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魔力を見る目の制御

 三つある台座は床と一体化してしまっているようで、動かしようの無いものだった。真っ白な石材に似た材質で、下部は広がって床に繋がっている。その形は大雑把に言えば三角柱で、角は丸く加工されていて滑らかだ。


 上面には紋章が描き込まれていて、光を放っている。その上に小振りのショルダーバッグと腕輪、それに懐中時計が置かれていた。


 ソニアさんはまず、ショルダーバッグを手に取った。僅かに青い白の革製のバッグで、かぶせをぱちりと金具で閉じる形のものだ。その金具には逆三角形の紋章が描かれていて、白銀色に煌めく。使われている金具はどれも同じ色で、肩にかける革紐は長さを調整出来る作りになっている。


「開かないな」


 ソニアさんが金具に手をかけて開けようとしているけれど、一向に開く気配が無かった。引っ張って開けるのではないのかな?


 受け取って試しに引いてみると、ぱちりと小気味良い音を立てて外れて開いた。中には何も入っていない。


「簡単に開いたな」


「そうだね。もしかして、この紋章のせい?」


「そうかもしれない。良い物を手に入れたな、ハルト」


「もらって良いの?」


「当然だろう?」


 まあ、僕じゃないと開かないしな。何故なのかはわからないけど。また魔眼かな? 魔眼に反応して開いてるとか?


 鞄はあるからなと考えたけど、ふとマリエラのハンドバッグを思い出した。あれはたくさん物が入る仕組みになっていた。これももしかしてそうなんじゃないか?


 試しに自分の鞄を入れようとしてみると、みるみる縮小されて中に収まった。やはりそうだったらしい。


「やはりか」


「ソニアさんもそう思ってた?」


「人間の遺跡からは、幾つかそれが発見されるからな。使える者が限られているというのは、初めてだが」


 クロークの下に、袈裟にかけておく。これから荷物は楽になるな。




 次には懐中時計を見た。銀細工で装飾はほとんど無い、シンプルな作りだ。裏側に紋章が刻んである。


 針は十二時八十四分を指している。そして、動いている。動力、何よ?


 しかし驚くべきところはそこではなかった。この懐中時計は、時計の針や文字が表示されているものだったんだ。つまりそこに実物の針などは無く、携帯端末なんかのように画面に表示される形の物だ。


「これはすごいな。人間は千年前に絶滅したというから、最低でも千年は動き続けているのか」


 確かにそういう事になるな。台座の光は、もしかして魔力か? それを使って動いている? 文字が当時の人間のものだから読めないけど、時計としての形は知っている物と変わらないから時間を知る事は出来る。


 でも問題はそこじゃないんだ。こんな物が存在している、それが一番重要なところだ。これ、時計以外にも何か表示出来るんじゃないか? でも文字が読めないか。宝の持ち腐れだな……。


 その文字については、一から二十までならこの時計の表示を見る事で覚えられるね。まあ、それはあまり意味が無いしわりとどうでも良いけど。


 で、何故当然のように僕に渡す? 要らない?




 最後は腕輪だ。これも銀細工で、幅広に銀の糸を編んだような作り方をされている。ワンポイントに金具が付いていて、紋章はそこにあった。


 ソニアさんが恐る恐る腕にはめた。特に変わった様子は無い。


「これは、恐らくだが体力や魔力を回復してくれる腕輪だ。疲労も消耗した魔力も少しずつだが癒えている気がする」


「それならソニアさん持っておきなよ」


「良いのか!?」


「驚く事? 僕は鞄もらったしさ」


「しかし、ここはハルトにしか開けない部屋だったのだ。ハルトでなければ、見つける事すら出来ない部屋だろう。ならば、この品々はお前が受け継ぐべきじゃないか?」


「良いからもらっておきなよ。二人で来たんだからさ」


 でもこれ、レベッカさん達に悪いな。抜け駆けみたい。いや、みたいでなくてそのものか。でも、僕らだから十階から上に来れてる面もあるし、ソニアさんも言ったけど僕じゃなきゃ開かない宝物庫だしね、ここは。言い訳がましいか、あはは。


「懐中時計も要る?」


「それはハルトのものだ。私はこの腕輪だって受け取る事に抵抗があるのだぞ」


「大袈裟なんだから」


 時計は首から下げて懐に入れた。部屋の中は、この三つの他には何も見当たらない。宝が三つあったわけだけど、他の遺跡はどんな風に隠されているのかな?


 ソニアさんに聞いてみると、もっと普通なのだそうだ。


「下の階層にあったような普通の部屋で、残骸に埋もれているところを発見されたりするな。隠し扉も時折発見されるが、ここのようなものは聞いた事が無い」


「この遺跡は、随分特殊なんだね」


 初めての遺跡でこうだと、他の遺跡に潜る事があったとして物足りなく感じてしまうかもな。


「魔道具をわざわざこんな部屋に隠していた事も、特殊と言えるな。何か秘密でもあるのだろうか」


「魔道具って呼ぶんだね。何か、他には無い力を秘めていたり?」


 浪漫があるね。便利な力だと良いなあ。




 十階の壁とは違って閉じ込められる事も無く、無事に部屋からは出られた。一応閉じておく。それから、二つある部屋へと向かった。


 まずは一方を覗く。明かりに照らされた部屋は広い。ここは書庫であるようで、本棚が幾つも並んでいてたくさんの書物が綺麗に収められていた。その内の一冊を引き抜こうとしてみたところ、やはり脆くなっていて今にも破れてしまいそうだった。


