俺がうってつけだろうと言って……」
と、角を生やした異形の男はもじもじと身を揺する。その巨体は分厚い筋肉に覆われていたが、四角い顔はのっぺりとしていてまだずいぶん若そうだった。
「こいつは、獣人のペテルだよォ。頭に生やしてるのは飾りモンだから、なァんも気にすることはないさァ」
「は、はい。いつ誰に見られるかもわからないんで、寝るときもこの格好なんです」
ペテルと名乗る若き大男は、気恥ずかしそうに微笑んだ。そんななりをしながら、ずいぶん純朴な人柄のようである。
「あ、あなたも元気になってよかったですね。きっとシムの薬が効いたんでしょう。座長はもったいないなんて言ってましたけど、ベラが無理を言って持ち出してくれたんですよ」
「余計な御託を並べてないで、さっさと運んで差し上げなァ。間違っても、途中で落っことすんじゃないよォ?」
「は、はい。それじゃあ、失礼します」
彼は再び、「おわあ」と声をあげることになった。荷台に乗り込んできたペテルは彼の背中と膝の裏に逞しい両腕を差し込んで、軽々と持ち上げたのである。
「おいおい、俺はお姫様じゃねえんだぞ? 肩でも貸してもらえりゃあ、十分だって」
「で、でも、これが一番安全でしょうから」
間近に迫ったペテルの顔が、にこりと屈託のない笑みをたたえる。
そうして彼は、異形の者たちが群れ集う饗宴の場に連れ出されることになった。
「おお、包帯男の登場だ!」
男のひとりが蛮声をあげると、他の者たちもやんやとはやしたてた。
真っ当な姿をしている者は、ひとりとしていない。毛むくじゃらの逞しい半身をあらわにした乱杭歯の男に、しなびた身体をフードつきマントに包んだ老婆、全身を青色に染めあげた痩せぎすの男に、色香の塊のような女――その全員が、世にもあやしげな雰囲気をかもし出していた。
「ずいぶん長いこと眠りこけていたものだな! そのぶん、楽しませていただこうか!」
乱杭歯の男が、ガハハと笑い声を響かせた。胸にも腹にも獣のような黒い毛が渦巻いているというのに、頭だけは禿げあがっている。波打つ髭からこぼれる黄色い乱杭歯は、肉食獣のような巨大さであった。
「俺はこの一座の頭で、不死身のダルドロという者だ! お前さんは、自分の名前すら思い出せないそうだな! まったく、おかしな拾い物をしたもんだ!」
「ああ。何にせよ、生命を救ってもらって感謝してるよ。……ペテルとやら、そろそろ下ろしてもらえるかい?」
「あ、は、はい」
他の者たちが脇にどいたため、彼はダルドロの向かいに下ろされることになった。
彼とダルドロの間には盛大に焚火が焚かれており、その場の者たちの異形を赤々と照らし出している。周囲には三台の荷車が並べられて、六頭ものトトスが丸くなって眠りこけていた。
おそらくは、辺境区域の荒野の真っ只中であるのだろう。彼らを乗せた荷車はこの七日間、ひたすら辺境の地を駆けていたのだ。記憶を失ってしまった彼でも、それがあまり当たり前の話でないことは理解できていた。
「座ってるぶんには、心配もいらなそうだねェ。ペテル、念のためにアンタが背中を守ってさしあげなァ」
と、音もなく忍び寄ってきた童女ベラが、彼の隣に腰を落ち着ける。彼の背後には、大男のペテルが屈みこんだ。
「さて! それじゃあ話を聞かせてもらいたいもんだが……お前さんは、本当に何も覚えちゃいねえのかい?」
「ああ。気づいたら、そこの荷車で寝かされてたんだ。どうして自分がこんな有り様なのか、そもそも自分がどこのどいつなのかもさっぱりだよ」
「ふうん。実のところ、お前さんはずいぶんな騒ぎに巻き込まれたようだぜ。なんせ、お前さんと同じ場所には十を数える亡骸が転がってたんだからな」
「え……そいつは、本当かい?」
「おうよ。俺たちはあの日の夜もこうしてのんびり野営してたんだが、いきなり色とりどりの炎が空にぶちまけられてよ。仰天して駆けつけてみたら、辺境のど真ん中に立派な塀に囲まれた丸太小屋があって……その二階がまるまる吹っ飛んでたあげく、半分ぐらいの亡骸は丸焦げになってたんだよ」
ダルドロのそんな言葉に、彼は「ああ」と右目を閉ざした。
「実は俺も、五色に輝く爆炎だけは覚えてたんだ。ありゃあ夢じゃなかったんだな」
「おうよ。ありゃあ、綺麗だったなぁ。まるでこの世の終わりみたいだったぜ!」
ダルドロは黄色い乱杭歯を剥き出しにして、にっと笑った。
