↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
決戦魔獣王城
96/99

救出作戦2


バーバラが3体目の石像を発見した頃、

カイン王、キャスバル王子、エッグ王子の3人は、

魔獣に対してフェイントを交えた波状攻撃を繰り返していた。

魔獣の動きは小さく、そして素早かった。

カイン王は信じていた。

機会は必ず訪れると。


---


連合暦20年8月14日夜


魔獣王討伐隊がカイン王国を出発する前日、

カイン王、レミューズとバーバラの3人の軍議の後に、

キャスバル王子、エッグ王子、ドレアルの3人がカイン王に

呼び出された。

軍議室には、カイン王とバーバラが座っていた。

霧の魔法については、秘密にすることとした。

これはバーバラの提言であった。

会話や考えが読まれる可能性を考えた場合、

知るものを極力少なくすることが望ましいということだ。

万が一ということを考え、これは採用された。


軍議は夜遅くまで続けられた。

そして以下の事が決定した。

1)攻撃に関しては、魔獣の注意を引く事と魔獣の手数を

  減らす事であり、極力防御を優先とする。

2)一人を補助役とし、回復の巻物、補助魔法を唱える。

  魔獣の視認を良くするために、光の魔法を魔獣に付ける。

3)攻撃役の3人が魔獣を取り囲み、波状攻撃を仕掛ける。

4)魔獣の注意を攻撃役の3人が引き受けている間に、

  解呪役が石像を探しだし、解呪を行う。

5)機会があれば攻撃を行うが、その役は最も剣術に優れた者

  とする。


最終的に攻撃役は、カイン王、キャスバル王子、エッグ王子。

補助役はドレアル。

解呪役はバーバラに決まった。

そして、剣術に最も優れた者は、カイン王だった。


---


カイン王:(いずれ痺れを切らして、

     大振りになるときが必ず来る。

     それを待って、攻撃を仕掛ける。)


それは、予想よりも早く訪れた。

攻撃役の3人は、魔法で強化された履物を履いていた。

それはバランスを保ち、滑りにくくする効果を

付与したものだった。

余程の事がない限り、バランスを崩すことは無い。

ところが、エッグ王子が着地の瞬間バランスを崩したのだ。

魔獣はその時を逃さなかった。

鎌を大きく振りかぶると、エッグ王子に向けて回転するように

振り回した。

この時、キャスバル王子は予め予測していたのか

エッグ王子の傍らに立っていた。

剣身で攻撃を正面から受け止める。

いや、受け止めたのではない。

剣身の背に左腕の小手を宛がい、顔の前に置いた。

そして、鎌の刃を鍔(つば)の近くで受け止めた。

小手を支点にして柄頭を持ち上げ、同時に膝を曲げ中腰になる。

剣先は頭の上を通り越し、頭の後ろに伸びた。

鎌の刃はそのまま滑るように剣先へと流れて行く。

この時エッグ王子は、体制を立て直しキャスバル王子を

支える体制に入っていた。


カイン王はこの光景を目にした時、それを理解した。

これは偶然ではない。

2人が機会を作り出しのだと。


---


連合暦20年8月14日夜、軍議終了後


キャスバル王子とエッグ王子は、不機嫌だった。


エッグ王子:「これでは、我々は完全に脇役だな。」

キャスバル王子:「確かにそうだな。

        これでは父上に顔向けできない。」

エッグ王子:「その通りだ。

      死は恐れん。

      何とかならないものか。」

キャスバル王子:「ならば、2人で可能な作戦を考えないか?」

エッグ王子:「それはいい。

      早速始めるとしよう。」


2人は、作戦に支障をきたさない範囲で可能な方法を考えた。

そして導き出した答えが、攻撃の機会を作る事だった。

1人がわざと隙を作り、魔獣の攻撃を誘う。

残りの1人がその攻撃を受け流すというものであり、

カイン王はその機会を見逃さないだろうと考えたのだ。


---


キャスバル王子の構えた剣身の上を、

鎌の刃が滑るように流れて行く。

魔獣は己を支点にしてコマの様に回転する動きをしていた。

カイン王は、その一瞬を見逃さなかった。

魔獣に突進した。

そして、飛び上がると同時に鎌を持つ腕に

渾身の一撃を叩き込んだ。

回転した力は、剣の威力を確実に増大させていた。

剣身はチーズでも切るように、魔獣の肘に吸い込まれた。

剣身は腕の反対側から出現すると、腕を肘部分から両断した。

それは見事としか言いようのない切り口だった。

支えを失った腕と鎌は、勢いを残したまま

霧の中へと消えていった。

一瞬の間を置き、魔獣の腕から血が噴き出した。


バーバラは、尋常ではない速度で近づいてくる

巨大な黒い影を見た。

反射的にしゃがみ込んだ。

何故しゃがみ込んだのかはわからないが、

身体が勝手に動いたのだ。

そして、頭の上を何かが通過するのを風として感じた。

その物体は1体の石像に激突し、石像の破片が飛び散った。

それは巨大な鎌だった。

それは石像に深々と突き刺さっていたのだ。


一瞬の思考停止の後、涙が溢れ出た。

バーバラ:(ここで、止まるわけにはいかない。)

涙でぼやける視界のなか、バーバラは最後の1体の近くに

移動し、精気の巻物を発動した。


バーバラ:((精気の巻物を発動しました。))

カイン王:((わかった。))

