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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
決戦魔獣王城
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魔獣王討伐隊

連合暦20年7月21日、カイン王国軍議室


バーバラ:「恐れながら、申し上げます。

     神殿に入るためには、6人必要となります。

     そのうち最低一人は、ルシードの神官が必要なため、

     状況にもよりますが、5人で向かう必要があると

     考えられます。

     私とシェリルは当然として、残り3人を選ばなければ

     なりません。」

カイン王:「わかった。

     巫女の話から、レミューズは外す訳にはいかんな。

     さて、残りをどうするかだ。」

カイン王は顎に手をあてて考え始めた。


その時、一人が声をあげた。

ジェイル:「私を同行者にしてください。」

カイン王:「うむ、ジェイルか。

     ところで、何故行きたいのかね?」

ジェイルはその質問に口ごもった。


カイン王:「答えたくないのか?

     残念だがそれでは同行させるわけにはいかないな。

     ゼロスの仲間が君に化ける可能性も考えなければ

     ならない。」


ジェイルはシェリルの方をじっとみると急に立ち上がった。

ジェイル:「約束したんです。

     絶対に守るって。

     シェリルに約束したんです。」

シェリルは驚いたように一度だけジェイルを見ると、

頬を紅に染めて下を向いてしまった。


カイン王は二人を交互に見ると頷いた。

カイン王:「わかった。

     今後、魔獣王討伐完了までシェリルの護衛を任せる。」


その言葉はジェイルにとって甘美な至宝の言葉だった。

ジェイルの緊張した顔が一気にほぐれた。

「はい」と答えるその声には意志と決意が満ち溢れていた。


サールは悩んでいた。

巫女は魔獣王討伐隊に自分を選んだ。

しかし、それに相応しいとは思えなかった。

自分にバーバラさんやレミューズさんの様な才能があるとは

思っていない。

当然だが討伐隊には選ばれない。

その程度なのだ。

才能の無さ、それに抗うように生きてきた。

足りないものは、努力で補った。

私が壁にぶつかった時、バーバラさんは私にいった。

 「ならば、才能ある者が1歩で到達した距離を

 10歩かけて進めばよい。

 最も愚かな事は1歩で進もうとすることだ。

 進むのをあきらめなければ、必ず到達できる。

 1歩進んだら、その経験から何かを学び取れ。

 そして、同じ場所に立つ事さえできれば、

 10歩かけた経験から学んだ事柄は、

 1歩で到達した者よりも多いのだ。」

この教えに従い、幾つもの壁を越えてきた。

その結果、若くしてA級になることが出来た。

ここで2つの選択があった。

一つは傭兵協会の職員として働くこと、

もう一つは、魔獣王討伐隊に志願する事。

私は、前者を選んだ。

才能の無さを理由に魔獣王討伐をあきらめたのだ。

しかし、パイン、アリスと出会い、少しは変わった。

巫女に選ばれたことにより少しは自信を持てた。

しかし、今回はあまりにも時間がない。

自分にそれが成せるのか?

そもそも何をすれば良いのかもわからない。

まあ、バーバラさんやレミューズさんも分からないのだから

仕方がない。

自分にはわかるはずもないのだ。

ならば、経験を積むしかない。

そう思った時、バーバラの教えが頭のなかを駆け巡った。

そう、己の目で見、聞き、そして何が最善なのかを

考えなければならない。

失敗したとしても、何が問題であったかを考え、

改善する方法を見つけ出さなければならない。

次に似たようなことが起こったとしても対応できるように。

それこそが経験なのだ。

分かっているのに行動しないのは愚者の選択だ。

サールは決断した。


カイン王:「あと一人選ばねばならんか。」

そして、バーバラを見た。


バーバラ:「私が選んでもよろしいですか?」

カイン王:「わかった。

     まかせよう。」

その言葉にサールが答えた。


サール:「私を同伴者に入れてください。

    前に調査の時、拘束されていたため参加することが

    できませんでした。

    私が魔獣王討伐隊に選ばれるならば、この経験は

    決して無駄になりません。

    なぜならば、・・・

      :

      :