「ま、それでお前さんもそんな姿になっちまったわけだが、生命があっただけ重畳だ! 他の連中は、首が吹き飛んでるのもあったぐらいだからな! ……いったいあそこでナニがあったのか、お前さんはさっぱり覚えてねえのかい?」
「ああ。だけどまあ……火薬ってのは、危ないもんだ。どこかの誰かが、取り扱いを間違えたんだろうよ」
彼の言葉に、ダルドロはぐっと身を乗り出した。
「そのがんぱうだぁってのは、何なんだい? 聞き覚えのねえ名前だな」
「え? 火薬は火薬だよ。火をつけると盛大に燃えあがる、あれさ」
ダルドロはにんまり笑いながら、周囲の仲間たちを見回した。
「だとよ! 誰かそんな愉快なもんに聞き覚えがあるやつはいるか?」
その答えは、ノーであった。
ダルドロはいっそう愉快げに笑いながら、彼の背後に呼びかける。
「おい、でかぶつ。例のアレを運んできな」
「あ、は、はい。わかりました」
のそりと巨体を起こしたペテルが、荷車のほうに近づいていく。そこから持ち出されたのは、巨大な木箱であった。
「こいつは一階の倉庫に仕舞われてたもんだ。火事場泥棒なんざ趣味じゃねえが、ま、死人にお宝なんざ必要ねえだろうしよ」
悪びれた様子もなく、ダルドロはそう言った。
「ただ、これがいったいどういうシロモノなのか見当がつかなかったんだ。お前さんなら、どうだろうな?」
ダルドロが顎をしゃくると、ペテルが木箱の蓋を開く。
その中身を覗き込んだ彼は、「ああ」とうなずいた。
「こいつは、火薬の原料だな。硫黄華に硝石に木炭に……ああ、コルの石に銀モドキもそろってるじゃねえか。これだけありゃあ、ずいぶん立派な火薬が作れるよ」
「へえ。それじゃあ、こいつが五色の炎をあげながら爆発するわけかい?」
「それには、調合が必要だがね。ただ、硫黄華に火の粉でも入ったら一大事だ。もっと焚火から遠ざけたほうがいいぜ」
「ふうん」と、ダルドロは目を細めた。
「なんも覚えてねえわりには、ずいぶん口が回るじゃねえか。これで自分の名前も思い出せねえってのは、ちょいと納得がいかねえなぁ」
「ええ? 火薬の扱いなんて、そうそう忘れるもんじゃねえだろうさ。俺は自分の名前も思い出せねえけど、あれがトトスであれが荷車だってことは覚えてる。そいつとおんなじこったろうよ」
「つまりアンタにとって、この火薬ってェのはトトスや荷車ぐらい当たり前のモンだってこったねェ」
これまで無言であった童女ベラが、笑いを含んだ声をあげた。
「そいつが普通の話じゃないってコトをわきまえてりゃあ、こんなぺらぺらしゃべるワケがないさァ。つまり、このギャア坊は根っから正直に語ってるってこったろうよォ」
「ふん……それなら、いいんだがな」
ダルドロは目を細めたまま、また彼の顔を覗き込んできた。
「なあ、客人。旅芸人なんてのは、はみだしもんの集まりだ。それでもって、ケレンを売るのが商売だからよ。上手な嘘でお客をだまくらかして、楽しんでもらうのが生業だ。だからこそ、仲間内で虚言を吐くのはご法度なんだよ」
「ああ。俺も生命の恩人に、嘘なんざつきゃしねえよ」
「本当かい? 言いたくねえことは、言う必要もねえんだ。誰だって、探られたくねえ昔話のひとつやふたつはあるだろうからな。そんなもんは詮索しないのが、仲間内の仁義ってもんよ。だから余計に、虚言はご法度なわけだな」
そう言って、ダルドロはもしゃもしゃの黒い髭をまさぐった。
「そんな前置きを聞いてもらった上で、もういっぺん聞かせてもらうぜ? お前さんは、なんの虚言も吐いてねえってんだな?」
「ああ。それだけは、確かなこった」
ダルドロは大きくうなずくと、童女ベラのほうに視線を向けた。
「ベラ。新入りを連れてきな」
「ええ? アイツはとっくに寝入ってるんじゃないかねェ」
「だったら、叩き起こすんだよ。この愉快な客人にとっては、ここが運命の分かれ道なんだからなぁ」
童女ベラはひとつ肩をすくめると、ふわりと音もなく身を起こす。そして、先刻とは異なる荷車に近づいていった。
そこから連れ出されてきたのは、これまた奇妙な男である。
東の民のようなフードつきマントですっぽり全身を覆い隠した、痩せぎすの男だ。ただそのフードの陰から覗く顔には、奇怪な紋様がびっしりと刻みつけられていた。
「わたしに、何かご用事で……?」
老人のようにしわがれた声で、その男はそう言った。
あるいは、本当に老人なのだろうか。その紋様だらけの顔はげっそりとやつれて皺深いため、年齢の見当をつけることも難しかった。
