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(仮)アルドの異世界転生  作者: ばうお


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547.決意

547.決意






「事はそう簡単では無い。アルド、逆に聞くが、お前が領主……いや、国の中枢にいる者だと仮定して、世界の地図を手に入れたらどうする? しかも自分が住む土地は貧しく、他に豊かな土地があると知ったら? 更に空を歩く魔道具があり、その製法を知る者がいると知ったら?」


祖父さんの言いたい事が何となく分かってきた。

要は、今回 漏れた情報は、世界に争いを呼ぶ可能性があるって事か……確かにマナスポットが壊れているティリシアの生活は厳しい。


海を越える必要があるとしても、確実に豊かな土地があるのなら、そこを目指すのは為政者として間違っていない。

しかし口で言うほど簡単な事では無いはずなんだが……前世の現代日本なら兎も角、この世界で100キロもの距離がある海を越えるなど出来るのだろうか?


それに空間蹴りの魔道具も、製法を知っているのはオレと魔道具の師匠であるローザだけだ。それこそ情報が洩れるなど考えられない。


「お祖父様、地図があってもアルジャナへは海を越える必要があります。空間蹴りの魔道具も、製法を知るのは僕とローザだけ。そこまで……1つの街を焼くほど、心配する必要があるのですか?」

「確かにアルジャナはお前の言う通りかもしれん。ではグレートフェンリルはどうだ? あの地図はグレートフェンリル内の街道から街の位置、規模まで正確に載っている。国全てを奪うのは無理だとしても、1つの領程度なら奪えるのではないか?」


確かに祖父さんの言う事は分かる。要はあの地図の持つ危険性……争いが広がる可能性を秘めていると言いたいのだろう。

しかし今なら、秘密裡に全てを焼き尽くす事が出来ると……祖父さんの言いたい事は分かった。


確かに可能性で言えば、何年か後にティリシアがグレートフェンリルの一部を奪うような事件が起きるのかもしれない。

しかし、そんな争いが起きないように、ルイスはティリシアのマナスポットを修復しようと頑張っていたのだ。


そもそも、クエンがルイスに協力さえしていれば、全てが丸く収まったはずなのに……改めて、あの小馬鹿にしたような、にやけ顔が思い出されて怒りが沸いて来る。


「お祖父様の言いたい事は分かりました。あの地図は、それほど危険な物だと言いたいのですね? それこそ1つの街程度、燃やしてでも葬り去る必要があるほどに……」

「そうだ。せめてティリシア内だけの地図であれば、危険性は段違いであったのだがな……」


確かにルイス達に持たせている地図は、世界地図1枚に各国の詳細が1枚ずつ……しかもライラが新しい物を書き上げる度に、複製を渡しているため、精度はかなりの物になっている。

以前、ゴブリン事件の際に王家から借りた地図など、比較にならないほどだ。


「お祖父様の言う事は分かりますが……かと言って、何の罪もない魔族ごと街を焼き尽くすなど、人が行って良い所業じゃありません」

「お前達は使徒だ。世界を安定に導く責任と義務がある……お前達2人であれば、精霊様もお許しになると思うのだがな」


「そうだとしても……やっぱり僕には出来ません」

「そうか……エルファスも同じ意見か?」

「ぼ、僕も、基本は兄さまと同じです。でも……それが僕の使命だと言うなら……う、受け入れようと思います」


「エル?! お前、自分が何を言ってるか分かっているのか? 何の罪も無い人を何万人も殺すんだぞ? そんな事、誰であってもやって良い事じゃない!」

「でも! 僕達が今やらないと、後でその何倍も人が死ぬかもしれないんですよ? だったら……」


「間違えるな、エル。そうならないようにするのがオレ達の役目だ。街は焼かない、将来の憂いも摘み取る。それを目指してこそ救世主じゃないのか? 罪の無い人の屍の上に作った平和が何になる。そんな物、オレは認めない。どうしてもって言うなら、オレを倒してからやってくれ」

