↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
決戦魔獣王城
90/99

幻影

連合暦20年8月16日


シェリルの話を元に、カイン王は作戦の修正を行った。

それは救出の開始を玉座の間への突入と同時に

開始することであった。

その間、レミューズとバーバラは予てから用意してあった

魔法陣の描かれた魔法紙を貼り付けて行く。

そして、一通りの準備が終わると西側の扉を開け、

レミューズが聖なる水を流し、

ドレアルが光を飛ばし、

バーバラが所々に魔法紙を張り付けながら

無言でゆっくりと進む。

最初に見えた扉の前でカイン王は一度立ち止まり、

その扉をじっと見つめた。

そして、今は無い左腕を右手で掴もうとする。

バーバラがその右手にそっと手を添える。

カイン王はちらっとバーバラを見た後、

思い直したように右手を戻すと無言で歩を進めた。


長い通路をゆっくりと進む間、

肌を刺すようなピリピリした空気が辺りを漂う。

無言が更なる緊張を呼んだ。

そして、緊張は極限まで高まった、

その重圧にエッグ王子は耐えられなかった。

エッグ王子:((それにしても、広い通路だ。

      そして、左右に見える扉も巨大だ。))

キャスバル王子:((それだけ、ここに居る魔獣が

        大きいという事なのだろう。))

ドレアル:((あまり不安を煽るではない。

     巫女が言っていたように、それこそが魔獣王の

     狙いじゃからな。))

キャスバル王子:((そうでした。))

エッグ王子:((申し訳ありません。))

しかし、エッグ王子の発言が緊張を少しだけ和らげた。

キャスバル王子は先ほどから疑問に思っていた事を口にした。

キャスバル王子:((ところで、マスターレミューズ。

        先ほどから貼り付けている魔法紙は

        何なのですか?))

レミューズ:((これか?

      面白い余興を用意した。

      その為の準備だ。))

エッグ王子:((余興?))

レミューズ:((細工は流流仕上げを御覧じろというところだ。))

キャスバル王子:((なるほど。

        見るまでは秘密という事ですか。))

カイン王とバーバラはこの会話を聞き、心の中でレミューズに

感謝した。

秘密の余興。

それは張り裂けんばかりの緊張を和らげるのには十分だった。

秘密と言われれば、それが何かを知らない者は、

必然的に考えたくなる。

その一瞬の考えが張り詰めた緊張を一気に和らげる。


バーバラがすぐに言った。

バーバラ:((警戒を怠らないように。))

その声に反応するように、緊張が高まった。

しかし、先ほどとは違い適度な緊張であることが見て取れた。


しばらく進むと通路は左へと曲がっていた。

曲がろうとしたその時。

突然、サールが声を上げた。

サール:「うぁ。」

声のする方を見ると、サールは顔の前、頭の上の何かを

払いのけるような仕草を繰り返している。

シェリル:((どうやら始まったようですね。))

シェリルはサールに近づくと、魔法を唱え、声をかけた。

シェリル:「しっかりしなさい。

     それは幻影です。」

この言葉にサールの動きが止まった。

サール:「あぁ、シェリルさん。」

バーバラ:((サール、何があった?))

サール:「えっ、あっ。」

サール:((突然大きな虫に襲われたんです。

    皆さんは大丈夫でしたか?))

バーバラ:((それは幻影だ。))

サール:((えっ、幻影?))

シェリル:((それにしても、

     これほど早く始まるとは思ってもいませんでした。

     幻影について少し話しておきます。

     気が付いていないかもしれませんが、

     既に多くの者が幻影の初期段階にあるはずです。

     まずは、進んできた通路を見て見なさい。))

全員がその言葉に後ろを振り向き、

カイン王、バーバラ、ドレアル、エッグ王子が驚いた。

ドレアル:((なんということじゃ。))

進んできた通路が真っ暗闇に覆われている。

ドレアル:((明かりを灯してきたはずじゃが、

     真っ暗闇とはのぉ。))

シェリル:((幻影や幻聴は個に対する精神攻撃であると

     思ってください。

     私が唱えた魔法は、鎮静の魔法です。

     ご存知と思いますが、

     鎮静の魔法は光属性の基本魔法です。

     幻影や幻聴は闇属性の上位の範囲魔法であり、

     闇耐性の低い者を惑わすのです。))

サール:((んー。

    鎮静の魔法が効果があるというのは、

    精神を落ち着かせることが有効という事ですか?))