「この客人は、自分の名前すら思い出せねえそうだ。お前さんの手管で、客人の素性を探ってさしあげな」
ダルドロの言葉に、男は細長い首を巡らせる。
そこで彼は、ようやく気づいた。この男は、盲目であったのだ。薄く開かれたまぶたの隙間では、白く濁った瞳が虚ろな陰りをたたえていた。
「客人とは……そこな赤子のことでしょうか……?」
「赤子? 赤子なんざ、どこにいるってんだよ?」
「赤子ではない……? しかし、わたしに見えるのは、生まれたてのかそけき星の瞬きのみでございます……この世に生まれ落ちてから、いまだに十日も経ってはいないのではないでしょうか……?」
そのように語る男の見えない目は、まっすぐ彼のほうに向けられている。
それでダルドロが毛虫のような眉をひそめると、童女ベラが咽喉で笑った。
「ねェ、ライラノス。人が生きたまま生まれ変わったら、そいつはどんな星を授かるんだろうねェ」
「は……生きたまま生まれ変わる……とは……?」
「たとえば、とんでもない災難にあって、これまでの人生をぜェんぶ忘れちまうとかさァ。そんなヤツは、赤ん坊も同然だろォ?」
ライラノスと呼ばれた不気味な男は、「ああ……」と嘆息をこぼした。
「そのような御方と巡りあったことはございませんので、確たることは言えませんが……それまでの自分が死に、すべての因果から解き放たれた上で、新たな人間として生きることになったならば……これまでとまったく異なる星を授かることになり、赤ん坊のごとき瞬きを見せることもありえるやもしれません……」
「だとさァ」と、童女ベラはダルドロに妖艶な微笑を向ける。
ダルドロは高笑いをあげて、自分の膝をぴしゃんと打った。
「面白い! こいつは本当にすべての記憶を失って、新たな人間として生まれ変わったってことか! こいつは不死身のダルドロ様も兜をぬぐしかねえようだな!」
「はあ……とりあえず、俺の言葉は信じてもらえたんで?」
「信じよう! そのほうが、面白そうだからな!」
ダルドロが笑い続けると、他の面々も果実酒の土瓶を振り上げて騒ぎ始めた。
やはり、異形の群れである。しかし、彼が恐怖することはなかった。この世の道理も通用しなそうなはみだしものの集団が、彼には妙に慕わしく思えたのだ。
「それじゃあよ、いっそお前さんもこの一座に仲間入りしちゃどうだい?」
さらにダルドロがそんな言葉を語ると、彼の胸には得体の知れない感情が渦巻いた。
「俺が……旅芸人の一座に? でも俺は、自分の足で歩くこともままならねえ体たらくだぜ?」
「そんなもん、そのうち何とかなるだろうよ! もしもお前さんが色とりどりの炎を生み出せるようになりゃあ、立派な芸だ! 見物人も、さぞかし喜ぶだろうぜ!」
その瞬間、思いがけない事態が生じた。
彼の片方しかない目から、熱いものがあふれかえったのだ。
「おやおや。座長の申し出が、そんなに気に食わなかったのかァい? 泣くほど嫌なら、無理するこたァないんだよォ」
と、童女ベラがくすくすと笑いながら、彼の背中を優しく撫でてくる。
彼は気持ちも定まらないまま、右腕に巻かれた包帯で顔をぬぐった。
「いや……俺にもよくわからねえんだけど……なんだか、ようやく自分の家に戻れたような心地で……ほっとしちまったんだ」
「うわははは! こんなはみだしもんの群れを家族扱いとは、恐れ入ったぜ! どうやらお前さんも、根っからはみだしもんのようだな!」
ダルドロは豪快に笑い、他の面々も陽気に騒ぎたてる。
すると、童女ベラが横から彼の顔を覗き込んできた。
「じゃ、アンタにも名前が必要だねェ。ギャムレイ……なんてのは、どうだい?」
「ギャムレイ? そいつは、どこから出てきた名前なんだ?」
「アタシが昔に可愛がってた、鴉の名前さァ。そいつはラグールの鷹に襲われて、片方の目ん玉と翼を失っちまったんだよォ。それなら、アンタにぴったりの名前だと思ってねェ」
彼は胸の内に渦巻く感情を持て余しながら、「そうか」と笑った。
「そいつはけっこうな巡りあわせだな。ありがたく頂戴するよ、ベラの姐さん」
彼の言葉に、童女ベラはにっと唇を吊り上げて微笑む。
それはいつも通りの妖艶な微笑であったが、ただその切れ長の黒い目にはずいぶん温かな光が灯されていた。
そうして記憶と左目と左腕を失った彼は、その七日後に新たな名前と新たな運命を授かることになったのだった。