 かなりの蔵書数なんだけど、この内の何冊が読めるだろうか。それを探すにはかなりの時間を要する。さすがにそんな事をするつもりは無い。僕らは書庫を出て、もう一方の部屋へと向かう。


 こちらは個人の私室なのか、大きなベッドに幾つかの棚、テーブルや椅子など、立派な物が揃っている。ただ、やはりぼろぼろになっていて、どれもこれも使用には耐えられない。


 この部屋にも、紋章の浮かび上がった壁が一角にあった。開けてみるとその先には階段があり、一階へと続いているようだった。


「先に昇降機の方から上がってみる?」


「構わないぞ」


 隠された階段なんて、先に進む感じしかしない。そしたら後回しにするでしょ。


 ところが昇降機はこの二階までしか無かった。一階には上がれないらしい。なので結局、階段に戻る事となった。







 その階段へと続く壁を開けて通り抜けて進むと、急速に魔力の濃度が上がった。辺りが真っ白に見える程の力に包まれ、責め苛まれるように圧迫される。あまりの眩しさに目眩を起こし、強い圧力に押さえ付けられ膝を屈する。思わず呻き、這いつくばるように手も突いてしまった。


「どうした!?」


「魔力が、強過ぎる……!」


 ソニアさんが僕を抱き上げて一旦部屋へと戻る。そうすれば楽にはなって、一息吐く事が出来た。


 遺跡の中枢が、いよいよ近いんだ。魔力が集束していて、魔眼が影響を受け過ぎている。


「大地から吸い上げられた魔力が、あの先に集められているみたいだ。もう少しなのに……」


「厄介なものだな、魔眼は。その力は調整出来ないのか? 弱めておけば受ける影響も軽く出来るのではないか?」


 そう言えば魔法とは切り離して考えていたせいで、魔眼をコントロールするなんて考えた事が無かったな。出来るかどうかわからないけど、やるだけやってみようか。


 出来るとしたら魔法を調整するのと同じようにやるんだろう。まずは名前の通りに、眼に送られる魔力を少なくしようと試してみる。すると途端に周りが暗くなった。明かりに照らされる物しか見えず、暗闇にソニアさんの顔が浮かんでいる。成功と言えば成功か。ただ、このままでは魔力を見る事と感じる事が切り離せていない。完全な調整とは言えないな。


 魔力は多少見えるようにしておきたいけど、感じる圧力は最小に抑えたいんだ。だから、もう少し考えないとだね。


 この感覚が肉体に備わっているものなら、調整なんて意識的には出来ないだろう。けれど魔力を源泉とするものなら、魔力による調整が可能のはずだ。


 魔法に形を与えるには、想像する事が一番大切だ。けれど制御については、魔力そのものへ働きかけるのが一番確実だ。そのためには、自分の中で各種の要素を明確にする事が効果的だったりする。それは出力や距離、範囲などで考えられるけど、魔眼も同じ事が出来るかもしれない。


 このイメージには、風術で行った感知の魔法が活用出来た。感知の感覚を抑えたままにし、視覚への反映を強める。これは今は、眩しくて見えないなんて事が無い程度に留めておく。すると暗闇だった周囲は薄暗いくらいになって、ソニアさんの姿も上から下まで全身が見えるようになった。


 自分の魔力を手の平に出して見てみると、薄く青が見える程度で物凄く見辛い。ちょっと下げ過ぎたか。ただ、調整するのは向こう側を見ながらだな。眩しくない程度に見えるよう合わせないといけない。


 ともあれ、魔眼の制御が可能になった。これは今後、大きな意味を持つ事になるだろう。また色々考えて、試していきたい。


「出来るようになったよ。助言ありがとね」


「そうか。役に立てたなら、私も嬉しい」


 そう言って、ソニアさんは微笑む。上手くいったと聞いて安堵したのか、その表情から案ずるような色は消えていた。


 さっきの影達への対処に続き、またも彼女に助けられたな。もう頭上がらないぞ。




 調節もしないとならないので、僕らはいよいよ奥へと進む事にした。


 隠された階段の前まで行き、まずは魔眼の見える範囲を調整する。自分の魔力も指先に見ながら、見易くしておいた。


 これで万全だろう。圧迫は全く感じないし、辺りに満ちる白い魔力にも視界は覆われていない。そして驚く事があった。魔力の回復速度が結構早い。


 多分これまで魔眼に割いていた消費が少なくなって、回復量が増えたんだ。他の魔法使いと比べてないからどの程度早いのか明確にはわからないけど、大雑把にこれまでの倍くらいには早くなってる。


 起きた状態で半日かけて半分回復するくらいの速度だったから、この状態なら半日で全快になるな。でも魔眼は使っていた方が安全だから、まあ今だけか。


 必要が無い時に調整して回復を優先したりは出来るから、単純に便利になった。素晴らしい。


 内心で感激しながら、ゆっくり静かに階段を上って行く。二人並んで、警戒しながら。


 風術によれば、この先には大きく広い空間が広がっている。それは位置や広さ、形を考えると砂時計に似ていた地上部分だ。恐らく地下一階から地上まで、吹き抜けで繋がっている。


 そしてこの広い空間に、吸い上げられた魔力が貯め込まれている。その理由なんかも、知れると良いんだけど。


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