シェリル少し考えると答えた。

シェリル:((何故ゾンビに対して回復魔法を唱えることで

     ダメージを与えられるのかわかりますか?))

サール:((考えた事もかなったですが、

    ゾンビが死んでいるから?))

シェリル:((回復の魔法は肉体に作用します。

     肉体的に傷の無いゾンビがいないと思いますか?))

サール:((確かにそうですね。

    では何故効果があるのですか?))

シェリル:((これを知るには属性を考えなければなりません。

     それは属性による相互作用があるからです。

     ゾンビは強い闇属性に支配されています。

     光属性と闇属性は相対する属性です。

     相対する属性がぶつかり合うとその効果は

     打ち消されるのです。))

サール:((なるほど。

    という事は、回復魔法でも効果があるのですか?))

シェリル:((確かにその通りです。

     しかし、魔法の種類によって

     効果の強弱は変わります。

     最も効果があるものが鎮静の魔法という事です。

     幻影や幻聴の魔法は、精神に直接働きかけるため、

     防ぐことはできません。

     その効果はその個の恐怖心を増幅し、最も弱い部分、

     たとえば、恐れている物などを見せるのです。

     昔の人は言ったものです。

      「幽霊の正体見たり枯れ尾花」

     恐怖心がそのような幻影を見せるのです。

     幻影や幻聴であることを意識することができれば、

     その効果は急速に弱まっていきます。))

バーバラ:((幻影だと認識することか。

     簡単なようでいて、一番難しいかもしれない。))

カイン王:((ところで、

     巫女は幻影に惑わされることはないのか?))

シェリル:((巫女も同様に幻影の効果は及びます。

     しかし、幻獣の力によって、

     それはすぐさま解消されるでしょう。))

カイン王:((なるほど。))

シェリル:((サールはお手本となる行動をとりました。

     幻影に対して武器攻撃や魔法攻撃を行っていたら、

     けが人がでたかもしれません。

     この城には私達を攻撃する敵は魔獣の王と門番しか

     いないという事を心に刻み込むのです。

     門番も守る場所からは移動することは無いでしょう。

     つまり、私達を攻撃することはありえません。))

その時、パインの頭の中に声が聞こえた。

シェリル:(((パイン、アリス、聞こえますか?)))

それは、パーティー会話や指輪での会話とは明らかに異なる

感覚だった。

パイン:(((これは、いったい。)))

アリス:(((??)))

シェリル:(((2人が知っているパーティの魔法や指輪での会話は

     基本的には同じです。

     繋がりの源を通じて会話しているのです。

     私はイフリートからシヴァあるいはベンヌを経由して

     あなた方と会話しているのです。

     その仲介をしているのが精霊であるか幻獣であるかの

     違いによるだけです。

     精霊の力は弱く、幻獣の力はそれをしのぎます。

     この力の差はさまざまな影響を及ぼすでしょう。

     この感覚を覚えてください。

     これは大きな助けになるでしょう。

パイン、アリス:(((はい。)))

シェリル:(((さて、カイン王には、巫女は幻影や幻聴に

     対抗できると言いました。

     しかし、パイン、あなたは少し違います。)))

パイン:(((どういうことでしょう?)))

シェリル:(((巫女と幻獣との繋がりは、人の精神の奥底で

     繋がっています。

     しかし、あなたは指輪で繋がっているのです。)))

パイン:(((??)))

シェリル:(((そうですね。

     幻影を冷たい水としましょう。

     これを飲んだ場合、身体が冷えます。

     精神の奥底で繋がっている場合は身体の内から

     温めてくれるのです。

     しかし指輪の場合は少し違います。

     それは身体の外から温めるのです。

     長い目で見た場合、結果は同じですが、

     短い目で見た場合、それは大きく異なります。)))

パイン:(((回復時間の差か。

    隙が生まれるという事ですか?)))

シェリル:(((そうですね。

     魔獣の王が、必ずしも隙をついてくるとは

     言えませんが、備えねばなりません。)))

パイン:(((わかりました。)))


カイン王は少し考えると言った。

カイン王:((巫女以外で鎮静の呪文を唱えられる者は?))

その言葉に、ドレアル、バーバラ、レミューズ、サールが

名乗りを上げた。

カイン王:((分かった。

     その4人は、特に注意を払うように。))


一通りの確認を終えた後、シェリルを先頭に通路を進み始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=714265189&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。