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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
決戦魔獣王城
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魔獣王城

連合暦20年8月16日早朝、山小屋


バーバラ:「皆、起きろ。」

バーバラの声が山小屋の中に響き渡った。

それぞれが眠い目をこすりながら体を起こす。

バーバラの持ち込まれた香炉によって、不安や興奮が抑えられ、

睡眠をとることはできた。

しかし全快というにはほど遠く、仮眠という状態であった。


討伐隊が外にでると雲一つない快晴だった。

ここからは大きく北側に回り込むことになる。

城へ向かうには最も遠い道であり、

カイン王とバーバラは1度通った道でもあった。



連合暦20年8月16日昼


バーバラを先頭に歩みを進める。

それは、坂を上り切った所で突然現れた。

雲一つない真っ青な空を背景に城はあった。

しかしそれは予想を裏切る様相をしていた。

真っ白い地面に浮かび上がる城。

それはまるで雲の上に建つ城のようにも見えた。

禍々しさは微塵も無く、逆に神々しさを感じるほどであった。

これが魔獣の城であると言われてもにわかには信じることは

できなかっただろう。

もっとも驚いていたのは2人の王子だった。

キャスバル王子:「これが魔獣王の城だというのか?」

エッグ王子:「もっと、もっと、なんというか。

      禍々しい城だと思っていた。」

ドレアルがその声を聞き近づいてきた。

ドレアル:「見た目に騙されるなという事じゃよ。

      『魔の物は人を欺くことを常とする。』

     経典に書いてある通りじゃな。」

キャスバル王子:「確かにその通りですね。」


皆が城に驚いているとき、

レミューズとバーバラは地面を見ていた。

それはまるで断層を横にしたように思えた。

赤黒い色の土が滑らかな曲線を描くように続いていたのだ。

そしてその曲線の先に巨石があった。

バーバラ:「なんだあれは。」

巨石の一部がまるで切り取られたかのように

存在していなかったのだ。

その断面は割れたと呼ぶにはあまりにも滑らかであった。


レミューズ:「球体か。」

バーバラ:「そのようだな。

     あくまでも想像だが、

     城は空間も含めて魔獣界からやってきたのでは

     ないだろうか?」

レミューズ:「あぁ、それであのような形状が残ったと考えると

      辻褄が合いそうだ。

      巨石の下に破片らしき物が見当たらない事を

      考えると、入れ替わったと考えるのが

      正しいのかもしれないが、、、。」

バーバラ:「赤黒い土は魔獣界の土なのか?」

レミューズ:「かもしれないな。

      既に我々の想像を超えている。

      何があってもおかしくはない。

      そうか、だとすると、、、。」

レミューズは突然しゃがみ込み、

地面にこのアムート山脈の大まかな形状を書き始めた。

その様子を見て、他の者も周りに集まってきた。

一通り書き終わると、ドレアルとエッグ王子がいる事を確認して

話を始めた。

レミューズ:「ここが魔獣王城。

      この山脈は緩やかに凹んでおり、

      城は凹みの中にある。

      エッグ王子、雨水はどう流れると思いますか?。」

エッグ王子:「それは、凹みの中心へ向かって、、、。

      あっ。」

エッグ王子はその先になにがあるのかが分かった。

レミューズ:「そう。カルラドはこの位置にあるのです。

      魔獣王城は、城以外にも魔獣界の土も含めて、

      巨大な球体として現れたと考えられます。

      雨が降り、その土を通った水は最終的に

      カルラド方面に流れる事になる。

      ゾンビが大量に発生した地下水路の件、

      あれと同様の現象は他に発生していない。」

ドレアル:「なるほど、

     あれの元凶は魔獣界の土だと言いたいのじゃな。

     あの件に関しては、あと一つ気にかかる事がある。

     大河の水差がカルラドに持ち込まれた事じゃ。

     あれは偶然ではないじゃろう。

     まあ、予言と言ってしまえばそれまでじゃが、

     真の予言者なぞ、お目にかかったことは一度もない。」

レミューズ:「ズールの件ですね。

      私も偶然ではないと思います。

      偶然でないとすれば、幾つかの可能性が

      考えられます。

      1つ目は、本当に予言者であった。

      2つ目は、城の現れる位置を知っていた。

      3つ目は、城の位置を指定したか、

      あるいは、そうなるように誘導した。」

ドレアルは少し声を荒げて言った。

ドレアル:「どういう意味じゃ?