「に、兄さまを……そんな事……」


オレはエルから祖父さんへ向き直り、改めて決意を話していく。


「お祖父様、地図は必ず奪い返します。複製があれば、それも含めて処分します。ですので、ルイスの仕事を僕に引き継がせてください。アイツが元気になった時に、お前の頑張りは無駄じゃなかったぞって言ってやりたいんです。お願いします!」

「ふぅ、その甘さも資質の内か……以前、手紙にも書いたはずだ。後の全てに責任を持つのであれば好きにやれと。お前達が真剣に悩んで決めた事なら反対はせん…………それで具体的にどうするつもりだ?」


「はい……恐らくクエンと執事のグースは殺す事になるでしょう。あの2人は野心が強すぎますから。生きていればきっと邪魔になる……その上でティリシアの貴族達へ僕が今代の使徒だと明かし、クエンの知り得た情報の破棄の対価として、ティリシアのマナスポットを修復しようと思います」

「なるほど……真正面から事に当たるか……確かに救世主たるお前達にはそれが正しい道なのだろうな。さっきの発言は撤回する。生い先短いジジイの戯言だと思って忘れてくれ」


「そんな事……お祖父様の言われる事も分かるのです……ただ、やっぱり僕は、何の罪も無い人を犠牲にはしたく無い。我儘を言って申し訳ありません」

「良い。お前達には、もうワシなど必要無いのだろう。最近、どうも集中が続かんくてな……政務が億劫になってきた。そろそろワシは日がな釣りでもして過ごそうと思う」


これはどう答えるのが良い? 祖父さんにはノンビリ過ごしてもらいたいのは事実だが、「はい、そうですね」と答えれば、「アナタはもう必要ありません」と言ってるのと同義なのだ。

言葉を選んでいるオレを尻目に、エルは祖父さんへ少し寂しそうな顔を向けながら口を開く。


「お祖父さま、今までありがとうございました。本来なら当主を引退したお祖父さまが、政務を行う必要など無かったのです。僕がもっとしっかりしていれば……」

「エルファス、お前はアルドと共に、使徒の仕事もしているのだ。他の者より仕事を覚えるのに時間がかかるのは当たり前の事。お前は十分に頑張っている。だからそんなに申し訳なさそうな顔をするな。それにお前と机を並べた数年間は楽しかったぞ。必死に政務を学ぶ姿を見て、自分の若い頃を思い出していた……お前とマールの仲睦まじい姿は、ワシが終ぞ適わなかった夢だ。妻を大切にしろ。それがお前自身の幸せに繋がる」


「はい、肝に銘じます」


少しの静寂が訪れる中、祖父さんは小さく笑みを浮かべて更に口を開く。


「お前達がどう動くとしても、あまり時間は無いはずだ。ヨシュにはワシから伝えておく。お前達は今一番 必要な事をしろ」

「分かりました。アオとドライアドにルイスを診せたら、直ぐ準備に取り掛かります。先ずは地図の奪還……そしてクエンとグースの始末……その後、カナリス伯爵経由で、南部と西部の皇家へマナスポット修復を打診します」


「分かった。ヨシュアにはそう伝えておく……後はサンドラだな。ルイスベル君の件、サンドラ卿とリーザス夫人にどう伝えたものか……」

「そこはオリビアとも相談します。事は魔族の皇帝の座をかけた権力争いである以上、軽はずみな事はできません。でも親が子の負傷を知らされないのは違うはずです。表沙汰にできないのなら、せめて内々にだけでも伝えようかと思います」


「そうだな……それもユシュアには伝えておこう。サンドラ家の件はお前に任せる。サンドラ卿がルイスベル君に会いたいと言うのなら、マナスポットの使用も許可する」

「はい、オリビアへそう伝えます」


こうして今後の方針は決まったのだが、先ずはルイスだ。同行を申し出たエルと一緒に、ルイスが眠る客間へと急いだのであった。



◇◇◇



勢いのまま客間の扉を開けると、部屋の中には沢山の人が心配そうにルイスを見つめていた。

ベッドに寝かされているルイスの手を握るラヴィさんを筆頭に、メロウさんと片腕のネロ、そして妹であるオリビアと付き添いのライラ、全員がルイスを心から心配しているのが良く分かる。