その返事にバーバラは安堵した。

カイン王達は、無事なのだ。


魔獣は存在しない腕を見て、一瞬うろたえた。

そして、失った右腕を突き出して吠えた。

身体の芯がびりびりと震える。

突き出された魔獣の腕の肉が盛り上がり、

切断面を覆って行く。

3人は動けなかった。

魔獣の咆哮は、腕の治療を行う時間を確保するには十分だった。


咆哮の衝撃から立ち直った3人は、波状攻撃を続けた。

魔獣は左手の爪を使い、その攻撃をかわし続けた。

しばらく攻撃を続けた後、実感できる程に

疲労が溜まっていることに気が付いた。

カイン王は、ここが大きな分かれ道と判断した。

そして2人を見た。

2人の動きが目に見えて鈍くなっている。

毎回、全力で攻撃しているのだ。

当然、疲労が蓄積しているだろう。

このままの調子で攻撃を続ければ、

先にこちらの体力が尽きてしまう。

魔獣が攻撃してこないのならば、

こちらも無理に攻撃する必要はない。

そして決断した。


カイン王:((魔獣はこちらの体力の消耗を狙っている。

     出来る限り体力を温存しろ。))


魔獣とのにらみ合いが続いた。

カイン王は完全に防御に徹していたわけでは無かった。

隙を探り、機会を伺っていた。

しかし、魔獣は隙を見せなかった。


この時、カイン王は霧が晴れてきているのを感じていた。

明らかに視界が良くなってきている。

キャスバル王、エッグ王子の動きを視認できる。

壁際が見えな事が唯一の救いだった。

あの僅かな霧のどこかにバーバラは居る。

解呪の時間を稼ぐことが我々の本来の目的なのだ。

このまま時間が過ぎ去るのは好都合だったが、霧が晴れ、

バーバラに攻撃が移ったら。

そう考えると不安がよぎる。

バーバラは剣術が出来ないわけでは無い。

しかし、本職は魔導士なのだ。

不意を突かれた場合、反応できるかが気がかりでだった。

今は、霧が少しでも長く晴れない事を祈るしかなかった。


魔獣はゆっくりと回りながら、3人を吟味するように見つめた。

そして、エッグ王子の方をみるとそのまま動きを止めた。

にらみ合いが続いた。

ぴりぴりと刺すような緊張が続いた。

どのぐらいの時間が経ったのだろう?

一瞬だがエッグ王子の緊張が途切れた。

魔獣はその瞬間を見逃さなかった。

膝を曲げ、しゃがみ込むと一気に飛んだ。

それはまさに獣の攻撃だった。

大きく口を開き、エッグ王子の首筋めがけて飛び掛かった。


エッグ王子は反射的に左に飛んだ。

考えて行動する時間は無かったはずである。

幾度となく繰り返された剣術の訓練が、

実を結んだ瞬間でもあった。

魔獣の右腕は存在しない。

その方向へ回避することが最も安全だと身体が知っていたのだ。

長年に渡り繰り返された動きが身体に染み付き、

考えることなく身体が反応したのだった。


魔獣は空中でエッグ王子の首筋を凝視していた。

同時に左腕を肩めがけて突き出し始めていた。

肩を抑え込み、首筋に牙を突き立てる。

それが魔獣の描いた攻撃だった。

しかし、エッグ王子は右側へと移動していた。

それを追う様に左腕を伸ばす。

魔獣の誤算はエッグ王子の動きが

予想以上に早かったことである。

大きく伸びた左腕はエッグ王子を捉えることは無かった。

魔獣は爪を伸ばし、床に突き立てるとその勢いを殺した。

そしてエッグ王子の方向へと視界を移した。

その時、移動する視界の片隅に見た。

視界の中にそれを見つけたのだ。


攻撃を仕掛けた相手はバランスを崩し、

態勢を立て直そうとしている。

残りの2人はそれを助ける為に移動しているようだった。

魔獣は絶好の機会だと判断した。

そして吠えた。


同時刻、カイン王は魔獣がエッグ王子に飛び掛かるのを見て、

援護するために動いていた。

視界はエッグ王子と魔獣を捕らえていた。

エッグ王子は攻撃を避けるように移動し、

寸でのところで魔獣の攻撃を避けたのが見えた。

魔獣は着地するとエッグ王子の方に顔を向けた。

そして頭を上げ吠えるのが見えた。

まるで犬の遠吠えのようだった。

その時、背中に衝撃を感じた。

痛みで身体中の筋肉が固まり、勢いでバランスを崩した。

1回転して受け身をとると、片膝をついた。


カイン王:(まさか、後ろから攻撃を受けたのか?

     いや違う。

     この痛みは魅了。)


そう、それは魅了だった。

対魅了用の魔法陣が発動し、激痛が襲ったのだ。

カイン王は魔獣の方を向いた。

しかし、魔獣の姿はそこにはなかった。

魔獣は標的を新たなる獲物に変え、

移動を開始していたのだった。


魔獣は四つ足になり、身体を縮め、まるで獲物を狙う獣の様に

気配を殺して移動した。

先ほど視界に入った新たなる獲物。

その獲物の後方へと向かう。

辺りには、まだ霧が残っており身を隠すのは容易かった。

そして、その獲物を目で捕らえた。

それはバーバラだった。

バーバラは、魔法陣を描いているようだった。

こちらに背を向け、魔法陣と思われる物の上にしゃがみ込み、

手を動かし続けている。

一気に左手の爪を突き刺した。

爪は適格にバーバラを捉え、背中に滑り込んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=714265189&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。