     ズールとゼロスが繋がっているとでも言いたいのか?

     今までの件で、わしはズールは味方だと思っとる。」

バーバラ:「いえ、レミューズは可能性の話をしているので。」

レミューズ:「私も、ズールは味方だと思っています。

      これは事前に城の位置を知る事ができる可能性が

      あるという事なのです。」

ドレアル:「それに何の意味がある?

     既に城は存在しいるし、

     今更それを知っても意味はないじゃろ。」

黙って見ていたカイン王が話に加わる。

カイン王:「マスタードレアル。

     落ち着いてください。」

ドレアル:「わしは、落ち着いておるは。」

カイン王:「まぁまぁ。」

カイン王はドレアルをなだめるとレミューズの方を向いた。

カイン王:「レミューズ、大体話は分かった。

     その話は、後ですることにして、

     城に向かうとしよう。

     なお、これからの会話は指輪での会話とする。」


軽く休憩を取るとバーバラ、カイン王を先頭に城へと向かった。

少し進むと真っ白い砂が積雪のように赤黒い土の上を

覆っていた。

彼等は知っていた。

それが呪いによって石化した人間の成れの果てであることを。

軽く黙祷をすると歩みを進めた。


ジェイル:((ちょっと待ってください。

     シェリルが、、、。))

後ろを振り向くとジェイルの横にシェリルがうずくまっていた。

ジェイルは心配そうにシェリルを見つめている。

全員がシェリルの周りに集まり、無言のままシェリルを

見守った。

しばらくするとシェリルは顔を覆っていた両手を離すと

ゆっくりと立ち上がった。

その顔はおっとりとしたシェリルの顔つきではなく、

以前に見た巫女の顔つきであった。


シェリル:((カイン王、この場所は気分が悪いので、

     城まで進みましょう。))

カイン王:((記憶が戻ったのか?))

シェリル:((その話は城に入ってからにしましょう。))

そう言うとシェリルは城へ向かって歩き始めた。

その後をジェイルが追う。

他の者も後に続いた。

途中城壁跡と思われる残骸を超え、城の北門へとたどり着いた。

巨大な門は開いていた。

門をくぐると、中は暗く、柱以外何も見えなかった。

薄暗い空間。

部屋かどうかも分からない。

天井が高いのか上を見ても闇が広がっているのみだった。


ドレアルが小さな袋を取り出し、

中身を手に取ると呪文を唱えた。

手のひらが明るく輝く。

さらに呪文を唱えると、手のひらの光の中から

無数の小さな光が現れ、ふらふらと四方八方へと飛んで行く。

そして壁や柱に張り付いた。

しばらくすると、うっすらとだが部屋の中が確認できた。

飾りも無く、只単に広い空間だった。

ここで改めて認識を変えなければならなかった。

門と思われていた物は門ではなく扉だったということだ。

カイン王とバーバラはここへは以前来たことがあったが、

あの時は夜間であった上、剣に光を灯したのみであったため、

全てを見てはいなかった。

奥には先へ進む道と思われる巨大な閉じた扉が見えた。

部屋の中の安全を確認すると、シェリルの周りに集まった。


カイン王:((記憶が戻ったのか?))

シェリル:((全て思い出しました。

     その前に聖なる水を撒いてください。))

その言葉にレミューズは大河の水差を傾け、床に水を流した。

水たまりは次第に大きくなり、全員の足元を濡らした。

シェリル:((いいでしょう。

     ここは安全です。

     まずは私の話を聞いてください。))

シェリルは返答を待たずに話始めた。

シェリル:((皆さんの決意と勇気に感謝します。

     魔獣の王を封印する準備は整いました。

     魔獣の王は、呪い、魔法や武器など

     多種多様な攻撃を仕掛けてきます。

     しかし、呪い、魔法は防ぐ方法があります。

     最大の脅威は幻影、幻聴など恐怖や迷いを生む

     攻撃なのです。

     これらを防ぐ方法はありません。

     これは己との戦いと考えてください。

     自分を見失わず、冷静に行動することを望みます。

     