    」

サールの演説は5分にも及んだ。

それを止めたのはバーバラだった。


バーバラ:「サール、もういい。

     お前の気持ちは分かった。

     私はお前を推薦する。」

そう言って、カイン王を見つめる。

カイン王も目で合図する。


カイン王とバーバラは、魔獣王討伐隊編成の為に

6年近い歳月をかけた。

傭兵学校を設立し、隊員の育成に全力を尽くした。

命運をかけることができる討伐隊を結成できるか否か、

それが使命だと思っていた。

幾度となく人選を行い。

自分達の討伐隊と比較した。

あの時の戦力以上でなければ勝利はあり得ない。

最終的にカイン王とバーバラが選んだ人選は、

カイン、バーバラ、レミューズ、パイン、アリス、シェリル

だった。

しかし、この人選には大きな欠陥があった。

石化した者達の救出を考えていないのだ。

救出をするためには、戦力を分散しなければならない。

最低でも2部隊必要なのだ。

この件は、カイン王とバーバラを悩ませ、

結論を出せなくしていたが、巫女の発言で意を決した。

討伐隊を

 レミューズ、パイン、アリス、シェリル、ジェイル、サール

救出隊を

 カイン、バーバラ、ドレアル、他2名

これが、カイン王の最終結論だった。

カインが少数精鋭を選択するのには、大きな理由があった。


====

これは、魔獣の壺の存在が明らかになっていない頃の話である。


連合暦13年7月末、クライム王国軍議室

軍議室では、将軍達が集まり次の派兵についての話し合いが

行われていた。


カイン将軍:「待ってください。

      大軍で攻めても同じことの繰り返しです。

      敵はいくら倒しても一向に減る気配をみせません。

      これでは、こちら側が消耗するのみです。」

将軍:「では、どうしろというのだね。」

カイン将軍:「少数精鋭の部隊です。」

将軍:「なにを言っている、君は戦術の基本を知らんのか?」

カイン将軍:「各個撃破。

      敵が分散しているうちに、それぞれを集中的に

      攻撃する事。

      これは、敵よりも多い戦力で少ない戦力を

      短時間で連続して殲滅する事で成り立つ。」

将軍:「分かっているではないか。

   何故、愚を犯そうとする。」

カイン将軍:「攻撃は最大の防御なり。

      この言葉は、自軍の被害を無視し、

      敵の戦力をそぐことに集中すること。

      これは、消耗戦に陥る事が多々ある為、

      次の手が存在しなければ成り立たない。」

将軍:「カイン将軍、一体何を言いたいのだね?」

カイン将軍が指示を出すと、側近の者が資料を配り始める。

全員に行き渡ったのを確認すると話始めた。

カイン将軍:「敵の攻撃を思い出してください。

      進軍を開始した直後は少数の複数戦闘のみであり、

      進むにつれて大部隊との戦闘となる。

      これは、敵が戦力の集中を行っているため。

      いま、お配りした資料は進軍前後の軍および

      商人の輸送隊の襲撃数を地域別かつ週ごとに

      記したものです。

      地域によっては襲撃数が激減しているのが

      判ります。」

将軍:「うーむ、確かに。」

カイン将軍:「個々の戦闘を思い出してください。

      進軍後、殲滅した地域から攻撃を受ける等、

      何度も煮え湯を飲まされています。

      さらに、敵は攻撃は最大の防御なりというが如く、

      防御を無視して攻めてきています。

      敵の残存戦力がどの位かは不明ですが、

      防御を無視して攻撃している事を考えると

      我々よりも遥かに多いのではないかと考えます。」

将軍:「何故、その戦力を総動員して攻めてこないのかね?」

カイン将軍:「その点については残念がら私にも解りかねます。

      ただ言えることは、戦力の集中、分散を指揮する

      指揮官がいるにもかかわらず、進軍をしないという

      選択肢は考えられないということです。

      これには何らかの意味があるに違いないのです。」

将軍:「うーむ。」

カイン将軍:「指揮官がいるならば、

      隠密行動をとった上で、これを奇襲できれば

      戦況を変えることができるはずです。」

将軍:「なるほど、言いたいことは分かった。

   しかし、どうやって官僚どもを納得させる?」

カイン将軍:「私自らが討伐隊として参加します。」

将軍:「なるほど、奴ら(官僚)にとっては、

   成否に関わらず利を得るというわけか。

   面白い、我々も少なからず応援しよう。

   但し、生きて帰る事を最優先にすることが条件だ。」

カイン将軍:「もちろん、死ぬつもりはありませんよ。」


連合暦13年8月1日、少人数の討伐隊が組織されることとなった。

この時、カインは討伐隊にいくつかの(ルール)を定めた。

一つ、決して逃げない事。

一つ、己の命を仲間に託す事。

一つ、仲間を守る事。

一つ、決して諦めない事。

一つ、必ず生きて戻る事。

そして、(ルール)を話した後で最後にこう付け加えた。

「勇気と無謀の違いを理解しろ。」


そして、カイン将軍率いる討伐隊は、魔獣王城へ侵入し、

魔獣の壺を持ち帰ったのだ。

これ以降、少数精鋭の討伐隊が頻繁に組織されることとなった。


====


カイン王:「バーバラすまないが、早速向かってくれ。」

バーバラ:「御意。」

バーバラ達は、そう言って一礼をすると、部屋を出て行った。


カイン王は、部屋に残ったパインとアリスに声をかけた。

カイン王:「ところで、パイン、アリス、2人はどうする?」

パイン:「はい、できることならば、剣術の修行を

    したいと思います」

アリス:「私も同じく剣術を、、、。

    自分の身ぐらい自分で守りたいです。」

カイン王:「そうか、ならば、自ら稽古をつけよう。」

パイン:「えっ、よろしいのですか?」

カイン王:「是非もない。

     これは、人間の存亡をかけた戦いだ。

     何よりも優先すべき事なのだ。」


パインは、存亡という言葉に気持ちが揺らいだ。

分かっていた事であるのに、心臓が大きく脈打ち、

次第に早くなっていった。

大きく深呼吸し、心を落ち着かせようと試みた。

それに気が付いたカイン王が言った。


   「存亡という言葉に重圧を感じたか?

   不安や恐れ、悲しみに歯向かうな。

   それを取り込むのだ。

   さすれば、次の時には重圧を受けることはない。

   これも経験の一つなのだ。」


この時、カイン王の強さの秘密を垣間見た気がした。

パインには、カイン王がどれだけの重圧を己に取り込んで

きたのか想像すらできなかった。


C、A:お久しぶりです。

C:ついに討伐隊のメンバーを決めたみたいですね。

A:まあ、予想通りでしたけれど。

C:なるべくしてなった、という感じですかね。

A:ところで、カインが将軍の時代、官僚と将軍の関係は

  悪かったのですか?

C:官僚は命を懸ける任務が存在しないにも関わらず、

  無謀な作戦を立案し続けた事で実戦部隊の将軍からは

  嫌われていたみたいですね。

  将軍達は、官僚の無謀な作戦は己の出世の為と

  考えていたようです。

  その為官僚を排除したくてしょうがなかったみたいです。

  しかし、物資収集、後方支援や輸送などは官僚が指揮して

  いた為に決別することもできないという事です。

A:なるほど、ジレンマですね。

  将軍達にしてみれば、敵は内部にもいると。

C:・・・


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