作戦開始
連合暦20年8月10日
この日の前日、パイン、アリス、ジェイル、サールは、
対魅了用の魔法陣を自身の身体に彫りこんだ。
シェリルに関しては、
対魅了用と思われる魔法陣が既に身体に刻まれていた。
これは、魔獣王との戦いの前に必要なことでもあった。
そして、その仕上げとして、ドレアル、バーバラの見守る中、
レミューズの魅了の呪文受けることとなった。
4人は恐れていた。
サールから、色々と聞いていたからだった。
しかし、いざそれを受けてみると、
それは、あまりにもあっけないものだった。。
確かに痛みとしては顔をしかめる程度に強烈ではあった。
しかし、それは一瞬のことであり、継続した痛みではなかった。
痛みを感じる前にそれは収まった。
どちらかというと、衝撃と表現したほうが正しいだろう。
ジェイル:「サール、一体どういう事だ?」
サール:「いえ、私はマスタードレアルから聞いた事を
そのまま伝えただけです。」
そう言って、ドレアルに助けを求めた。
ドレアル:「んっ?
わしが。
そんなことを言ったかの?
まあ、言ったにしても、そのおかげで
気構えができておったということじゃな。
ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ。」
そう言って、高らかに笑い出した。
4人は誰もドレアルに反論する気にはなれなかった。
連合暦20年8月11日
カイン王、バーバラ、レミューズ、パイン、アリス、シェリルが
軍議室に集まっていた。
机の上には炎の剣が置かれていた。
カイン王:「今回来てもらったのは炎の剣についてだ。
これは初代ルシード王の魔獣王討伐時に
炎の巫女が持っていた業火の剣と同じ物と思われる。
そこでだ。
当時と同じように炎の巫女が持つのが正しいと
考えている。
そこで、巫女に返そうと思っているのだが。
受け取ってもらえるかな?」
パインはアリス、シェリルの順に見たのちに少し考えて答えた。
パイン:「いえ、その剣はそのままお持ちください。」
カイン王:「そうか、わかった。」
カイン王:(どうやらレミューズの言った通りのようだな。)
レミューズは、炎の剣というよりはメリクリウスの
魔法具について疑問を持っていた。
魔獣王の討伐間近になり、実在を確認できたものは、
炎の剣(業火の剣)、渦雷の剣、大河の水差の3つだけである。
残りの3つは存在すらわかっていない。
元々、6つの魔法具は作者不明の物語の中に出てくる品だ。
炎の剣と呼んでいるのは、
小説でその名前が主に使われていた為でもある。
我々は炎の剣を手に入れたため、他の魔法具が存在すると考え、
探索を行った。
レミューズが疑問に思い始めたのは、巫女の言葉だった。
炎の巫女は、渦雷の剣、大河の水差を見て、
準備が整ったと言った。
炎の剣については奉納されなかったことに
言及したのみだった。
しかしこれは、炎の剣が業火の剣であると言っているに等しい。
そして、奉納する必要がないということ。
つまり、他の4品は必要で無いという事になる。
魔法耐性を見る目によって疑問がさらに膨らんだ。
魔獣は炎耐性が高いのだ。
炎の剣の効果は魔獣には無いに等しい。
さらに、業火の剣をわざわざ炎の剣と呼び名を変えた事。
わざと変えたとしか思えない。
そう考えた時に、メルクリウスよる画策の1つではないかと
思えたのだ。
炎の剣は実物を見せることで、6つの他の魔法具の存在を
信じさせ、他の魔法具を探させる品ではなかったのか?
ルシード王の話の中にも炎の剣(業火の剣)は存在していた。
しかし、それはメルクリウスによって残されたものだ。
ルシード王のこの言葉。
『真実と虚偽を織り交ぜ、ゼロスを惑わし、
道標を残すことによって、秘密裡に伝えてゆく。』
そう、レミューズが考えたことは、
炎の剣も道標の1つではないかという事だった。
現に炎の剣の存在によって、我々は他の魔法具の探索を行った。
そして、最終的に必要な物を全て集めたのだ。
他の魔法具が存在しないとは言い切ることはできない。
討伐に必要な品は組み合わせかもしれないのだ。
ただ単に、我々が発見できなかっただけかもしれない。
その推測を確証へと近づける為に巫女達に来てもらったのだ。
パインとアリスは誓いの腕輪の為に返答できない可能性がある。
そこで、剣を返すという方法を取る事となった。
もし、炎の巫女がそれを必要とするならば受け取るだろう。
道標ならば、後世に残さなければならない。
連合暦20年8月15日早朝、カイン王国城門前
討伐隊11人は、城門前に集まっていた。
今回の作戦は秘密裡に実行された。
その為、城門前は静かなものだった。
全員がフードを深くかぶり、顔が見えないようにしていた。
それは、ゼロスに気づかれない為でもあった。
カイン王:((それでは、出発する。
これからは、指輪を使って会話するように。))
カイン王を筆頭に11人がその後に続く。
バーバラ:((ザイムへの経路は順調に確保されています。
これならば、予定通り夕刻には到着できそうです。))
カイン王:((それはなによりだ。
余計な戦闘は避けたいところだな。
ところで、パイン。
剣術の修行は納得できるところまで
到達できたのか?))
カイン王は、全ての時間をパインの修行に充てることが
出来なかった。
そのため、2人の将軍を剣術の教官としてつけることになった。
2人は、カイン王が認める剣術使いでもある。
パイン:((マルス将軍には合格をもらえましたが、
ビッツ将軍には合格をもらえませんでした。))
カイン王:((ほう、マルスが認めたか。
ならば、後は実践で鍛えろとでも言われたか?))