     まず、魔獣の王と対峙する前に、

     達成しなければならない事があります。

     それは血呪草を燃やす事。

     血呪草は呪いを強化します。

     これを燃やす事によって呪いの脅威を減らします。

     さらに大河の水差の聖なる水によって、

     その効果を打ち消します。

     聖なる水は玉座の間でも有効です。

     血呪草を焼却し終わったならば準備は完了です。

     2階へ進む階段から玉座の間の前まで進みます。

     玉座の間の前では、まず聖なる水を撒きます。

     玉座の間に入っても聖なる水は常に

     流しておいてください。

     次に氷の巫女がシヴァを呼び出します。

     シヴァが召喚された後に玉座の間へと入ります。

     魔獣の王は私達が外にいることを知っています。

     そして、私達が部屋に入ったと同時に

     最大の魔法攻撃を仕掛けてくるはずです。

     これはシヴァが防ぎます。

     その攻撃を待って各自成すべき事を行ってください。

     私と氷の巫女は戦闘には参加できません。

     私は魔獣の王を封印する儀式を始めます。

     氷の巫女はシヴァの維持に専念します。

     シヴァは魔獣の王の魔法を防ぐ事しかできません。

     それも全ての魔法を止められるわけではありません。

     渦雷の剣を使ってそれを止める必要があります。

     封印の儀式を完了するためには魔獣の王をある程度

     弱らせなければなりません。

     これが最も大きな障害となるでしょう。))

このとき、シェリルがジェイルの方をちらっと見たことに

気が付いた者はいなかった。

シェリル:((私達にも有利な事は存在します。

     魔獣の王は召喚の制約によって、その場から

     動くことはできません。

     魔獣の王は魔獣の頂点に立つ者であるため、

     決して立ち上がることは無いでしょう。

     儀式が終われば魔獣の王を封印することが出来ます。

     しかし気を緩めてはなりません。

     魔獣の王は己の全てを使って魔法を唱えます。

     この魔法は必ず止めなければなりません。

     魔獣の王を封印できたとしても、

     この魔法を唱えさせてしまえば、

     私達の負けとも言えるでしょう。

     封印が完了した後、

     速やかに帰還しなければなりません。

     遅れることは死を意味します。

     さて。))

シェリルは全員を見回すと言った。

シェリル:((どうやら聞きたい事があるようですね。

     まず、カイン王。

     仲間の救出は問題ありません。

     しかし、援護には問題があります。

     玉座の間には多くの者が入るべきではありません。

     精神への攻撃は多くなるほど隙が生まれるのです。

     救出は魔獣の王との戦闘開始と同時に始めるのが

     最善かと思います。

     

     次にレミューズ。

     あなたの考えている方法は非常に有効です。

     過去にもその方法は使われたことがあります。

     しかし多くの場合それを実行できる者が

     存在しなかったのです。

     

     次にサール。

     仲間を信じ、それを助ける事に専念しなさい。

     それは己を助ける事にもつながるのです。

     

     次にキャスバル王子とエッグ王子

     その通りです。

     魔獣の王は既に我々の存在に気が付いています。

     不安は捨てなさい。

     それも魔獣の王の精神攻撃だと思う事です。

     

     次にドレアル

     シヴァの氷の魔法は魔獣の王には効果がありません。

     それ故に防御に徹しているのです。

     もう一つ、考えている魔法では倒す事はできません。

     命を懸ける事が必ずしも最善の方法とは

     限らないのです。

     

     そして、ジェイル。

     あなたの気持ちは分かっています。

     それよりも、自信を持つ事です。

     私は知っています。

     あなたがどれだけの血の滲む努力をしてきたかを。

     あなたは魔獣の王と戦えるまでに強くなりました。

     決して恐れる必要はないのです。))


己の心を見透かされた者は、巫女の事を神と思う事だろう。

しかし彼等は分かっていた。

巫女の言葉を思い出してほしい。

全ての個は、その奥底では1つに繋がっているという事を。


シェリルは再び全員を見回すと言った。

シェリル:((最後にもう一度言います。

     これは己との戦いです。

     常に冷静に行動することを望みます。))


C,A:「お久しぶりです。」

A:「ついに魔獣王城に突入しましたね。

  あとはエンディングに向けてまっしぐらという感じですね。」

C:「そうですね。

  まだ残っている謎がありますので、

  徐々に判明する予定らしいです。」


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