そんな中、いきなり部屋へ入ってきたオレへ、ラヴィさんの悲壮な声が響く。


「アルド! ルイスは……ルイスは大丈夫なのか? 起こしても全然起きないんだ……このまま目を覚まさなかったら……」

「ラヴィさん、落ちついて下さい。ルイスが寝てるのは、アシェラが睡眠を撃ち込んだからです。時間が経てば目を覚まします」


「そ、そうか……良かった。てっきりこのまま目を覚まさないんじゃって……」


くっ……確かに時間が経てば、ルイスは目覚めるだろうが……その時、容態を知ったら……

早目に言うべきだ……でもこんなに嬉しそうなラヴィさんに何て言えば良い? 「ルイスが起きても会話はできませんよ」ってそう言うのか?


どうしても踏ん切りが付かないオレを、オリビアは唇を引き結んで見つめていた。

そして、意を決したようにゆっくりと口を開く。


「アルド、アナタのその様子……何か言い難い事があるのですね? 私は大丈夫です。聞かせてもらえませんか?」


どうやらオリビアに隠し事は出来ないみたいだ。心苦しいのは確かだが、話す踏ん切りがついた事に少しだけ安堵しつつ、ミュラーの街での出来事を話していった。


「実は………………」


途中、何度もラヴィさんから話を遮られたが、その都度オリビアは「そこまでルイスを案じてくれてありがとうございます。ですが先ずはアルドの話を聞きましょう」と、宥めてくれた。

そして全てを話し終えた後、ラヴィだけで無くネロ、メロウさんもが、「どうせバレるなら、最初から全員で空を駆けて逃げるべきだった」と悔しそうに唇を噛みしめている。


3人が言う事は分かるが、それは結果論だ。その時その時で最善を選んで行動している以上、誰かを責めるのは違う。

それよりこれからの事……過去は誰にも変えられない。だったら今回の失敗を踏まえて、どう行動するかが大切になってくるはずだ。


「皆さん、今回の一連で思い知りました。僕が作ってる地図は、想像よりずっと危険な物だったようです。ただマナスポットで移動する以上、やはり地図無しでは支障がある。ですので、持って行く地図は最低限……指輪の間の隣にライラの地図部屋がありますので、そこから必要最低限の地図だけを持って飛ぶようにしたいと思います」

「分かった。私はそれで構わない。そんな事よりルイスは……アルドなら何とか出来るんじゃないか?」


ラヴィは地図の事などより、ルイスの容態しか関心が無さそうだ。


「今、アシェラがルーシェさんと回復魔法の大家であるグラン家を呼んでます。それとは別にアオとドライアドにも良い方法が無いかを聞くつもりです。ですので、もう少しだけ待ってください」

「精霊様なら今 呼べば良いじゃないか! 頼む、アルド。ルイスを……ルイスを助けてくれ」


先ずはグラン家に診てもらおうと思っていたが、ラヴィの言う事は尤もだ。

万が一、無駄骨になってしまった場合はクリスさんとルーシェさんには誠心誠意 謝ろう。


「分かりました。確かに急いだ方が良いですね……アオを呼びます」

「ありがとう、アルド」


ラヴィに促されるまま、祈るようにオレは指輪へ魔力を注いだのであった。





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― 新着の感想 ―
魔族のマナスポットの修復を止めれば良いのでは? ネットではないけど、一度、手に渡った地図は広がるんじゃないかな? 隠したとしても、全部抑えれるとも思わないし、見た人の頭の中に残るからね アレを連れて…
これまでの魔族関係者を見た限りの印象では、アルド達使徒が生きている間は大丈夫でしょうが、死後は妖精族と魔族の間で戦争になりそうだなと思いました。 仮にマナスポットを修復してもその恩を遠い将来で仇で返し…
ここまでくるとアルドくんらしいので私はありかな^ ^ 問題は地図の完全破棄をどうやって実現するのか? 写しの存在はあるのでしょうか? もしあればマナスポット修復後も写しをコッソリ残そうとするでしょう。…
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