パイン:((はい、まさにそのままの言葉で言われました。))
カイン王:((そうか。
実践では必ずしも強い者が勝つわけでは無い。
試合では卑怯と呼ばれる方法も生死を懸けた戦いでは
卑怯でも何でもない。
それも技の一つなのだ。
例えば、近くにある物を投げつけ、ひるんだ隙に
切りつけるなど、なんでもありだ。
実践では強い者が勝つのではなく、
判断を見誤ったものが負ける。
それを修得するには実践経験するのが早道なのだ。
それと、ビッツの件については問題はない。
ビッツは理想が高すぎる。
己を超えない限り認めない。
まったく困ったものだ。
ところで、納得はできたのか?))
パイン:((確かに強くはなったと思いますが、
実はまだ納得できる強さになったとは
思えないのです。))
カイン王:((うむ、それを聞いて安心した。
もし、これで納得していたら、マルスやビッツを
超えることは出来ん。
納得した時点で終わりなのだ。
頂点を目指す者は納得してはいけない。
さらに精進することだ。
ところで、アリスはどうだ?))
アリスには、シーラとアンジェラが教官としてつけられた。
2人は、カイン王と共に魔獣王城に突入した神聖魔導士だ。
現在は傭兵を止めていたが、カイン王との交流は続けていた。
そして、自ら教官として名乗り出たのだった。
アリス:((身を守る方法は一通り修得しました。
2人の合格ももらいました。))
カイン王:((そうか、それならば安心だ。
さて、ジェイル、執事のポールから話は聞いている。
隠れて剣の修行をしていたようだな。))
ジェイルが傭兵学校で講義を受け始めてから、カイン王の元に
ポールが訪れるようになった。
ジェイルを討伐隊へ参加させないように進言することであり、
ジェイルの父親の思いでもあった。
ジェイルと父親の間でどのような会話があったかは分からない。
しかし、いつしかポールの言動が否定から
補佐に変わっていった。
そして、定期的にカイン王の元を訪れては、その成果を
報告するようになったのだった。
カイン王は気が付いていた。
神聖魔導士でありながらも、
その身のこなしから、剣技が高い事を。
それを確認するべく、言葉巧みに試合へと誘導しようとした。
ポールは全てを察した上で、
カイン王と剣を交える事を承諾した。
そして、カイン王対ポールの試合は行われた。
ポールは補助魔法を駆使して戦いに挑んだ。
勝敗はカイン王が辛うじて勝利を収めたが、後に語っている。
あの試合は長引けば負けていただろうと、、、。
この後からジェイルの修行をポールに全て託したのだった。
ジェイル:((はい、パインには到底及びもしませんが。
及第点はもらう事はできました。))
カイン王:((そうか。
ポールは精神統一について言っていなかったか?))
ジェイルはその言葉にはっとした。
それは、ポールに何度も繰り返し言われていたことだった。
『雑念を捨て、目の前の事に集中しなさい。
繰り返し続けることによって、無意識に体が反応します。』
ジェイル:((はい、その点に関しては、ポールから
何度も指摘されています。))
カイン王:((なるほど。
行軍中もそれを忘れない事だ。
さて、サールはどうだ?))
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サールは、傭兵協会員の職を解かれた後、
バーバラの最後の指示を守っていた。
それは、シュルトス公爵邸からの帰りの馬車の中での事だった。
バーバラとサールは2人で馬車に乗っていた。
バーバラ:「サール、私から最後の指示を与える。」
サール:「はい、なんでしょうか?」
バーバラ:「補助魔法の修行を行うんだ。
それも、すぐにだ。」
サール:「えっ。」
バーバラ:「魔獣王との戦いでは、炎の魔法は効かないだろう。
お前が討伐隊として参加するには、
補助魔法の修行を積むことだ。」
サール:「なんとなくは理解していたつもりですが、
どうすればよいか決めかねていました。」
バーバラ:「やるからには必ず成し遂げることだ。」
サール:「はい」
サールはこの後、補助魔法修得に詰まる度にバーバラの元を
訪れることとなる。
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サール:((はい、補助魔法の修得は済ませました。))
カイン王:((そうか。
ならば、補助はサールに任せよう。))
サール:((はい。))
カイン王:((シェリル。
体調はどうだ?))
シェリルに関しては、教官件護衛としての人材をつけておいた。
逐次報告は受けており、その成果は素晴らしいの一言だった。
魔術、剣術のいずれも目を見張るばかりの成長を遂げており、
飲み込みが早く、そしてそつなくこなす。
資質なのか、巫女であるが故なのか。
残念ながら、それは分からなかった。
シェリル:((はい。))
シェリルは一瞬躊躇したあと、答えた。
シェリル:((とても調子は良いです。))
カイン王:((うむ。
どうやら、問題ないようだな。))
昼に昼食休憩を挟みながらザイムへと歩き続けた。
魔獣の気配は全くなかった。
もし、魔獣王討伐でなければ、ハイキングだと言っても
はばかられなかっただろう。
そして、夕刻には魔獣に出会う事もなくザイムに到着した。
C、A:「お久しぶりです。」
A:「炎の剣にも設定があったんですね。」
C:「そうですね。」
A:「ところで、小説の作者と言われるジェニスって、、、。」
C:「レミューズは架空の人物だと思っていたみたいですよ。
噂は独り歩きしますから。」
A:「じゃあ、だれが?」
C:「日記はメルクリウスのもの。
作者はおそらくズールではないかと考えていたようです。
あくまで、道標の一つだったらということですね。」




